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なぜ日本ではイノベーションが起きにくいのか

イリノイ工科大学に来て、8/12のオリエンテーションWeekから早くも1ヶ月が過ぎました。現状、寝てる以外は毎日の宿題を一つ一つこなすのに精一杯で、個人的なプラスαの勉強やシカゴ観光などの学生ライフをエンジョイする余力がありません。しかしながら、そもそも大学院とはそういう所なのかもしれません。広告代理店時代と比べて、実は毎日のスケジュールに追われながら夜遅くまで資料を作っている状況はほとんど変わっていないかもと思ったりします。クライアントが教授に変わっただけで、宿題を頂いて提案する作業自体は基本的に同じです。実はこのワークスタイルには慣れているので、あまり苦には感じてなかったりもするのですが、英語の処理能力が遅いので時間がかかるのが課題です。脳内CPUのレベルアップを待ち続けています。

さて本日は、なぜ日本ではイノベーションが起きにくいのかについて備忘したいと思います。アメリカ人や他国の留学生とごった混ぜで1ヶ月過ごして来て、日本という国の特徴が改めてよく見えて来たような気がしています。それは一言で言うと、島国として独自性がとても強いということです。(グローバルの中で良きも悪しくも。)

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島国で他国との物理的な国境があり、独自の自然環境を持ち、居住者のほとんどが日本人で、ほぼ日本語で会話をする (英語はあまり通じない)という半密閉された空間で暮らしているのだということを改めて実感しました。それは、お互いの価値観が似ていてコミュニケーションがとても伝わり易く、物事が隅々まで整理整頓された非常に落ち着く空間であり、極めて恵まれた環境だと思うのですが、同時に変化の少ない整然とした部屋に閉じこもり続けているような静的な感覚でもあります。

そのような環境下でイノベーションが起きにくいということは、なんとなく容易に想像できるかもしれませんが、個人的に理由は3つ考えられるのではないかと思っています: ①イノベーションへの誤解・②Diversityの不足 (収束思考)・③Value Networkの不足 (英語力の壁) 

①イノベーションへの誤解

イノベーション(Innovation)と聞くと、何を想像するでしょうか? Amazon、Airbnb、Tesla、Uber、シリコンバレー、ベンチャー企業... とかとか、何かとても非日常の出来事を思い浮かべるのではないかと思います。私自身も、英語訳の"革新"から考えて、イノベーションとは何か特別なことだと思い込んでいました。しかし、授業の講義を通じて、イノベーションには程度があり、私達は最も創造的かつ既成概念を破壊するレベルのものだけをイノベーションと捉えがちだと言うことに気づかされました。授業中の例えで、オレオクッキーのクリーム増量商品も実はイノベーションで、日本で言うところの改善もイノベーションの一つなのです。(下図) もちろん、最も右上の創造的破壊 (Disruptive)は最も難易度が高く、イノベーションの花形です。つまりイノベーションとは何か特別なものでは決してなく、日常の中に大なり小なり存在していて、現状の延長線上にあるということです。(野球選手のコメントにある"ヒットの延長線上がホームラン"や、竹内まりやの歌にある"毎日がSpecial"なども似たような概念なのではないかと考えています... )

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②Diversityの不足 (収束思考)

社会人のコミュニケーションマナーを学んで来た中で、"Yes But法"という概念があります。相手に意見を言う時、先ずは相手の気分を害さないように、Yesと言って肯定を差し上げてから、Butの否定で自分の意見を伝えましょうというものです。アメリカに来てから感じているのですが、この話法で話す人は皆無で、Butで否定意見を言う人を見たことがありません。実はこれは日本特有のものなのかもしれないと思っています。ではどういう話法なのかというと、"Yes And法"なのです。"あなたはそう思うのね。私はこうした方がもっと良くなると思うのだけど、あなたはどう思う?"という話法です。"Yes But法"の中には、世間の常識や組織のルールでこうあるべきという強い集団圧力が存在しているような気がしています。島国の影響で価値観が一様なため、収束的な思考傾向が非常に強くなってしまうのが原因だと思っています。一方の"Yes And法"では、相手を削ることなく価値を提案付加して行きます。アメリカが自由の国と呼ばれている所以はこの思考法にある気がしていて、デザイン思考の授業でも、アイデア発想 = Diverge (下図) には "Yes And !" で思考をNavigateしなさいと教えられています。卵と鶏の関係ですが、Diversity不足から来る収束思考を "Yes And!"思考で薄めることができると面白いかもしれません。

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③Value Networkの不足 (英語力の壁)

デザイン思考の概念の一つに、Value Networkというものがあります。最近よく聞くEco Systemも同じ概念で、企業単体のリソースだけでなく、パートナー企業・組織との有機的なネットワークによる協業で、インテリジェンスを収集&編集しイノベーションを生み出していくという考え方です。簡単に言うと、人脈が広い営業マンのようなイメージで、世の中に散在するナレッジを取り寄せ、必要に応じて編集できるKnowledge Brokerの機能です。グローバルの世界で、世界中に散在するナレッジに接触できるほどにイノベーションのアイデアを作り出す可能性が高まりますが、日本人は英語が苦手なため、どうしても情報源が限られてしまいます。受験のためだけの英語教育を推進する国の方針が、国のValue Network弱体化をもたらしている現状があるのではないでしょうか。英語力の底上げが国力復活の鍵の一つだと思われてなりません。

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以上のように、イノベーションは実は私たちのごく身近かに存在しているものの、その入り口は創造性と新鮮なアイデアによって開かれていくのです。口で言うとほど簡単なことでは無いですが、逆に言うと上記のボトルネックを解消すれば、日本のクリエイティビティは解放されるのではないでしょうか。よく言われることですが、日本人は世界の中でも優れたクリエイティビティを持っていると言われています。しかしながら一部のクリエーターを除き、多くの人達はその発揮がまだとても苦手なのではないでしょうか。

私が米国のデザインスクールで学んでいる理由も、日本でイノベーションを起こすためのノウハウを得るためなので、何が本当に役に立つのかしっかりと考え身につけていきたいところです。それと関連して、私が現在履修している科目について次回は少し紹介したいと思います。



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