AIモデル・AIタレントが続々と広告に起用されているのでまとめてみた。
2022年11月にChatGPTが公開されてから、AI(人工知能)はより身近な存在になりました。
私の会社でも、デザイナーを中心に積極的にAIを活用する「AI LABO」という取り組みを始めています。その影響で、私自身もAIに興味が湧くようになりました。
いま広告業界では、生成AI(さまざまなコンテンツを生成できるAIのこと)を用いてつくられた広告が増えています。
中でも、人間の代わりとなる”AIモデルやAIタレント”の存在は注目度が高いでしょう。
今回は、実際にAIモデルやAIタレントが使われている4つの広告事例を取り上げて、広告にどのような効果や変化を与えているか考えてみました。
【近畿大学】架空の大学生をAIでつくる
毎年面白いと話題になる近畿大学の新聞広告。2023年は「上品な大学、ランク外。」というキャッチコピーとともに、実際には存在しない近大生をビジュアルに使った広告が掲載されました。
紙面に登場する大学生は、AIが考えた架空の人物。近大生の顔写真200枚をAIに学習させて「いそうでいない近大生」を生成しています。
画像の生成を担当したのは、なんと情報学部の1年生。大学案内などに掲載されている近大生の写真をAIに学習させて最適化していく、通常なら数ヶ月かかる作業をわずか1ヶ月で完結させたそう。
「大学のイメージ」という抽象的なお題を、AIに考えさせたのが面白い試みですし、いま注目されている技術を扱える優秀な学生がいるアピールにもなりますね。
【サントリー】定番の商品を擬人化する
サントリーは、生成AIを使ってC.C.レモンを擬人化させたキャラクターを活用するプロジェクトを始めました。
C.C.レモンを擬人化したキャラクター(AIモデル)がこちら。
顔はC.C.レモン担当者たちの顔写真を生成AIにインプットして出力し、衣装はパッケージカラーを参考にプロンプト(ユーザーがAIに対して入力する指示のこと)を調整したそう。
今どきの若者の雰囲気に寄せているのかな?と思いました。色味は奇抜ですが、爽やかな青年という感じ。
プロジェクトの第一弾として、自己紹介の動画が公開されています。
動画のセリフや声、アニメーションも、ChatGPTやGoogle Bardなどを利用して生成しています。動画を見た感想は、だいぶノイズが入っていて、AI感が強くてシュールです。
このプロジェクトは、担当者がChatGPTを使っているうちに、「生成AIでC.C.レモンの人格をつくったらおもしろいかも」と思って始まったそう。note記事にプロンプトの詳細も載っていて参考になります。
【伊藤園】CMにAIタレントを起用する
伊藤園は「お〜いお茶 カテキン緑茶」のテレビCMに、生成AIで作成したタレントを起用しました。テレビCMへのAIタレントの起用は日本初です。
CMの舞台は近未来的な世界。健康的に歳を重ねるために、若いうちからカテキン緑茶を飲もうという内容です。
人がこのような役を演じる場合は、特殊メイクやCGを使って見た目を変えますが、AIの場合はより簡単に年齢を変えることができます。これは制約のないAIだからできる強みだと思いました。
また、個人的に驚いたのはAIタレントの自然さです。
CMだけではあまり驚きの声は得られなかったようですが、SNSで「あの女性は誰?」といった声や、AIのリアルさに驚く反応が広がり、話題になりました。
これってつまり、CMでサラッと流れたくらいでは多くの人はAIタレントだと気づかなかった、ということなのでは・・・?
私が動画を見たときはすでにAIだと知ってからだったのですが、何も知らずに見ていたら気づかなかったかもしれません。
【パルコ】最先端の技術を駆使したAIモデル
パルコは、世界最先端の生成AIを駆使したファッション広告を公開しました。実在するモデルの起用や撮影は行わず、プロンプトのみで制作されました。
AIでつくったとわかるような現実離れしたグラフィックではなく、実際に撮影したかのようなリアリティを生み出しています。
また、モデルだけでなく、モチーフなどもすべて生成AIの技術で制作されており、その事実に気づいたときの驚き、アート性とファッション性を追求したそう。
グラフィックに連動したムービーも見応えがあります。
動画のナレーションは、パルコ社員を含む複数の女性からサンプリングした声を使用。驚くべきことに、音楽を含めたあらゆる要素をすべてAIで生成しています。
生成AIのサービスは課金すればするほど、表現の幅や精巧さも上がりますが、第一線のAI技術やクリエイターの力を使えば、ここまで美しい仮想世界がつくれるのかと驚きです(もう驚いてばっかり)。
AIモデル・AIタレントが人間の仕事を奪う?
取り上げた4つの広告はすべて、2023年に掲載・放送されました。1年の間に、AIモデル・AIタレントの精度が飛躍的に向上していることは明らかです。
この手の話になると、人間のタレントやモデルの仕事がなくなるという話になりますが(そういう側面も否定しませんが)、私は別の立ち位置で共存していくだろうと考えています。
有名なタレントやモデルを起用する場合、彼らの知名度を借りて商品やサービスを宣伝するので、無名のAIタレント・AIモデルではその効果を見込めないと思うからです。
では、AIモデル・AIタレントを広告に起用することは、どんな意味や効果があるのか?
①企業の挑戦する姿勢をアピールできる
生成AIは世界中から注目されているホットな話題なので、それに取り組むことは「新しいことに挑戦している」という企業姿勢を示すことにつながります。
パルコは、今回の広告についてこのように述べています。
AIモデル・AIタレントを起用した広告は今後も増えていくでしょう。しかし、それが当たり前になれば話題性は消えるので、今だからこそ目立ってアピールできるチャンスと言えます。
②世界観を作り込むことができる
イメージを向上させるために、広告では商品やサービスに合う人物を起用することも重要です。
これまでは、より適切なタレント・モデルを見つけるという作業が求められていましたが、生成AIの場合は広告表現に合わせて1から人物像を構築することができます。
世界観を重視する場合や、タレントによるイメージを持たせずにフラットな印象を与えたい場合は、AIタレント・AIモデルを起用することで、求めるクリエイティブをより柔軟に表現できると思います。
いかがでしたか?今後も広告事例やアイデアを記事にしますので、気軽にフォローしてくれたらうれしいです!
文:ハギ
@よりみちコピーライター
コピー制作のご相談やお問い合わせは、
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yorimichi@adbrain.co.jp
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