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老舎『断魂槍』

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1935年作の短篇小説。老舎(1899-1966)、北京出身。代表作『駱駝祥子』、『四世同堂』など。
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2021年6月の記事一覧

老舎 『断魂槍』 (4)

 それでも、彼らはあちこちで師匠のために吹聴して廻った。一つには、彼らの武芸が由緒正しく…

老舎 『断魂槍』 (5)

 王三勝――沙子龍の門弟頭――は土地廟の一角を陣取り、武器をずらりと並べた。褐色の嗅ぎタ…

老舎 『断魂槍』 (6)

 大柄で強面の王三勝は、その大きな黒い眼玉をひん剥いて、辺りを見まわした。声をあげる者は…

老舎 『断魂槍』 (7)

「おみごと!」  北西のほうから、髭の色褪せた老人が答えた。 「えっ!」  王三勝は言葉…

老舎 『断魂槍』 (8)

 見物人がぞろぞろと引き返してきた。隣の熊使いがどんなに銅鑼を鳴らそうと無駄だった。 「…

老舎 『断魂槍』 (9)

 周囲はまたも沸き返った。王三勝は汗にまみれ、もう槍を拾おうとはせず、大きく眼を剥き、そ…

老舎 『断魂槍』 (10)

「孫どの、お国は?」 「河間の片田舎でな」  孫老人も少し穏やかになった。 「『棒一月、刀一年、槍一生』とはよく言ったもので、そう容易に物にできるものではない。正直にいって、さっきのお前さんの槍はなかなかの腕まえだったぞ!」  王三勝の額にまた汗が戻ってきた。彼は黙ってしまった。  宿に着くと、彼は沙先生がいるかどうかのみ気にかかり、胸がどきどきしていた。彼は仇討ちを急いでいた。彼は先生がこの手のことを嫌うことも知っていた。弟弟子らはすでに何度も断られている。しかし

老舎 『断魂槍』 (11)

 客が入って来るのを、沙子龍は表の間に出て待っていた。互いに拱手の礼を交わして腰を下ろし…

老舎 『断魂槍』 (12)

「弟子をもつのも大変ですな!」  孫老人が言った。 「わたしは弟子を取ったことなどありま…

老舎 『断魂槍』 (最終回)

 孫老人は立ち上がった。 「わたしの腕をご覧にいれよう、芸を学ぶに足るものか、とくと見て…

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老舎 『断魂槍』 (翻訳後記)

 老舎といえば、『駱駝祥子』という長篇や『茶館』などの戯曲で知られているが、短篇も多く残…