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老舎 『断魂槍』 (8)

 見物人がぞろぞろと引き返してきた。隣の熊使いがどんなに銅鑼どらを鳴らそうと無駄だった。

「ヌンチャクはどうでしょう?」

 王三勝おうさんしょうはこの老人の腕前を見てみたかった。三節棍ヌンチャクはおいそれと扱える代物ではない。

 老人はまた頷き、その武器を手に取った。王三勝は眼を怒らせ、槍をふるわせ、顔をギュッとしかめた。

 老人の黒い眼はさらに深く小さくなり、二つの線香の火が眼前の穂先につれて動くようだった。王三勝は急に気味が悪くなった。その二つの黒い眼が槍の穂先を吸い込んでしまいそうに感じたのだ。すでに二人を囲んで幾重にも人垣ができ、皆はこの老人の気迫にまったく呑まれていた。老人の眼から逃れようと、王三勝は槍を振りまわして牽制した。せた髭が微かに揺れ、老人は「さあ来い!」と構えた。王三勝は槍を構え、一歩踏み込んで老人の喉もとへ突き出すと、槍の飾り房が赤い弧を描いた。老人はさっとその身をひらき、軽く体を反らせて槍をかわすと、ヌンチャクの前棒で槍を押さえ、後棒で王三勝の手を下から撥ね上げた。バシバシッと二度音がして、王三勝の槍はその手を離れた。周囲はわっと沸き立った。王三勝は顔から胸まですっかり蒼ざめ、槍を拾うと、ぐるりと一振りし、その穂先を老人の腹部に向けて、体ごと突っ込んでいった。老人の眼は黒い光を放つ。膝を軽く曲げ、下の棒で急所を庇い、上の棒で引き戻そうとする槍身そうしんを打ちすえた。バシッ! 槍はまたも地に落ちた。


〈原文〉

  人们全回来了,邻场耍狗熊的无论怎么敲锣也不中用了。 
  “三截棍进枪吧?”王三胜要看老头子一手,三截棍不是随便就拿得起来的家伙。 
  老头子又点点头,拾起家伙来。 王三胜努着眼,抖着枪,脸上十分难看。 
  老头子的黑眼珠更深更小了,象两个香火头,随着面前的枪尖儿转,王三胜忽然觉得不舒服,那俩黑眼珠似乎要把枪尖吸进去!四外已围得风雨不透,大家都觉出老头子确是有威。为躲那对眼睛,王三胜耍了个枪花。老头子的黄胡子一动:“请!”王三胜一扣枪,向前躬步,枪尖奔了老头子的喉头去,枪缨打了一个红旋。老人的身子忽然活展了,将身微偏,让过枪尖,前把一挂,后把撩王三胜的手。拍,拍,两响,王三胜的枪撒了手。场外叫了好。王三胜连脸带胸口全紫了,抄起枪来;一个花子,连枪带人滚了过来,枪尖奔了老人的中部。老头子的眼亮得发着黑光;腿轻轻一屈,下把掩裆,上把打着刚要抽回的枪杆;拍,枪又落在地上。 

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