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「私たちが本を読む場合、もっとも大切なのは、読まずにすますコツだ。」

 19世紀に活躍したドイツを代表する哲学者、ショーペンハウアー(1788~1860)の『読書について』という本は、彼のベストセラー『余録と補遺』から採られた内容で「自分の頭で考える」、「著作と文体について」、「読書について」という3つのテーマからなっています。今回はこの『読書について』を読んでおもしろいと思った一節を引用し、感想を書き残そうと思います。
 「真理はむきだしのままが、もっとも美しく、表現が簡潔であればあるほど、深い感動を与える。」という一節。ショーペンハウアーはこの文脈で、修辞的技法を中身のなさを隠すためだと痛烈に批判し、真理はシンプルな表現が一番よく伝わると書いています。これは、中国での四六駢儷体の批判と似た考えだとも思いますが、つまりは飾ることしか出来ないような中身のない文章を読むのではなく、真理がシンプルに書かれている本、ギリシャやローマなどの古典を読むべきだと言っているのです。そして、古典を読むときには「続けて二度読むべきだ」と述べ、内容の反芻の重要性を説きながら、ただの多読にはしって、「自分の思索の手綱を他人にゆだね」自分の頭で考えようとしないことを戒めています。
 現代を生きる人にも通用する鋭い内容の本書ですが、指摘の本質は自分の頭で考えるという、代わりの効かない、基本的かつとても重要な心得ですね。
<参考文献>
・『読書について』ショーペンハウアー作鈴木芳子訳 光文社古典新訳文庫 2013年
アマゾン公式サイト https://shorturl.at/ioBF6

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