回り続けて早5年
2020年9月の投稿から約2年振りとなりますが、
人形劇シナリオの第4シリーズを以下、記載したいと思います。
本作は、
オープニング
↓
メインキャラ4人のコーナー
↓
エンディング
という形で、1つの回を構成していく前提で考えています。
今回は、オープニングをお送りしたいと思います。
<人形劇 登場人物>
・もんじゃ姫
→本作の主人公。
頭の上にもんじゃ焼きが乗った、ぼんやりしてて空想好きな女の子。
・さばみそ博士
→頭の上にさばの味噌煮が乗った、
語りたがりで、ついウィットに富んだことを言おうとする男の子。
・ハバネロ姉さん
→メインキャラで唯一の突っ込み役。唐辛子の髪飾りを着けていて、
ピリッとした性格で、行動的な姉御肌。
・ブルーハワイ兄貴
→頭の上にブルーハワイのかき氷が乗った、
きれいなお姉さんが大好きな、能天気で自由な大柄の兄ちゃん。
~オープニング~
都内某所の一室。
円形に並んだ椅子に座っている女性と、
1人3分ずつ話しては、男性が1席ずつ隣に移動していく、
通称「回転寿司」とも言われるお見合いパーティが一段落して、
係員からは「今日は3カップル成立です!」の声。
色めき立つ男女達が、ほのかな期待を胸に係員のアナウンスに耳を傾ける。
「まず1組目は、男性1番の方と、女性7番の方!」
恥ずかしそうに笑いながら、男女が立ち上がって互いに礼をした。
「続いて2組目、男性5番の方と、女性12番の方!」
ご機嫌な男性の方が、イェーイと言いながら両手を挙げ喜んでいる。
「そして最後3組目は、男性10番の方と、女性15番の方!」
立ち上がった3組の男女が、幸せそうな表情で会場を後にしていく。
何とも言えない表情でただ佇んでいる、残された人々。
「本日はご参加ありがとうございました。
まずは女性の方からご退席下さい」と係員に促され、
女性参加者達が部屋を出ていくと、
取り残された男達のむさ苦しさがまた余計に悲しい。
係員「はい、それでは男性の方もご退席をお願い致します。
なお、会場の外での女性参加者へのお声掛けはご遠慮下さい」
今日もダメだった。
"ラッキーセブン"の7番だったのに。
29歳を迎えた男は、今年で婚活を始めて5年。
色んな婚活イベントに参加しては、参加費を払い、
女性とデートに行っては、デート代を払い、
気が付いた時には何の戦果も無く、20代最後の年となった。
これまで婚活につぎ込んだ時間とお金は、
果たしてどこへ行ってしまったのか。
婚活業界の経済を回す歯車の1つとして5年間、
必死にグルグル回り続けた男。
会場から駅に向かう帰り道は、いつも変わらず侘しいものだ。
男ばかりの職場で、職場恋愛など発生する訳が無く、
自分から動き出さなければ、女性と会話する機会すら現れない。
しかし、これまで何百人の女性と会って話をしたが、
相手が自分に好意を向けていると感じられたことは無かった。
幼少期から、あまり人に好かれた経験も無く、
自分という人間に、ほとんど価値も魅力も無いことには薄々気付いていた。
喫茶店の窓に映る、肩を落としながら帰っていく男を眺めながら、
頬杖を付くさばみそ博士と、静かにコーヒーを啜る叔父さん。
博士「結婚をして、子供を設けることの難しさもさることながら、
この社会では恋愛に至ることさえ茨の道ですな」
叔父「大きなお世話じゃの」
小さい子供を連れた若い夫婦が喫茶店に入ってきた。
コーヒーと軽食をメニューから選んでいるその様子は、
傍目に見ても実に幸せそうな家族のように見えた。
店員に「たまごさんどをひとつください」と言う子供に、
「偉いぞ、よく言えました」と褒めながら、
お父さんが彼の頭を撫でている。
すっかりご機嫌になった子供が、
お盆に乗ったコーヒーと卵サンドを運ぶ途中、
勢い良く歩き過ぎたのか、博士の目の前でひっくり返してしまった。
父親が慌てて「おい、何やってんだ!」と子供を一喝し、
「大丈夫ですか!?本当、すみません…」と博士に詫びると、
店員が濡れ布巾を持って、博士の服を拭きに走ってきた。
子供はどうして良いか分からず、ただキョロキョロしている。
博士「あぁ、いやいや。お気になさらずに」
父親「いやしかし、お洋服が汚れてしまいましたので、
クリーニング代を…」
叔父「お父さん、良いんですよ。子供が元気でさえいれば何よりだ」
父親・母親「本当に申し訳ありません…」
両親2人頭を下げ、子供を連れて席に着こうと歩き出す所で、
ふと何かを思い付いた様子の博士。
博士「お父さん、ちょっとよろしいですかな」
父親「はっ、何でしょう」
戻ってきた父親に、そっと語り掛ける博士。
「クリーニング代は結構ですが、
一つ頼まれ事をしてもらえませんか」
~オープニング 終わり~
その100円玉が、誰かの生きがいになります!