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言葉の宝箱 0214【かなしいときはね、すきなうたをうたうと、じかんがたつよ】

『小やぎのかんむり』市川朔久子(講談社2016/4/25)

中学三年生の夏芽は家から逃げるためにサマーキャンプに参加する。
行き先は山奥の古い寺。参加者は彼女一人きり。
そこへ突然現れる、置きざりにされた幼い男の子。
雑草を刈るために貸し出されたやぎと檀家の孫の葉介も参加して、
寺での一風変わった生活が始まる。
人々の優しさに触れ、守ることと守られることを知る。
夏の終わり、夏芽は再び一歩を踏みだす。
その頭上に、失われた小さなかんむりを戴いて。
第66回『小学館児童出版文化賞』受賞作。

開くと袖に
「うたをうたうといいよ。
かなしいときはね、すきなうたをうたうと、じかんがたつよ」と記され、
哀愁が誘う。
主人公は白桐中三年の万木夏芽、父のモラハラ、
それに耐え続けるだけの母、
そんな家庭からの逃避を企て参加したサマーステイでの物語。
モラハラ、幼児虐待の描写に、こんな親が、人がいることの驚きと哀しみ。現代の“駆け込み寺”という表現に救いを感じた。
『夏のはじまり』『サマーステイ』『新顔』『助っ人』『三匹のヤギ』
『小さいヤギ』『わるい草』『小石』『中くらいのヤギ』『山の晩餐』
『大きいヤギ』『小さいヤギ中くらいのヤギ 大きいヤギ』『最後の夜に』『夏のたからもの』の15章。

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