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老舎 『断魂槍』 (12)

「弟子をもつのも大変ですな!」

 孫老人が言った。

「わたしは弟子を取ったことなどありませんよ。さあ参りましょうか。ん? なんだこのぬるい茶は! では、まず茶館でお茶を飲んで、腹が減ったところで飯にしましょう」 

 沙子龍は机の上からどん巾袋きんぶくろを取り上げ、一方に嗅ぎタバコの壷、もう一方に銭を少しばかり入れ、二つ折りにして腰帯ベルトに掛けた。

「いや、わたしはまだ腹はへりません!」

 孫老人はかたくなに言い張り、その否定の言葉は細い辮髪べんぱつを肩から背中へと大きく揺らした。

「ちょっとお話でも」

「わたしは槍術そうじゅつの教えを乞うために参ったのです」

「修業はとうの昔に止めました」

 沙子龍は体を指して言った。

「このとおり肉がついてしまいましてね」

「では、こういうのはどうでしょう」

 孫老人は沙子龍をしっかりと見据えて言った。

「立ち合いはせぬ代わりに、あなたの五虎ごこ断魂だんこんそうをわたしに教えてほしい」

五虎ごこ断魂だんこんそう?」

 沙子龍は笑った。

「そんなもの、とっくの昔に忘れちまいましたよ。きれいさっぱりとね。それより、わたしの所に二、三日泊まっていきなさい、あちこち案内しましょう。帰りには多少の旅費も」

「わたしはどこにもかぬし、銭も要らぬ。わたしは芸を学びに来たのだ!」


〈原文〉

  “教徒弟不易!”孙老者说。
  “我没收过徒弟。走吧,这个水不开!茶馆去喝,喝饿了就吃。”沙子龙从桌子上拿起缎子褡裢,一头装着鼻烟壶,一头装着点钱,挂在腰带上。
  “不,我还不饿!”孙老者很坚决,两个“不”字把小辫从肩上抡到后边去。
  “说会子话儿。”
  “我来为领教领教枪法。”
  “功夫早搁下了,”沙子龙指着身上,“已经放了肉!”
  “这么办也行,”孙老者深深的看了沙老师一眼:“不比武,教给我那趟五虎断魂枪。”
  “五虎断魂枪?”沙子龙笑了:“早忘干净了! 早忘干净了! 告诉你,在我这儿住几天,咱们各处逛逛,临走,多少送点盘缠。”
  “我不逛,也用不着钱,我来学艺!”

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