サウナで涙を流す。
それは、思いがけず訪れた。
サウナーなら、一度は経験するものなのだろうか。
サウナ歴2年目の私は、西の聖地「湯らっくす」で初めてそれを経験することとなった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
8月3日。
大学時代の同期で、私がサウナを直々に伝授した友人と湯らっくすへ来ていた。
湯らっくすの醍醐味と言えば、白川水源で有名な阿蘇の伏流水を使用した日本一深い水風呂、(偶然さん曰く)人類は、押したことのある人間とない人間の2つに分けられるというMAD MAXボタン。
そして、1時間毎に行われるアウフグースだ。
友人は湯らっくす初訪問で、行きの道中に館内整備や着替え、サウナのことまで私はわくわくしながら話し、その都度、友人は運転しながらも興味津々に耳を傾ける。
なお、私はこれまでに9人の友人・知人たちにサウナを伝授してきた。一緒にルーティーンを体験し、ととのいの世界へと誘うのだ。実績としては、9人中6人が見事サウナにハマり、人生の幸福度を高めることに成功している(伝授率 67%)。サウナ伝授の方法に関しては、また改めて一つの記事に記したいと思う(ここでは熱意の丈が収まり切れない)。
さて、サウナ伝授してきた友人の中でも、今回湯らっくすで共にととのう彼女は、サウナへの前のめりの姿勢が特に素晴らしい。初回の伝授の際にも、サウナーの私にとてつもない信頼を置き、私のルーティーンにぴったりとくっついて初っ端からととのいを習得し、「外気浴、さいこぉぉ~~~、、、ふぁ」と、ととのい顔を晒してくれていた人物である。
西の聖地、湯らっくすの良さを共にするなら、彼女がいいと真っ先に思った。怖気づくことなく、偏見もない純粋な彼女なら、水深153cm の水風呂も、滝のように打ち付けるボタンを押すのも、物凄い熱波を受けるのも、必ずついてきてくれると確信を持っていた。
彼女がアウフグースを受けるのは、大阪旅行で共にした「sauna&spa大東洋 レディース」ぶりである。かなりの感銘を受けた場所だ。アウフグースがどのようなものであり、どんな幸福・至福を与えてくれるかはもう、承知の上である。ただし、「アウフグース」を知っているだけで、「湯らっくすのアウフグース」は未だ知らないという状態だった。
16:00 。
お清めと湯どおしを終え、準備万端。
いざ、湯らっくすのアウフグースへ。
サウナハットを被り、上段を確保し、紙コップに氷を入れて、用意周到。
久しぶりの湯らっくすアウフグースに、私も胸の高鳴りが止まらないでいた。既に脈が速くなっているようだ。
その日の16:00 の熱波師は、若い女性だった。
aikoの「もっと」の楽曲に合わせて、華麗に舞っていく。
油断していた。
完全に、油断していた。
そう、湯らっくすのアウフグースは音楽と共に舞うひとつのステージと包み込む熱波で構成されているのだ。
前に、後ろに、歌うように舞いながら、安心するような暖かさで包み込んでくれる。回転しながら段差を舞い降りる。徐々に体温が上がる。
気付いたら、
私は、泣いていた。
初めて、サウナで泣いていた。
美しくも儚い熱波師の舞にaikoの歌詞がリンクして、単純に感動してしまった。
包み込まれた安心感に、舞の美しさに、歌詞の切なさに、もはやサウナに入れていること自体に、心が震え、感謝の念すら湧いてきた結果なのかもれない。
初訪問である彼女を本日もサウナの先輩として率いるつもりが、完全に油断してしまい、ポロポロポロポロ泣いている始末。サウナで泣くなんて、思いがけないことで、初めての体験で、どうしていいかわからなくなった。
一同、拍手喝采で16:00 のアウフグースが終演し、あの深い水風呂へと足を運ぶ。普段なら、色々と侯爵垂れながら率いていくが、もう話す余裕も気持ちもなかった。
とにかくあの水風呂に全身を預け、洗礼のためのボタンを押し、夏空の下で解放され、いち早くととのいたかった。
その工程に辿り着くべく、無我夢中でととのいルーティーンをこなした。無論、選りすぐった彼女なだけあって絶大な信頼感と真っ直ぐな心が彼女の中には健在で、この日もぴったりと私についてきてくれた。
おかげで。
8月の青空の下。
白いチェアに隣同士で横になって。
私たちは、ととのいの世界へと導かれていった。
言葉を交わすわけでもなく、でもどこかで「最高だね。」「気持ちいいね。」「来てよかったね。」「幸せだね。」と会話しているようでもあった。
想いが通じ合っているような感覚になる。
私はこれを、” サウナーの絆 "と呼ぶことにする。
サウナーの絆で結ばれた私たちは、10分後、ととのいの世界から無事に帰還し、顔を見合わせて微笑んだ。本当に幸せな時間だった。
その後も1時間毎のアウフグースを受け、大好きなメディテーションサウナに入り、溺れそうになりながら滝に打たれ、西の聖地を堪能した。
どのセットも至福の極みだったけど、涙することはもうなかった。あの1セット目の、あのアウフグースの、あのたった1回だけの体験だった。不思議だったし、あの感動をもう一度…と思ったりもした。
でも、たった1度きり。
それでよかったのだ。それが、よかったのだ。
今でもあの瞬間の感情を鮮明に思い出せる程に、忘れられない夏の思い出になったのだから。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
帰り道の車内は、当然の如くaikoメドレーでひっきりなしだった。
熱唱しながら、「やっぱ良かったよねー!!!」と熱弁し、また熱唱し、「あの熱波師さんさー、階段舞い降りてたよねー!!!」「見た見たー!!!」とまた語り合う。
そんな時間が愛おしくて、サウナってほんとうに幸せをくれるなって思う。
「自分が熱波師になったら、何の曲使うー?!」なんて盛り上がって、「こんな風に舞いたい!!」なんて妄想に花を咲かせる。
私はこの日の思い出がずっと心に残っていて、誰かに共有したくて、ウズウズした挙句、「サウナイキタイ」のアドベントカレンダーに記事の出だしを載せて応募した。あっけなく採用されなかったが、それはそれで嬉しくもあった。
掲載されなかったのに嬉しいの?と思うのが普通だが、私の場合、「おぉー!!私よりも更にサウナ愛が強い方々が、まだまだ山ほどいらっしゃるのね!!!燃える!!!」と思ってしまい、会ったこともない人たちに、またしても" サウナーの絆 "を勝手に感じてしまって喜んでしまう次第である。
つまり、私はかなりの「サウナ変態」なのだ。
私のサウナ愛は、語りだすと止まらなくなって、一記事になってしまう程のものだと気付いた。(いずれはサウナイキタイのアドベントカレンダーに載るのが夢!!)
だから、これからは「サウナイキタイ」に綴っている「サ活」をもとに、noteでもサウナへの愛を記していこうと思っている。
これから始まるサウナマガジンの一発目を、湯らっくすで始められたことに大いに満足して今日のところは筆をおく。