自分軸と他人軸に囚われない旅へ。計画的偶発性を取り入れる
みなさん、こんばんは。
連載記事を読んでくださり、ありがとうございます。
「欲、観光しよう」担当のSです。
今回は、これまでの自分軸的・他人軸的観光の限界と可能性をおさらいしたうえで、自分軸にも他人軸にも振れすぎない観光の形を提案していきたいと思います。
自分軸・他人軸に振れすぎることによるメリデメの再整理
まずは、前回までの復習です。
自分軸・他人軸どちらかに振れすぎてしまった観光の限界と、適度に取り入れた場合の可能性について述べていきます。
自分軸に振れすぎることによる限界と自分軸的観光の可能性
前回の記事でお話した自分軸的観光の限界と可能性を、改めて整理します。
本連載において、自分軸的観光とは、リトリートや自分探しの旅などを代表とする、自分の内側にフォーカスを当てた観光を言います。
自分軸に振れすぎた観光は、次のような危険性があります。
せっかくの非日常の場にいるにもかかわらず、自分の中にある限定的なものにばかり着目してしまい、自分にはない気づきや得られるはずだった経験を自分のものにできない。
しかし一方で、自分軸的観光には次のような可能性も持っているのです。
うまく偶然を取り入れることによって、自分軸的観光の中に新たな出会いや発見が生まれ、これまでにない角度から自分の内側を見つめなおすことができる。また、その土地の魅力も楽しむことができる。
詳しくはこちらの記事から。
続いて、他人軸的観光についておさらいしましょう。
他人軸に振れすぎることによる限界と他人軸的観光の可能性
前々回の記事でお話した他人軸的観光の限界と可能性を、改めて整理します。
本連載において、他人軸的観光とは、フォトジェニックな旅やパッケージツアーなどを代表として、誰かのフィルターを通した観光を言います。
他人軸に振れすぎた観光は、次のような危険性もはらんでいます。
旅先で自分の価値観や感性を活かした旅ができない。過度な一部のフィルターへの執着により、その場にいる人や観光地に住む現地の人への迷惑行為へと繋がるおそれもある。
しかし一方で、他人軸的観光には次のような可能性もあるのです。
観光で短時間しか観光地にいられない私たちでも、観光地のことをよく知るスタッフの解説を聞くことで、自然に触れる観光、文化に触れる観光どちらでも現地の理解をより深めることができる。
詳しくはこちらの記事から。
どちらも極度に偏ってしまった場合は、旅の楽しみを満喫しきれない可能性がありますが、偏りすぎない観光をすることによって、忘れられない旅や自分の中で何かに気づく旅にすることもできるのです。
次は、その偏らない旅とは一体どんなものなのかをお話していきます。
誰かの日常をおすそわけしてもらう旅の提案
自分軸にも、他人軸にも偏りすぎない旅として、紹介したいのが、本連載初回の記事で述べた旅。
「誰かの日常をおすそ分けしてもらう旅」なのです。
旅先を決めるきっかけは、きっと人それぞれにあることでしょう。
好きな芸能人が行っていたから。
インフルエンサーの写真を見てその景色を見たくなったから。
興味のある観光スポットがあるから。
旅に出る理由は千差万別あり、家を出たその時から旅は始まっていて、何をするのもあなたの選択次第です。
その選択の中に、自分の内側にも誰かのフィルターにも執着しないものさしを入れてみること。そこでご提案したいのが、現地の人や旅先で会う誰かという基準なのです。
現地の人や旅先で会う誰かという特に固執しようがないものさしを入れることによって、自分軸にも他人軸にも依存しない「計画的偶発性」による出会いや気づきが生まれるのです。
続いて、「計画的偶発性」について、お話していきます。
「計画的偶発性」理論とは
「計画的偶発性」理論とは、スタンフォード大学の心理学者のジョン・D・クランボルツ教授によって1999年に発表されたキャリア理論です。
この理論は、以下の3つの理論的骨子から成り立っています。
そして、この偶発性を生み出すために必要とされているのが、以下の5つです。この5つの行動をしていけば、偶発性は計画的に自分の人生に取り入れられるとされています。
ちなみに、YOKU STUDIOで連載している「欲、働こう」でもこの計画的偶発性の話をされています。
この「計画的偶発性」理論はキャリアの話ですが、キャリア形成だけではなく、この考え方は私たちYOKU STUDIOが掲げている「欲、生きる」ために必要な要素でもあると私は考えています。
自分は、どんな生き方をしていきたいのか。仕事も人生の一部ですが、人生は仕事だけでは成り立ちません。
お金を稼いでいる時間以外の自分は、いったい何がしたいのか。
仕事にも生き方にも通じているこの理論での、偶発性を生む5つの行動を旅にも取り入れられると、その旅の充実度もおおいに向上できると考えています。
次は、これまで自分軸・他人軸的観光で用いてきた具体例をもとに、その5つの行動を取り入れることを考えてみましょう。
前回までに用いた自分軸・他人軸の限界の例の突破口を考えてみる
自分軸と他人軸に振れすぎてしまうことの危険性について、前回まで具体例を用いて説明をしてきました。その危険性を計画的偶発性によって、どのように突破することができるのか、あるいはできたのかを考えていきます。
自分軸的観光の具体例 ~ベトナムでのボランティアで苦手な英会話を続けた例~
前回の記事で、私自身の初めての海外一人旅、ベトナムでのボランティアの話をしました。日本人は自分のほかにおらず、英語がまだあまり得意でなかった私はなかなか会話に入っていくことができませんでした。しかし、ゆっくり話ができる友人たちとの会話を続けた結果、ベトナムでのボランティア活動だけでなく現地の観光もしっかり楽しむことができた例です。
この例では、「好奇心」、「持続性」をもった行動ができていたため、そのような結果になったと考えられます。
毎日ちゃんと彼ら、彼女らと話をする中で、どこのご飯がおいしいという情報や、今日はサトウキビジュース屋さんが施設の外にいるという情報を共有できました。
このように、自分軸的観光として旅に出たとしても偶発性を取り入れることは可能なのです。
続いて、他人軸的観光にうつります。
他人軸的観光の具体例 ~テーマパークでの迷惑行為の例~
他人軸に偏りすぎた観光では、テーマパークでの世界観演出のため設置された小道具が、写真映えに執着しているゲストの迷惑行為によって撤去されてしまったことを例に挙げました。
この迷惑行為は、偶発性を引き出す5つの行動指針の中の「好奇心」や「持続性」、「冒険性」を実施した結果のように見えるかもしれません。しかし、誰かのフィルターを通した価値観に固執している状況で、そのようなアプローチをすることが偶発性を生み出すでしょうか?
むしろ答えは逆で、自分の中で譲れない正解を持っていて、その正解に対する執着を手放せなかったゆえに、誰もが楽しめるはずだった世界観の演出がなくなってしまったのではないでしょうか。
この場合に必要なのは、「楽観性」、「柔軟性」だったと私は考えます。誰かに迷惑をかける恐れがあったこと、テーマパークで禁止されていることを素直に受け止めて、他の撮影の仕方や撮影スポットを探すこともできたのではないでしょうか。
時間が変われば、テーマパークの表情も変わります。写真の切り取り方を変えれば、ファインダー越しの世界はまた違うものになります。そうやって自分だけの価値観や感性を表現することも出来たのではないでしょうか。
このように柔軟な対応によって、誰かのフィルター越しに見る観光スポット以外に、新たな見え方に出会える偶発性も取り入れることができるのです。
まとめ
今回は自分軸にも他人軸にも振れすぎない観光の形として、「誰かの日常をおすそ分けしてもらう旅」について、主に理論を紹介してきました。
せっかくお金も時間もかけて旅に出るのです。自分が疲れてしまわないように注意しつつ、旅先での楽しみ方を満喫していきましょう。
具体例も最後に少しだけ入れさせてもらいましたが、次回はより具体的な「誰かの日常をおすそ分けしてもらう旅」について、お話していこうと思います。
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