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デザインマネジメントの意義

ID (イリノイ工科大学デザインスクール) では、12月6日に秋学期の全授業が終了しました。その日の夕方から学期の打ち上げパーティが行われ、多くの生徒が参加しました。この秋で卒業し現場に戻っていく人たちもおり、大学院生活の労をねぎらい合いました。他の学校はよく分からないのですが、IDがちょっと粋だと感じるのは、このパーティー費用を学校が全額負担してくれることです。その他にも、定期的なコーヒーブレークや朝食会など、生徒同士のチームワークを活性化するための催しが数多くあります。
学生は、人口を反映して中国とインドからの留学生が多いのですが、飲み会のノリ的に、彼らは基本的にお酒が大好き (飲兵衛) で乾杯文化です。テキーラショット、ウィスキーショットで乾杯一気、ビールはチェイサーです。

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実は私も、この新歓コンパ的なノリは嫌いじゃないので、一緒に Yeah Yeah 盛り上がりました。多分これアジア大陸系のノリだと思うのですが、欧米人の方が自分のペースで飲む上品な飲み方です😅 (人によるか、知らんけど。)

さて本日は、秋学期も終了し、少し身辺が落ち着いてきたところで、大事なテーマについて備忘したいと思います。私が、ID (イリノイ工科大学デザインスクール)に留学している目的の一つである、デザインマネジメントの意義についてです。

私の留学する直前のキャリアですが、広告代理店の営業担当として、クライアントのブランディングやマーケティング課題の解決に従事していました。広告代理店の面白いところは、ハードなビジネス/マーケティングストラテジーの骨格に、ソフトなデザイン (クリエイティブ) の肉づけをしていく、ユーザーを軸にして左脳・右脳両方向からのアプローチを行う点にあります。広告代理店という通称ですが、サービス領域はブランド体験を提供する全タッチポイントをカバーしていて (ブランド/コミュニケーション戦略・広告・イベント・Web・Social Media・店舗・店舗スタッフ・社内コミュニケーションなど)、様々な専門家とコラボしながらブランド課題の解決をHolistic (全体論的)にプロデュースする仕事です。近年は、カスタマーエクスペリエンスやユーザー体験価値というテーマの元に、ビジネスコンサルティング・デザインコンサルティング・広告代理店のサービス領域がオーバーラップし競合して来ています。

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デザインスクールで学びながら思うのですが、広告業界は元々経験則でデザイン思考を実践して来ています。(デザイン思考というフィールド自体はアメリカの学術界で、学問として厳格に体系化されて来た経緯があります。) ただ、私がずっと肌で感じて来たことに、ビジネスサイド (営業やプランナー)とデザインサイド(クリエイター)には思考のGAPが存在します (右脳と左脳でしょうか)。デザインサイドをリードするべき役割のビジネスサイドは、デザイナー達のポテンシャルをフルに活用しきれているのだろうか? 広告業界には "Creative Jump" という言葉があります。簡単に言うと、ビジネスサイドが戦略をデザイナーにインプットすると、デザイナーは戦略を足場として高くジャンプし、Super Creativeなアウトプットを創出してくれるということを意味しています。

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実は私には、この "Creative Jump" という言葉が、思考停止ワードに思えてしまうのです。。"ビジネスサイドはデザイナー達の職人領域に足を踏み込むべきではない。任せた方が、彼らのモチベーションが上がる" という意見を言われる人もいます。けれども、それはビジネスサイドがデザインを理解できていないからであり、イノベーションを仕掛けるであれば、ビジネスサイドとデザインサイドの有機的なコラボは不可欠です。それ故に、ビジネス視点からのデザインマネジメントが課題となってくるのです。 

ID (イリノイ工科大学デザインスクール)のプログラムは、ビジネスとデザインの交差点に強みを持っており、ビジネスマンがデザインを学ぶには最良の場所の一つと言えるかもしれません。(And vice versa: デザイナーにとって逆も然りですが。) 実はここに、テクノロジーサイドの視点も入って来ます。ただ、元々ビジネスマンとエンジニアは相性がいい、客観的 (ロジカル) な言語で会話ができるからです。

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しかし、そもそもなぜビジネスマンとデザイナーがコラボしなければイノベーションが生まれないのでしょうか?
 それは、今日の課題が複雑化して来ているからです。下図は、プロダクトの進化を表現しているのですが、今日の社会は、ネットワーク化で益々繋がり合い、様々なプロダクト・サービス・システム・組織から構成されるBusiness Ecosystem (ビジネス生態系) を形成しています。

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想像は容易いかもしれませんが、つまりInnovationを創出するためには、プロダクトやサービスの単体をデザインするだけでなく、Business Model (ビジネスモデル)やBusiness Ecosystem (ビジネス生態系)を含めた、Value Web (バリューウェブ) 全体のデザインが必要なって来ているのです。Business ModelやBusiness Ecosystemについては、ビジネスサイドが強みを持っており、故にコラボレーションが有効になってくるのです。

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ビジネスサイドが、デザインをリードすることを、私はデザインマネジメントと呼んでいます。そのためには、デザインの理解、デザイナーとの共通言語、さらには組織間の調整力 (ファシリテーション/知識統合/インプリメンテーション) も必要になってきます。デザインマネジメントの概念を説明しているのが下図で、デザイナーをリードするMeta-Designer (メタデザイナー) という役割です。これは別名、Design Leadership (デザインリーダーシップ) やDesign Strategy (デザイン戦略) と呼ばれたりもします。ビジネスの視点に立ち、大局的な観点から、イノベーションをプロデュースする役割です。 (*個別のデザイナーには様々な領域があります: Industrial/Product・Interaction/User Experience・Graphic・Sound・Motion・Communication・Service/Customer Experience など)

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まとめると、ID (イリノイ工科大学デザインスクール)では、このメタデザインに必要な理論と知識を身につけるべく日々学んでいるのであります。

実はデザインマネジメントとは別に、もう一つ大事なテーマがあります。Ideation: クリエイティビティの創出です。これはについては、別途備忘したいと思います。

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