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言葉の宝箱 0223【みんな、何かを、待ってるのよね。何かが変わるのを、誰かがやってくるのを、自分が変わるのを、待ってるの】

『甘夏とオリオン』増山実(角川書店2019/12/12)

大阪の下町、玉出の銭湯に居候する駆け出しの落語家の甘夏。
彼女の師匠はある日、一切の連絡を絶って失踪した。
師匠不在の中、一門を守り、師匠を待つことを決めた甘夏と二人の兄弟子。一門のゴシップを楽しむ野次馬、女性落語家への偏見。
苦境を打開するため、甘夏は自身が住んでいる銭湯で、
深夜に「師匠、死んじゃったかもしれない寄席」を行うことを思いつく。

・寄席は生き物だ(略)
同じ演者でやっていても、ネタと客が変われば空気は変わる P5

・世の中は、壁一枚隔てて、意外なところにつながっている。
つながっているのだが、みんなそれに気づかずに生きている。
しかし、ふとした拍子に気づくことがある P40

・『つる』(略)無邪気な噺やろ。
けど、この短い噺にはな、落語の大事な要素が、全部入ってんねんで。
話術の、ほとんどのエッセンスが入ってるんや。
説いて聞かせる、軽く流す、相手の言葉にかぶせる、外す、戸惑う、
話を運ぶ、強く押し出す、声の調子で空気を変える P47

・人と人とがぶつかりあって、芸ができる。
芸能は、必ず町から生まれるんや P66

・人間にとって、無知は罪や P75

・八方塞がりに陥ったとき、もうどうしようもないと思ったときにも、
必ず突破口はある。答えは、落語の中にある P97

・見えへんもんを見えるようにする。
それが、落語家の仕事やで P116

・落語というのはな、言うてみれば、人を笑う噺や。それは間違いない。
けどな、それは、その人の存在を『否定』するということやない。逆や。
むしろその存在を『肯定』する。『肯定』して笑う。それが落語や P143

・みんな、何かを、待ってるのよね。
何かが変わるのを、誰かがやってくるのを、
自分が変わるのを、待ってるの。
結局、変わらないんだ、誰も来ないんだって、心のどこかで思っていても、待っているの P189

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