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【カオリ】箱庭

パパはママに甘えるように

怒鳴るんだ

今日も元気に騒ぐパパ

悲しく 悔しくて

お兄ちゃんにボクはどうしようって

泣きながら助け求めるんだ

何もしちゃ駄目

「しー」と優しい声で人差し指を口に当て

パパの元気な声が止まるのを

二人で怯えて震えて待ちぼうけ

お兄ちゃんがボクを守るように

ボクはボクの守る存在に

ハッとする

あの子は?

あの子はパパとママの隣にいる

妹は何も分からず

泣き続け

泣き続け

泣き続け

パパは

そんな妹を今すぐ泣き止ませろと

ママに甘えて叫ぶんだ

優しい兄に来ちゃ駄目だよと言葉を残し

ボクは転がるように階段を飛ぶ

「やめて!」

「大きな声を出さないで」

母の後ろ

床にひかれたお布団の上で

力いっぱい全身を伸ばし泣き続けた

ボクの可愛い

守らなくちゃいけない子

この子に覆い被さり

ボクが来たことで大きくなる

怖い声

一生懸命

わかる言葉 聞き逃さないようにと

耳に全集中し タイミングを見計らう

震える声

ボクが二人に伝える言葉は

おぼつかない

それでも必死に伝えよう

ぐちゃぐちゃになった顔と

嗚咽混じりのボクの声

そんな声 必死に聞き逃さないようにと

怖い声はピタリと止んだ

どうやらパパが寝かせるつもりで

妹 散々あやした末のお布団の上

置いた途端

妹の元気な泣き声に

パパはお怒り

ママの育て方が悪いんだ

ボクみたいに歯向かう女も育ててと

ボクと妹の

存在そのもの

否定する

いつもいつもいつも

悔しいの 悔しかったの

ボクだった

「ボクが生まれる前に選べちゃうなら

 ボクは男になりたかったです。」

ボクがボクと初めて言った

ボクの誕生日

私って言わなくちゃいけない?

知らないよ

ボクはボクだ

ボクが僕なんだ

ボクは下僕

ボクは私になれやしない

こんな文化を有り難がる

そんな国の出自なら

尚更 ボクはボクと叫ぶんだ

体をいじる事

申し訳ないが

出来ないさ

君らにわかりやすく

見てもらうようになんて

これっぽちも思えなかった

男の体 大きな人達

言葉は綺麗な言葉を選ぶが

みんなみんな

ボクが女の体である限り

下僕となんて見ていないよと

どうして

そんな嘘つくの?

否定しながら

「でも家事は基本君らの仕事だよ」って

みんな お決まり

つまんない

マニュアル通りの

このクソみたいな文化が

大切ならば

まだ守りたいなら

いいでしょう

ボクが僕で私で俺で

私は

私の心体が

あなた方によって

どんなに削ぎ落とされようとも

狂おうとも

絶対に違うと一生言うさ

おいでよ

君らが

自分を

男でも女でも本当の意味でフラットに

考えれないのなら

教えましょう

ボクが

「この人なら歪んだ解釈しない人」

って認めた人に限りますが

こんな小さな箱庭に

留まらない

ボクにしてくれて

お父さん

ありがとよと

踵を返そう

ママをかえして 妹かえして

あの人もこの人も

ボクを下僕にした

あなた方

ボクが助けると言えた言葉の経緯を

簡単になかった事にもした

あなた方

ええ そうです 許しませんよ

一生ね

そして

知らずにどうぞ お星様になって下さい

それがあなた方の為のようならば

ボクは

あなた方を傷つけないよう

離れるだけさ

この小さな箱庭

どうやら

広い青い星の羊は

ボクを含めて

幼くて

青い星も小さくて

この小さい星を

目に見えないボクの心で

大きく大きく包みましょう

誰かに頼る術は

もうボク自身の中にあるでしょう

あとはボクが飛び出すだけ

何処かにいるかも分からない

ボクと同じ志

もって生き辛さ感じる

君らに会うため

ボクは箱庭 飛び出すの

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