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言葉の宝箱 0520【きれいなお金っていうのは、誰かを喜ばせた対価として得たもののことで、そういうお金は仲間を呼ぶから、どんどんお金持ちになるんですって】

『津軽百年食堂』森沢明夫(小学館2009/3/4)



故郷の弘前を離れ、孤独な都会の底に沈むように暮らしていた陽一と七海。二人は運命に導かれるように出逢い、惹かれ合うが、やがて故郷の空へとそれぞれの切なる憶いを募らせていく。一方、明治時代の津軽でひっそりと育まれた陽一の祖父母賢治とトヨの清らかな恋はいつしか遠い未来に向けた無垢なる憶いへと昇華。桜の花びら舞う津軽の地で百年の刻を超え永々と受け継がれていく心が咲かせた美しい奇跡と感動の物語。
弘前市内の描写は一度は訪れてみたくなる魅力が溢れている。
青森三部作『津軽百年食堂』『青森ドロップキッカーズ』『ライアの祈り』


・何もない平凡な一日を過ごせることが、
実はどれほど幸福でありがたいことであるか P8

・よく女性が、化粧ひとつで性格まで変わるというけれど、
それは本当だと思う P28

・見慣れたピエロと目が合った。涙のないピエロ。
涙を描くと、なんとなく自分がみじめに思えるから、
あえて描かないようにしている P44

・人間は、リラックスすると、いいアイデアがひらめくものだ P51

・「好きに、理由なんてないよ」 P119

・意地悪なことを考えたら、ほんの少し泣きたくなってきた。
濁った気持ちをせめて薄めるために、わたしはワインを飲む P145

・きれいなお金っていうのは、
誰かを喜ばせた対価として得たもののことで、
そういうお金は仲間を呼ぶから、どんどんお金持ちになるんですって P150

・高校時代って、不思議な時代だった。
とてつもなく矛盾に満ちているがゆえに、
その分だけ自由な時代だった気がする。
未来に漠然とした不安を抱いているけれど、
でもそれと同時に、まぶしいような希望も確かに感じていたはずなのだ。
描いていた夢をあきらめるのにもちょうどいいし、
必死に追いかけはじめるのにもちょうどいい微妙な季節でもあった。
これから何でもできるし、どうとでも生きられるような気がするけど、
一晩寝たらもう自信を喪失していたりする。
生きる意味がわからなくて暗闇に閉ざされているのに、
その中心には叫びだしたいようなワクワク感が疼いていたりもする。
すべてを手にする可能性を秘めた、からっぽ――。
からっぽだから、何も手につかめていなくて不安になる。
高校時代って、
そんな宇宙みたいな謎だらけの時代だったのではなかったのか P181

・みんな、優しい大人になったから、
良かれと思って投げかける言葉にさえも、さじ加減が使い合えるのだ。
不思議だよね、思い出って―― P215

・女の考えることは一生わからないような気がして、
僕はほんのちょっぴりだけ落ち込んだ。
くすぐったいようで、悪くない種類の落ち込み方だったけれど P218

・未来を過去に変えていく。すべてにとって平等なリズム。
みんな少しずつ成長し、歳をとっていく P326

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