一寸先は闇
僕は小学5年生の頃、釣りに夢中になりました。
そんなある日の出来事。
親戚のお兄ちゃんマサル君と弟のジュン、僕の3人でバス釣りに行きました。
エサ屋さんでミミズを買い、いつもの釣りポイントに到着!むき出しの大きな釣り針をブラブラさせながら、
「おっしゃー釣るぞー!!!」
と思った瞬間、足のスネに「ズブッ」という感触がありました。
恐るおそる足を確認すると、見事に釣り針が自分のスネに突き刺さってしまったのです…
「釣ってしまった・・・」
その日は弟のジュンに、自分の釣りテクをアピールしようと意気込んでいただけに、恥ずかしさと悔しさで、一瞬頭がパニックになりました。
「釣りがしたい…」
でも今、釣竿の先に釣れているのは自分。
しばらくその場に座り込み、冷静になろうとしました。
すると、マサル君が、
「ヨーヘイ君、何やってんの?」
何やってんの?と聞かれても言葉が見つかりません。
そして楽しくなるはずの1日は一瞬にして、終わりを迎えました。
諦めた僕は、マサル君にこっそりこの事を打ち明けます。するとマサル君はこう言いました。
「自分釣ってどうすんだよ(笑)」
「・・・」
「俺がパワーでぶち抜いてやろうか?!」
「それだけはやめて!!!絶対無理やから!」
釣り針の先には、簡単に抜けないように『かえし』がついてますので強引に抜くなんて想像するだけでゾッとします…
もちろん僕は、必死で抵抗しました。
すると予想通りジュンが、
後ろから興味津々のまなざしで、
「見せて!見せてー!」
と迫ってきたので、思わず
「来るなぁー!!!」
とだけ叫んだのを覚えています。
アピールどころか結局、弟のジュンに醜態をさらしてしまう結果になってしまった。そんな自分に対する怒りが爆発した瞬間でした。
「それにしても、今からどうしようか…」
そんな雰囲気になった時、奇跡的にポケットの中の10円玉を発見しました!
「ラッキー!これで助かる!」
「家に電話して、迎えにきてもらおう!」
まだ神様には見捨てられていませんでした。
そう思いながら10円玉を握りしめて、公衆電話まで足を引きずりながら向かいます。
「よし!これで助かる」
そう思いながら家に電話すると、母が出ました。
事情を説明すると母は、
「えー!!!ちょっと!すぐ行くから待ってなさい!」
「ガチャン!!!」
と一方的に電話を切ってしまいました。
「え、場所…わかるんかな?」
「絶対わからないよね…」
結局、マサル君は僕を家までおぶって帰ってくれました。
マサル君の背中で、ジュンに見られている手前、泣きたくても泣けない状態の中、僕はこれからの人生のことを考えました。
「これから一生、この釣り針をスネにつけたまま生きていくのか・・・」
結局は病院で、無事釣り針は抜いてもらえました。その時、診察台の上で聞いたセミの鳴き声がやけに悲しく感じたのを今でも覚えています。
まだスネには、その時の傷が残ってます。
たまにその傷を見ると、この事件を思い出しますが、自分で自分を釣る経験をしたことがある人は、世の中に一体何人くらいいるのでしょうか。
思わぬ形で釣られる側の気持ちを知ってしまった僕は、その日以来、魚が可哀そうに思えてきて釣りはやらなくなりました。。。
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