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デザインとは何か (振り返り)

はじめに、備忘しておきたかったアメリカのイベントがあります。7/4の独立記念日 (Independence Day)です。
独立記念日とは、アメリカが、大英帝国 (イギリス) の植民地支配から独立した日なのであります。少しアメリカ史を振り返りますと、アメリカとは、コンサバなキリスト教のカトリック (Ex. 離婚は禁止) が主流だった大英帝国から、宗教的な自由を求めたプロテスタントのピューリタン (清教徒) たちがアメリカ大陸に渡り、そして開拓を始めたのが国としてのスタートです。
しかし、当初は大英帝国の支配下にあり、アメリカ経済を支えられていた英国との貿易には不当な関税をかけられるなど、インド等他の植民地と同様に支配を受けていたのです。しかしそれに反旗を翻し、自由の女神を寄贈したフランスの支援もあり、英国との戦争によって、遂に国として独立を勝ち取ったという歴史があります。

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そして、この独立記念の祝日は本当に圧巻でした。何せ夕方から6時間ぐらいぶっ通しで、周囲360℃の全ての方位から花火が打ち上げられ続けるのです。。しかも、それだけではなく、実はその一週間前からも前祝いの花火が毎晩打ち上げられているのです。これほど全身全霊で喜びを表現したイベントを、私は生まれてこの方見たことがありません。
しかし私は、先ず誰がこのCrazyなコストを負担しているんだと心配になりました。そこでローカルのアメリカ人に質問をしてみたら、知らんと言われました、何で知らんねん。。😅   別のアメリカ人に聞くと、どうも個人が楽しみでやっているそうです。一応許可は要るらしいですが、日本よりも自由度が高く価格も安いので、一般家庭からも花火を打ち上げるのが国民的な行事なんだと思われます。皆でこの日をお祝いしているのです。

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独立の歴史についてですが、日本は幸いにも島国による天然要塞、歴史的に植民地支配を受けたことがなく、他国からの独立という経験をしたことがありません。面白い話があって、イギリスも同じ島国なのですが、大陸との距離が30km (ドーバー海峡) のため、ローマ帝国に侵略をされた歴史があります。しかし、日本と大陸との距離は50km (対馬海峡) のため、この20kmの差が歴史の違いを作っているらしいのです。なかなか感慨深いものです。 (モンゴルが一回攻めてきたことがありますが。。元寇)

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さて、本日ですが、ID (イリノイ工科大学デザインスクール) に入学して直ぐに、デザインデザイン思考とは何かという備忘を1回しましたが、この1年間をデザインスクールで学び、その使用後を振り返ってみたいと思います。 

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Design:
"Everyone designs who devises courses of action aimed at changing existing situations into preferred ones." -Herbert Simon
"誰もがデザインをしている、既存の状況をより良いものにするめに創意工夫をして。" 
(*ハーバート・サイモンはアメリカの経済学者、1978年にノーベル経済学賞を受賞)

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仰られる通り、誰もが無意識に、Status Quo (現状) を打破し、何らか好ましい状態へのTransformation (変容)を起こそうと、デザイン行為を行っています。しかし、デザインとは一体何なのかを日本語に訳そうとすると、なかなかいい言葉が見つからないのです。当初は、"企画" が近いのではと思っていたのですが、どうもニュアンスが足りない。
そして現在、私が理解しているデザインの意味は、"破壊と創造 / スクラップ & ビルド" に近いです。つまり、デザインには抜本的にリニューアルする意味合いが込められていると思います。
(*余談: 下の写真は、ヒンドゥー教最高神のシヴァ、破壊と創造を司る。インド人の友人宅に飾ってあったのですが、日本の神棚やお守り的なラッキーアイテムらしいです。)

ヒンドゥー教と言えばシヴァ神-min

実は、デザインのプロセスで非常に重要なキーワードがあり、それが "Analysis & Synthesis" です。ある意味、この言葉にほとんどの要点が凝縮されていると言っても過言ではないかもしれません。

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1年前に、私は Analysis & Synthesis を、"分析と統合"と直訳したのですが、現在は、"分解再構成"と言い換えた方がより適切だと考えています。
上記のダイアグラムで説明していますが、Analysis & Synthesis のプロセスの中で、先ず既存の状況は、分析=分解されることによって徹底的に理解されます。その後、好ましい要素 (残すべきもの + 新たに加えるべきもの)を統合=再構成 することで、新しい姿に生まれ変わります (Transformation)
米アップルの共同創業者である故スティーブ・ジョブズ氏は、「創造とは、“Connecting Dots”、すなわち『点と点がつながる』ことだ」と言われました。これは、この再構成のプロセスそのものを表していると考えています。

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そして、私はこの再構成プロセスが、デザイン論理を分けるポイントだと考えています。

論理的アプローチは、クリティカルシンキングとも呼ばれ、 MBAやビジネスコンサルティングが得意とする科学的なアプローチです。
もともとは、古代ギリシャでアリストテレスが生み出したと呼ばれる、要素還元主義に起源があると言われています。物事をバラバラに細かく分類して、概念レベルを構造化していく手法で、科学の発展にも大きく寄与しました。特に、ビジネス界では、下図 McKinsey (マッキンゼー) のMECEメソッドが有名です。私も、新卒の頃、一生懸命勉強しました。

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分析的なアプローチによって、物事を構造化・視える化することで、全体像を素早く把握することができる優れた手法です。
しかし、私がコンサルティング会社で働いていた頃、万能だと信じていたこの手法に限界を感じたことがあります。分かり易い分析で、原因と結果の直線的な問題解決は可能ですが、クリエイティブな発想には繋がりにくいのです。従来のMBA (Master of Business Adminstration) アプローチが、"Management by Analysis" と皮肉られることがあるのですが、この点に言及していると言えます。

しかし実は、デザインにも分析のプロセスは必要です。現状ある問題のInsight (インサイト: 真の原因)  と Opportunity Area (課題領域: 介入すべき箇所のフォーカス) を特定しなければならないからです。それが特定されて初めて、アイデアの創造がスタートできるのです
 ですから、論理とデザインを組み合わせることによって、右脳左脳のバランスがとれた優れたアプローチとなると考えています。
(*余談: デザインは0→1を創る、論理は1→10にスケールアップするのが得意だと捉えています。特に、論理思考は物事の構造を標準化することで、異なるケースでも再現性を高めることが可能だからです。)

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さて、Analysis & Synthesis のプロセスですが、具体的にどのようなステップがあるのか備忘しておきたいと思います。

- Analysis (分解)
現状問題の調査を行い、意味づけモデルを用いて視える化することで、徹底的な理解を図ります。具体的に3つのステップがあります。

① Organization (整理)
データ収集、フォーマットによる標準化、カテゴリー分けによって、データを読み込む前の仕込みを行います。
② Exploration (探索)
データの読み込みを行います。問題の理解を促す、データ間のパターンや関係性を見出します。
③ Interpretation / Sense Making (理解)
データから、意味を抽出します。データの中に見られた、主要なパターンや関係性を抽象化し、意味づけを行います。モデルによるビジュアル (ダイアグラム) を用いた表現が、理解促進にとても重要です。

- Synthesis (再構成)
上記分析に基づくインサイトを用いて、好ましい状態を創り出していきます。具体的に2つのステップがあります。

① Framing / Reframing (解釈)
この言葉は、私がデザインスクールで学んだ中でも、トップ3に入る大事な言葉です。フレーミングとは、ものごとをどう切り取って見ることができるかの解釈です。背景にある文脈によって大きく見え方が異なって来るのですが、この新しい切り取り方こそが、現状からの変容を創り出す鍵となります。そして、プロジェクト関係者の、理解・見え方・興味・主張が大きく反映されるプロセスです。(*デザインにおいて、ファシリテーションが重要視されるのは、この点にあると言えます。)
また、ここでのアウトプットとして、Value Proposition (プロダクトやサービスの体験価値) があります。新たな価値を作るための方法論はいくつかありますが、私が学んだ中では、Metaphor (メタファー: 比喩 / 隠喩) を活用するフレーミングが有効だと思いました。 

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このプロセスの詳細については、以下の本がお薦めです

② Projection (実体化)
そして最終的に、前ステップのフレーミング (新たな解釈)を、実体化していきます。この段階では、再度モデルを用いることで、コンセプトを全体像を表現します。また、デザインにとって大事なのがストーリーです。ストーリーは、新しい解釈の豊かな Context (文脈) を与えます。(なぜなら、モデルだけでは、豊かな Context 情報が削ぎ落とされるからです。) 
モデルストーリーは、実体化ステップの両輪です。お互いが補完し合うことで、新しいデザインに命を吹き込みます。

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さて、纏めますと、デザインのもつ再構成という Capability(特性)によって、現状から変容という付加価値を生み出すことができます。デザインからイノベーションに繋がっていくのは、現状を大きく変える力を持っているからなのです。

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(*余談: デザイナーという職業はとてもクリエイティブというイメージがありますが、実は必ずしもデザインが得意とは限らないです。だから、デザインスクールには多くのデザイナーが学びに来ています。個人的に彼らとグループワークを経験して思うのですが、分析はビジネスマンの方が長けている傾向があります。これは仕方が無いのですが、業務経験の違いです。ビジネスマンは、事象の分解・構造化・要点の抽象化 (Abstraction) という、分析プロセスをかなりしっかりトレーニングされているからです。友人のデザイナーが言っていましたが、デザイナーというものは、オブジェクトを対象にしたミリ単位の世界で生きているので、どうも抽象世界が苦手な傾向があるらしいのです。逆も然りで、ビジネスマンは、アイデアの具現化が苦手です。だからこそデザイナーとビジネスマンの両脳がコラボする意味があるのでしょう。)

さてさて、産業革命以降の現代は、科学ビジネス (Capitalism) の概念が支配的な (声が大きい) 時代が続いて来ました。機械的で効率的なシステムを作り上げ、規模のスケールアップを追い求めて来たことで、先進国は経済的な豊さを実現して来たのです。しかし、それと同時に多くの分断争い創造性の低下などを副作用として残して来ているという皮肉があります。

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ここで、デザイン的な手法を、多くの問題解決に応用する、デザイン思考というアプローチへの重要性が高まってくるのです。
(下図は、デザインの過程で通過するデザイン思考のレンズ群)

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                                                                                                                    後半に続く

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