【エッセイ】ロシア
スーパーで無骨なパンを見つけた。
ロシア、である。
ロシアて。
なんという無骨さ。
確実にお腹は膨れるだろうが、この無骨さを買うのには覚悟が必要だろう。
カゴに入れたロシアをレジに持って行く覚悟。
ロシアを一度、レジの店員の目に触れされる覚悟。
エコバッグに体積いっぱいのロシアを詰め込む覚悟。
覚悟、覚悟のスーパーだろう。
そして家に帰れば。
もう、あとは、無心で頬張るだけだ。
ロシアを口の中へ放り込む。
一口、二口。
素朴な甘さが口いっぱいに広がるに違いない。
そうなればもはやロシアを食べているのか、ロシアに食べられているのか。
いや、食べられてはいない。
いや、食べられてはいないが、もはや、という話である。
荒涼の原風景。
人生という縮図。
甘さが脳の深い部分まで届いた時。
どうだろう、小麦の歌声が聞こえてこないか。
また、ロシアを見つけたスーパーの名前が”LIFE”というのも何か示唆めいたものを感じる。
ライフ。
人生。
人生というスーパーマーケットで見つけるロシア。
時刻は、朝の6時55分。
さあ、今日も人生を始めよう。
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