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老舎 『断魂槍』 (5)

 王三勝おうさんしょう――沙子龍の門弟もんていがしら――は土地とちびょうの一角を陣取り、武器をずらりと並べた。褐色の嗅ぎタバコを鼻にり込み、竹節たけふ鋼鞭こうべん[棒状の武器]をブルンッと振りまわし、見物人を後退させて場所を少し広げる。それから鋼鞭こうべんをその場に投げ出し、周りの見物人にゆうの礼[両拳を組む]もせず、両手を腰に当て、口上を唸った。

「このアシ、天下の好漢を蹴ちらし、このコブシ、全土の英雄を打ち倒さん!」 

 王三勝はぐるりと四方を見まわす。

「さあ、お立ちあい。てまえ王三勝は芸を売る者ではござらぬ。ウデに多少の覚えあり、西北道にて用心棒を勤め、緑林りょくりんのお友だち[盗賊のこと]を相手にしたこともござるぞ。いまは暇をもらってこの場を拝借し、皆さまの暇つぶしのお相手をいたそうと存じまする。ウデに覚えのあるお方、どうかご遠慮なく、てまえ王三勝、をもって友をかいするもの、この顔を立てて下さる方はおりませぬか。神槍しんそう沙子さしりゅうとは我が師匠のこと、ウデは本物でござる。皆さま、我こそはという方はおりませぬか」 

 王三勝は周りを見わたせど、挑んでくる者などないのは分かっていた。彼の口上は脅しがきいており、その鋼鞭こうべんにしても十八きん[九キロ]はあろうという代物だったのだ。


〈原文〉

  王三胜——沙子龙的大伙计——在土地庙拉开了场子,摆好了家伙。抹了一鼻子茶叶末色的鼻烟,他抡了几下竹节钢鞭,把场子打大一些。放下鞭,没向四围作揖,叉着腰念了两句:“脚踢天下好汉,拳打五路英雄!”向四围扫了一眼:“乡亲们,王三胜不是卖艺的;玩艺儿会几套,西北路上走过镳,会过绿林中的朋友。现在闲着没事,拉个场子陪诸位玩玩。有爱练的尽管下来,王三胜以武会友,有赏脸的,我陪着。神枪沙子龙是我的师傅;玩艺地道!诸位,有愿下来的没有?”他看着,准知道没人敢下来,他的话硬,可是那条钢鞭更硬,十八斤重。

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