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お母さんが強くなるわけ。

先日、iPhoneをいじってたら、
突然旦那と付き合っていた時の写真が出てきた。

スカイツリーでデートした時の写真だ。

突然過ぎたので心の準備も出来ておらず
仕方なくかなりの薄目で見てみたら、
私の化粧がオカメインコくらい濃くて
旦那も今よりだいぶ痩せてて
2人が1つの物体になるんじゃないかってくらい
身体がペッタリとくっついてて
ギュッと手を繋いで幸せそうに笑っている。

ブフォッッッ!!!


色んなものに堪えきれず
身体中の穴から空気を放出した私は
ひとまずiPhoneを洗濯物の山へ投げた。

私が余りに凄いリアクションをとったので
近くでゴロンとトドのように横たわっていた旦那が「何?どしたの?」と聞いてくる。
あの写真から10キロ増えた旦那。
お前さんにもコレをお見舞いしてやろう。

どすっぴんでボサボサ頭の私は
投げたiPhoneを拾い、
旦那にホイと渡した。

ブフォッッッ!!!


同じリアクションやん。
でもそうなるよね。
分かる分かる。

一瞬の静けさの後、
私たちは顔を見合わせて大爆笑した。

見るのも恐ろしい写真。
5年前の私たちの写真。
iPhoneをぶん投げたくなる写真。

たった5年で私たちは変わってしまった。
あの時は一生変わらないと思っていたけど、
やはり私たちは変わってしまった。


「お母さんになると、強くなるよ。」

散々言われてきた言葉だった。

子どもを産む前の私は
そんなことあるかーいと心の中で突っ込む。

だって今の私は旦那の事が大好きで仕方ない。
子どもばっかりになるお母さんているけど、
私は絶対そうはならない。
だってそもそも子どもあんま好きじゃないし。
旦那は絶対子育てとか協力してくれるから
私は今のまま変わらないよ。
強くなんてならないよ。 

…違うのだ。小娘。

お母さんが強くなるのは自然の摂理。
抗うことなどできぬ。
そして強くなる理由がちゃんとある。
その理由がわかった時こそ、
小娘から母になる時。
ひとまず、
お前にはこのミッションを与えよう。



ステージ1 【妊娠中】

ヒールの高い靴はだめ。
お腹を締め付けちゃだめ。
身体冷やしちゃだめ。
アルコールとカフェインも控える。
生モノも控える。
タバコなんて論外。
自転車もだめ。
手を伸ばすのもだめ。
激しい運動はだめ。
つわり。
眠くなる。
足がつる。
おしっこ死ぬほど近くなる。
体温上昇。
血圧上昇。
疲れやすい。

チャッチャラー♪
『お母さんレベルが3あがった』

なかなか頑張ったな。
しかし、まだまだこれからじゃ!
次の試練も乗り越えてみよ!

ステージ2【出産〜退院】

不安。
激痛。(陣痛)
激痛。(出産時)
激痛すぎて痛み止めの薬漬け。
血まみれ。
でかいオムツで生活。
マタニティブルー。
全然寝れない。
便秘。
トイレこわい。
シャワー入れない。
座るの痛い。
立つの痛い。
母乳指導。
体温、おむつ替え、ミルクを3時間おき。
沐浴。
悪露。
痛い。色々痛い。

チャッチャラー♪
『お母さんレベルが7上がった』

おぉ、なかなかやるな。
しかしもう退院じゃ。
次は自分の力だけで戦うのだ!
新しい仲間を加えてもよいぞ。

「仲間に加えますか?」→旦那 
「はい」「いいえ」→はい


ステージ3【家で子育て】

お世話全般。
夜泣き対応。
ぐずり対応。
まだまだ体痛い。
抱きすぎて腱鞘炎。
鬼の量の予防接種。
抜け毛。
家事。
赤ちゃんの為の部屋作り。
戻らない骨盤。
おっぱい問題。
健診。
離乳食。(作る、食べさせる、片付ける)
ケガ。
病気。
イヤイヤ対応。

………まだまだ続く。

ご覧の通り、
お母さんに課せられる試練は
無限に降りかかります。

自分のキャパとか、
助けてくれる人の有無とか、
旦那の育児能力とか関係なく、
平等に降りかかります。

思い返せば妊娠中から
お母さんには沢山のミッションが与えられます。

「そんなの知らん!これが私の生きる道!」

なんて全シカトして開き直る方はごく少数で、
ほとんどのお母さんは多くのミッションと
日々変化する自分の身体に
日本人らしく真面目に真摯に向き合います。

出産後も子どもの成長と共に
ミッションはどんどん形を変えて
お母さんに降りかかります。
まるでSASUKEです。
しかしSASUKEのようにミッションをクリアしたとこで拍手もどよめきも貰えません。
観客はゼロです。
実況中継もありません。

自分の好きに使っていた時間は
全て子ども中心に動き出します。
自分の為の時間はどんどん減ります。
大学時代の無駄にしてた時間を貯畜しておけばよかった!まじで今使いたい!!
とか、絶対出来ないことをかなりの頻度で考えます。

気付けばお母さんレベルは1000を超え、
隣を見ると
未だ自分より戦闘能力が低い旦那がいます。

お母さんは
旦那のレベルをあげなくてはと鍛え上げるか、
もうこいつは使えないと仲間から外すかの
二択を迫られます。

世間からの目とか
自分は育休中だからとか
旦那が働いてるからとか
自分の理想のお母さん像とか
望んでも子どもが出来ない夫婦もいるからとか
ニュースで子どもを殺した親がいるとか
お母さんは色んな事をひっそり背負います。

そして何をするでもなく一日が過ぎ、
今日も私は頑張った!
子どもも元気!それでいい!
と思える日もあれば、
私はなんのために生きているんだろう、
私がいなくても何も変わんないじゃん
と、自分の存在意義を見失う日もあります。
お母さんは孤独です。

仕事に復帰すると、
今度は時間に追われて余裕が無くなり
こんなお母さんでいいのかな?
なんで働いてるんだろ?となります。
お母さんはいつも不安です。

子育てに正解が無いから
色々な事に悩みます。

お母さんは
日々自分の中の良さと悪さに対峙して
こんな自分がいたのかと驚きます。

お母さんはいつも戦っています。
自分の中のお母さんと。


これがお母さんが強くなる理由です。


だから側にいる旦那さんは
ぜひとも己に砂を詰め
サンドバッグになってあげてください。

お母さんが辛い時、
サンドバッグを
オラオラオラオラ!!!
と無心で殴れば、
なんか知らんけどスッキリするので。
(まじで殴るんじゃなくて精神的な話です。)

そして回復の薬草(美味しいスイーツ)を献上し、
勇者お母さんのHPを
少しでも回復させて下さい。

「こんな時間に食べるの?」

「これ以上食べたら太るよ?」

「だから痩せないんだよ」

禁句です。
まじなサンドバッグになりたくなかったら
この3つの呪文だけは
唱えないようにして下さい。
この呪文を唱えた瞬間、
勇者お母さんが超強くなり
あなたはそのオーラで散り散りに消えさります。

「ありがとう」

「ごめんね」

「甘いもの買ってきたよ」

どんどん言いましょう。
勇者お母さんは「あ、そう」と塩対応ですが、
心の中ではうんうんうんと頷いています。
サンドバッグに変身する回数も
僅かですが減るかもしれません。
ただし「ごめんね」だけは、
言い方と回数に注意して下さい。
余りに乱用すると、
「何に対してごめんねって言ってるの?」と、
勇者お母さんが超強くなり
あなたはそのオーラで散り散りに消えさります。

私からの諸注意は以上です。
では、これからも
協力プレイで楽しくダンジョンを進めて下さい。

たった5年で私たちは変わってしまった。
あの時は一生変わらないと思っていたけど、
やはり私たちは変わってしまった。
でも悲しくはない。
寂しくもない。

私はもうオカメインコになりたくないし、
旦那も好きなだけ二郎が食べたい。

何よりも、
私たちは見つけてしまったのだ。

自分たちよりも圧倒的に大切で
絶対に守り抜かねばならぬ存在を。

唯一無二の存在を。


だからお母さんは
勇者でありたいと願う。

悩んで
不安に押し潰されそうになって
泣いても
勇者でありたいと願う。

笑って、抱き合って、喜んで
やっぱり勇者で良かったと思う。

ダンジョンはこれからも続く。

このダンジョンをクリアした景色は
勇者と仲間だけが見れる。

それがお母さんを奮い立たせ
お母さんをもっと強くする。

お母さんは今日も戦い続ける。
お母さんは今日もがんばってる。

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