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追憶のミーコ その2


いつも私を気にかけていてくれた。

ミーコと触れあった期間は、5、6年ほどだったように思う。
手元に残る画像データを調べると、最初に写したのが2001年。
最後に写っているのが、2005年。
もちろん、いつも撮影していたわけではない。
気が向いた時にしかカメラを向けなかったのだ。
そのくらい、ミーコがいるのが日常であり、当たり前だった。
けれどミーコは、ある日を境に姿を見せなくなった。

最初に現れた日時は覚えていないが、
消えたその年は覚えている。
2006年だ。
私が商業デビューし、
角川書店の文芸誌「野性時代」で連載が始まった年である。
「電車屋赤城」という作品だった。

この作品が評価され、私は小説家として、
なんとか食えるようになった。
文章が金になると、はじめて知ったのである。
驚きであった。
それまで、文章を書くほど貧しくなっていたのだから。

その2006年に、ミーコは姿を消した。
まるで、「もう大丈夫ね」とでもいうように。

あれが別れだったのだ、という日の様子は、今でも覚えている。
ミーコが、とても不思議な行動をとったのだ。
今思えば、別れの挨拶だったのに違いない。

私は、姿を現さぬミーコに心を残したまま、転居した。

ともかく出会った時から20年以上が経つ。
残念だが、とうに旅立ったはずだ。
でも、私は覚えている。

死とは忘れられた時だと、私は考えている。
私が忘れない限り、ミーコは生きているのだ。

画像をさがし、彼女との日々を思い出してみたい。

ワルキューレを与えると、彼女はじゃれだした。 女神同士の親交だったのかもしれない。


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