![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/129875382/rectangle_large_type_2_a0c70175b00abd1bb40a9b9f37913b58.png?width=800)
追憶のミーコ その4
![](https://assets.st-note.com/img/1707102173997-FBncXDOgdT.jpg?width=800)
ミーコが私の部屋に出入りするようになったのは、
私がシャカリキになって仕事し、
なのに食えないという時代であった。
ギャラより取材費が上回り、
書けば書くほど貧乏になっていたのだ。
こんな不条理なことはないが、
幼い頃より不条理には慣れていた。
育った家庭がひどかったのだ。
いや、あの頃は思い出したくない。
ともかく作家は私の選んだ道であり、
「貧乏、来てみやがれ」と腹も括っていた。
けれど思っていた以上だった。
いつしか食事が一日二食となり、
一日一食も覚悟した。
納豆さえ贅沢品に思える日々となった。
恥ずかしい話だが、
タンポポをおかずに飯を食ったこともある。
なのでミーコにエサをあげられない。
そしてミーコも私の食事を邪魔しない。
私が食べる姿を、じっと見つめているだけだ。
まあ、タンポポなどを欲しがるはずはないが。
「絶対に、おまえのほうがいいの食ってんだろ」
よくミーコにそう言って笑ったものだった。
するとある日、ミーコが鳥の死骸を咥えてやってきた。
私を哀れに思ったのか、
それとも狩りができることを褒められたかったのか。
たぶん、前者だろう。
だが、私はミーコを叱った。
無益な殺生をするな、と。
ミーコは、しゅんとした様子を見せた。
そして翌日。
外出から帰ると、
ドアの前にネズミの死骸が置かれていた。
そういう問題じゃなくて、と私は苦笑した。
![](https://assets.st-note.com/img/1707102236326-HZI44DEFG8.jpg?width=800)
よろしければ、サポートをお願いいたします。ご喜捨としていただき、創作の活動費として、ありがたく使わせていただきます。