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静かな森に囁く言の葉

つまらなかった、大学のギター部時代。


1年の頃は、卓球部もアカペラサークルも4月で辞め(笑)、
何をやってるのか分からない時期を過ごしました。






それ以前から、私の将来の夢は、
"シンガーソングライターになること"でした。




慣れないDTMや初音ミクなどを駆使して(笑)、
楽器は弾けずとも、自分の曲は形にしようとしていた時期。



このまま、何もなくダラダラと過ごしていては、
自分の夢に近づけないという気持ちが、心のどこかにありました。






2年になり、4月は新歓の季節。



心機一転、クラシックギター部に入部することにしました。



同期の1年生の子達とも、同学年の先輩達とも、
いずれも、ほとんど会話などおぼつかなかった私(笑)。



練習を終えると、早々に校舎を後にし、
駅までの道のりを歩きながら、一人でmp3プレイヤーで、
延々と、川本真琴を聴いていたのを思い出します(笑)。






季節も移り変わって、ある時。



ギター部の夏合宿だか何だかが行われ、
朝から大学に集合すると、ゾロゾロとバスに詰め込まれます。



隣の席が誰だったかも思い出せない程、
人と会話した記憶が無い、当時の私。



前の方の席では、主催者側の同学年の2年生の先輩達が、
何か、催しものみたいなことをやっていました。



ギター部中心メンバーの先輩が、司会を務めており、
隣にいた同学年の先輩にマイクを振ると、ボソッと一言話すその先輩。



「今日、彼は初めて言葉を発しましたー!」



司会の先輩がそう言うと、バスの連中は大爆笑。



何が面白いのか分からず、窓の外を眺めていた当時の私。



一体、何がしたくて、サークルに入ったのでしょうか(笑)。







さて、その言葉少ななその先輩は、
雰囲気的には、静かなロッチの中岡さんのような方でした(笑)。


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普段から全然言葉を発さないものの、ファッションはおしゃれで、
ギターの腕前も申し分無かった、その先輩。






合宿中は、何かと集団で移動する時間が多く、
誰とも会話せずに、景色をボーッと眺めながら、
ただ集団について歩いていくだけの私。



しかし、景色もずっと見ていると飽きてしまうので(笑)、
時々、別の方に目線をやるようにしていました。






その目線の先には、私と同じ経済学部に所属していた、
1学年下の1年生だった、ギター部でも絶世の美女。



すらっとしてて、長い黒髪と、白い肌、ぱっちりとした大きな瞳。



茨城県出身で、納豆をこよなく愛するという彼女(笑)。



他の男子連中も、総じて彼女に首ったけなのは、
傍目に見ても、明らかなことでした。







黒髪美女を眺めて、この退屈な移動時間をやり過ごそう。



そう思って、そちらの方に目をやると驚きました。



割と物静かな彼女が、珍しく楽しげに話している相手は、
まさかの、ロッチの中岡先輩でした(笑)。



普段、さほどニコニコ笑うこともないその美女が、
中岡先輩と話しているときの表情は、本当に楽しそうな様子。



あんな口数の少ない先輩が、ここまで女性の話を引き出すとは…
実は先輩は、とてつもなく"聞き上手"な方だったのです。



相手にしか聞こえないような、小さな声で話す彼女。


2人だけの楽しそうな時間から目を反らし、再び景色を眺め始める私(笑)。







その後、その2人が恋仲になったという話はありませんでしたが、
先輩はパッと見た感じ、そういうことにさほど興味がありそうでもなく、
ギターを弾きながら、穏やかに過ごすような日々を、
ご自身なりに楽しんでおられるように感じました。






まるで、静かな森のようだった、その先輩。






大学に入ると、おそらく多くの学生達は、
途端に"大学デビュー"をし始めたりして(笑)、
自分を無理に出そうとしたりしがちですが、
そういう様子が、全く見られなかったその先輩。



社会人になってからも、時々思い出す度に、



"あの先輩、大人だったんだな…"



そう、思い知らされるばかりです。






20歳を過ぎても、社会人になっても、転職しても、結婚しても、
相変わらず、足元がおぼつかずバタバタしている私(笑)。



あの、静かな森のような先輩のことを思い出し、
さすがにいい加減、もう少し大人になっても良いんじゃないのかと。



そう自分を戒める、今日この頃です。

その100円玉が、誰かの生きがいになります!