見出し画像

さようなら、きっと好きだった。

ようこさん
僕との出会いを覚えてますか?

確かあれは、約8年前のこと。

場所は、某デパート。
ようこさんが僕たちの色柄を気に入り、双子の兄貴と一緒に、ようこさんの家へ連れて帰ってくれましたね。

双子の兄貴と、弟の僕。
色柄は同じなのだけど、体型の違いは大きい。

兄貴は、背が高く、包容力も高い。

いっぽう弟の僕といえば、兄貴ほどの身長もなければ、包容力もない。
そう、兄貴と比べると貧弱で小柄。

だから、自信がなかった。
そして、ようこさんは頼りがいのある兄貴が好きなんだと思ってた。
色柄が同じ僕は、兄貴の控えとして、
いわば「サブ要員」として選ばれたんだ。
ずっとそう思ってた。

ところが、それは僕の思い違いだった。

僕は、確実に兄貴よりも高い頻度でようこさんと一緒に行動していた。

小雨の日だけでなく、雪がチラつく日も、台風が来ると言われる日も、僕を選んでくれた。

悪天候の日は、ようこさんのパートナーと思われる男性がやってきて
「兄貴を連れていきなよ」
と兄貴を勧めるのだが、ようこさんは華麗にスルーしていた。
そう、どんな時も僕を選んでくれたよね。

ようこさんは、ある時僕に
「軽くて小さいっていいよね」
と言ってくれた。

これには驚いた。
僕の最重要ミッションは
「雨風から守ること」であり、それには大きな体が必須だと思っていた。
しかし、ようこさんはそうは感じていなかったのだ。

そう、雨風で濡れることより、体型を重視していたのだ。
包容力のある大きな体より、僕のような貧弱で小柄な体型が好きらしい。その方が、一緒に居やすいというのだ。

今まで勝手に兄貴と体型を比べ、コンプレックスに感じていた。
でも、ようこさんと出会って、コンプレックスを好きだと言ってくれる人がいることを知った。うれしい。

しかし、一緒に居すぎたからか
複雑骨折をしてしまった。
正直、手の施しようがない。

ようこさんもそれに気がついたようで、
「今までありがとう」
と声をかけてくれた。
そして今、暗いゴミ捨て場の中にいる。



正直、一緒にいた思い出を残したい気持ちがないわけではない。

でも、きっとようこさんは
思い出は重荷になると言うから、何も残さず去ろうと思う。

まだ寒いから、これから雪が降る日もあると思う。
そんな時は、どうか兄貴と一緒に出かけてほしい。
本当はずっと気がついていたけど、雨風雪からしっかり守れるのは、僕ではなく兄貴だと思うから。


さようなら、きっと好きだった。

<あとがき>
え、ナニコレ。なんとなく書いてみたら、すごく気持ち悪い感じになったんですが、大丈夫でしょうか?w
要は長年使っていた折り畳み傘が壊れた、という話です。折り畳み傘から私へのメッセージです。
同じタイミングで、同じ柄の長傘と折り畳み傘を
買ったのですが、どうも折り畳みが好きで酷使してしまいました。移動手段が基本電車なので、車内で周りを気にしながら長傘を持つのが苦痛なんですよねぇ。え、だから何なんw
今日もありがとうございました。


この記事が参加している募集

雨の日をたのしく

忘れられない恋物語

サポートいただけたら、あなたのリクエストに応じた記事を書くかも!?