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新人コピーライター、Z世代の「盛らない」SNSから広告の新たな価値を発見する

「BeReal(ビーリアル)」という写真共有アプリを知っていますか?
2020年にフランスで公開され、いま日本でもZ世代と呼ばれる若者を中心に人気を集めているSNSです。

どんなアプリなのかというと、その名の通り、自分の「リアル」をシェアするのが目的で、特徴は「盛らない」ということ。
なんだか新しい感覚だなと思いませんか?
今回はこの「盛らない」が私たちや広告にどのような影響を与えているのか考えてみました。


まずはBeRealについて簡単に説明します。

・1日1回、不特定のタイミングでアプリから通知が届く
・通知が届いて2分以内に写真を撮影し投稿する

通知はランダムなので朝昼夜いつ来るかわかりません。寝起きボサボサ頭であろうと、お風呂に入る直前であろうとお構いなし。2分以内にありのままの自分を撮影し投稿しなければならないのです。
カメラロールにある過去の写真を使うこともできません。2分なので寝癖を直していたらもう時間切れ。
「リアル」が最優先の「盛らない」写真共有アプリなのです。
ちなみにスマホの外カメラと内カメラで同時に撮影されるので、目の前の景色だけ撮ろう、なんてこともできず、自分の顔もしっかり写ります。

実際にアプリで撮った写真です。(左上が外カメラ)

友達と一緒の時はいいけど
寝起き!なんてこともあるわけで

「盛らない」に違和感を覚える

「盛らない」というよりか、もはや「盛れる暇もない」が正解のような気もするアプリですが、そもそも私はSNSにおいて「盛らない」こと自体を良しとする感覚があまりなかったので新鮮でした。(一応Z世代に分類される年代なんですけどね)

「Instagram(インスタ)」を比較対象にして考えてみました。投稿ルールやタイムラインなど細かなしくみは違いますが、写真共有アプリという枠では同じです。インスタには2分の制限時間もなく、好きなタイミングで好きな写真や動画をシェアできます。
おしゃれでかわいい、見栄えが良い投稿ほどたくさんの「いいね!」が貰えるので、多くのユーザーが自然と「映える」加工、グルメ、スポット、体験を投稿に用いるようになりました。そして「インスタ映え」という言葉が2017年の新語・流行語大賞になるほど、インスタは私たちにSNS上での映えを主流にさせました。

ここでいう「映える」「盛れる」ともいえます。

インスタの利用を通じて、「映えた」「盛れた」投稿こそSNSにあるものという考えがいつの間にか私の中に作り上げられ、「盛らない」SNSに対する違和感を生み出していたのでした。

でも、キラキラしたイルミネーションやおしゃれなカフェに行ったらシェアしたくなるけれど、どうってことない日常やオフすぎるリアルな自分をシェアするのにはやはり抵抗がある気がします。


Z世代が抵抗なく「リアル」をシェアするワケ

なぜ抵抗なく「リアル」をシェアできるのでしょうか。
実はインスタのような従来のSNSとは異なる使い方に理由が隠れていました。

【気疲れしない】
従来のSNSで「映え」意識が加速したのは「いいね!」やフォロワー数など周囲の評価が数字となって表れていたから。そうした評価は次第に気疲れを引き起こします。ダサい写真は載せられない!とプレッシャーになったり、キラキラした投稿をする他人と自分を比較してしまったり。
BeRealでは「映え」も周囲の評価も気にしなくてよいのです。

【相手の等身大の姿が見れる】
綺麗な写真や「映え」意識の高い投稿が並ぶ従来のSNSで、自分だけがリアルをさらけ出すのはハードルが高いけれど、BeRealの世界ではそれがベースであり、浮くことがない。
自分だけでなく、つながっている知人のリアルも見えているわけです。
相手の自然体、等身大の姿が見えるSNSはZ世代にとってむしろ貴重な体験とも言えます。

「盛らない」から疲れないし楽しい。
従来のSNSが生んだ「NOTリアル」のアンチテーゼとして「リアル」の共有が今のSNSではブームになっていたのです。


広告こそ「盛らない」ほうが受け入れられる?

SNSにリアルが求められているならば、今やSNSと切り離せない存在にある広告も同じはず。
広告には商品やサービスを魅力的に見せたり伝えたりする役割があるけれど、良い部分をアピールするより「盛らない」ほうが消費者に受け入れられることもあるんです。そんな3つの事例を紹介します。

①もうどう広告したらいいのかわからないので。(KINCHO)

KINCHO新聞広告

キャッチコピーが印象的な「KINCHO」の広告。コロナ禍真っ只中での企画となり、掲載時期の世の中の状況が全くつかめなかったそう。大々的に商品をアピールしても、もし外出自粛が継続していたら世の中とズレてしまう…。見通しが立たず困っている状態を「どうしたらいいのかわからない」と白状するスタイルに。
企業側の率直な心境を見せる、ありそうでなかった手法が「潔くて好き」とSNSで話題になりました。

②人工保存料は一切使っていません(バーガーキング)

バーガーキング、ワッパーにカビが生える動画で人工防腐剤の不使用をアピール

ギョッとしてしまう衝撃的な写真。ハンバーガーチェーン「バーガーキング」はアメリカの全店舗において、メニューに含まれる防腐剤や人工保存料の使用をやめました。素材のみのハンバーガーは時間が経つと腐ります。その様子を使った大胆な広告。
この広告を見て「おいしそう!」とはなりませんが、商品のありのままの姿を見せることで、人工保存料を使用しない同社の安全性を感じられます。

③オネストカード(オーケーストア)

オネスト(正直)カード

業種別顧客満足度13年連続No.1(2023年度)のスーパー「オーケーストア」はオネスト(正直)カードというPOPを使っています。商品の特長ではなく、あえて「味が薄い」「生育遅れで小ぶり」など欠点を記載。
こうした企業側からの積極的な情報発信は、私たちがベストな買い物をできるようにしてくれるんだと親切で誠実な印象を抱きますね。

広告において「盛らない」とは正直にまっすぐ伝えること。
モノも情報もあふれた世の中で、我こそはと良く見せたくなりがちですが、
正直さ=消費者からの信頼をつくる手段なのです。

広告で見て、気になったものを買うとします。そこからSNSやサイトの口コミを参考にして購入を決める人も多いのではないでしょうか。広告=「盛った」情報というわけではありませんが、同じ消費者同士の「リアル」な声は信頼を寄せやすいはず。
しかし最近、そうした我々の心理を利用したステルスマーケティングが増えているので注意も必要です。だからこそ「盛らない」広告を出している企業の価値は今後一層高まっていきそう。


「盛らない」SNSの次に流行るのは?

Z世代から広まりつつある「盛らない」の価値を理解しました。そうか~、ネット社会だからこそ自然体が生む信頼や親しみって重宝される。「盛らない」のも悪くないかも…と心動かされていたら、こんなアプリが目に飛び込んできました。

び…ビーフェイク?!

「Why be real when you can be fake? (偽物になれるのに、なぜ本物でいるの?)」と、BeRealとは真逆のコンセプトの新しいアプリ。
とはいえ、インスタ映えにおける「NOTリアル」とはまた異なる世界です。

撮影した写真とテキスト化した自分のなりたい姿をAIが組み合わせてくれる。本人とAIの創造性であらゆるビジュアルを作り上げ、みんなとシェアできる。
もはや「盛る」とかの概念を突破していますね。でもフェイクであることを大前提としているからストレスは少なそう。「映え」に対する疲れも、リアルを切り取る必要もない新しいカタチのSNS。

巡り巡ってSNSはまた「NOTリアル」が流行になるかもしれませんが、広告がやるべきことは変わらず、誠実なコミュニケーションで消費者の心をつかむことだと思います。

今後、SNS、広告がAIとどのように関わっていくのかも注目していきたいですね。


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文:マキ

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