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夜長
2022年8月19日 20:24
隣にいても同じ景色はもう見えないそれでもこびりつく未練が目を凝らさせた惹かれ合いすれ違うドラマの中の恋人たちに重ねた過去がバラけてく嵌まらないピースばかりが溢れて散らばる枠のなか、四隅に沈む名残が体のどこかと繋がり引き攣れた最初に忘れるのは声だというけど鼓膜に沁みた囁きは生き続け寄り添った体温が消え去ろうとも擦れた粘膜の熱さはさめやらない私の体という枠の中でだけ存在するパズルを果たして
2022年8月3日 23:25
のし掛かる夏を掻き分けて留守電を聞く街を埋め尽くす熱波、ぶつかり合う蝉の声、拭えどもしたたる汗は耳に押し当てたスマートフォンをも不快で括る短気に侵食さていく脳と四肢、三度目でようやく上がったボリュームに舌打つまでがワンセットこんなにもあんまりな自分なのに比べて伝わる音のやわらかみといったらないしっとりと響く木琴みたい当社比六割増しの短気をたちまち飼い慣らした声が言う『ごめんだけど、遅
2022年7月25日 22:46
敢えて脇道に逸れ、靴を放り裸足で草を踏んで駆け出したくなる夜ラム酒を垂らしたバニラアイスをベランダでひと掬いもったりと纏い付く七月の熱に晒され、つめたいかたまりは一秒と経たず舌を濡らして口内へ満ちた上顎に舌を擦り付けるのは、そこがとても甘いからするりとした粘膜の感触が不在を突きつけ、カップの隅に溜まった乳白色がアイスの存在を証明する酸いも甘いも凝縮された日々は止める間もなく過去と成
2022年7月18日 14:39
これは、上記作品のメグ目線のお話です。 立ちのぼる蜃気楼は打ち水をもろともせず、あっという間に乾いた路面を踏んだ彼女の白いサンダルを、健康的に日焼けした首筋を伝い落ちる汗を、私はこっそりと盗み見る。 地面に焼き付いたみたいな彼女の影を踏まないように少し後ろを歩いていると、「また変な遊びしてる!」と彼女の声が飛ぶ。 誤魔化すように笑いながら、本当は言いたかった。『汐ちゃんの影を踏んで、そ