子どもと大人、考えの未熟と成熟

『探偵伯爵と僕』
森博嗣

小学生の僕が語り手として、「探偵」こと怪しいおじさんに出会ってから、友達が失踪する事件を解決するまでを描いたお話。

語り手を子供として設定してしまうと、その世界観は全て「子供」目線で捕らえられ、再現されるわけで。
でも、大抵の場合は、そのような世界は、作家という大人が「擬似的に」子供になり、「擬似的に」子供目線から世界を捉えたものだ。
それゆえに本当の子供の目線から捕らえられた世界というものは、小説の世界では往々にしてありえない。
だからこそ、子供目線でストーリーが語られる小説は、私にとってはなんだか嘘臭く感じてしまう。
この小説も、その違和感を感じた一つだ。

しかし、そのような違和感はとても小さく感じられた。
なぜだろう?と分析して見たところ、どうやら話の面白さ・フィクションとは思えないストーリーのまとまりの良さが原因かなと思った。
でも、後書きを読んでびっくりしたのだが、
おそらくこれは本当に小学生が書いたもののようなのだ。

そういえば、妙にリアルに感じられるところが多々あった。
例えば、「大人は子供に本当のことを言おうとしない。言ってもどうせわからないだろうから、って思っているのかもしれないけど、子供からすれば、大人がそんな風に考えているのはわかっている。だから、大人がいうことは大抵、嘘だし、大人が隠そうとしていることが正しいことだ。」というような文章があったはずなのだけど、これは私が子供の頃に感じていた、大人に対する不信感そのものだった。

とは言っても、違和感が感じられたのは事実であり、その違和感の出どころは一体何なのか、とても不思議に思っている。

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