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欠点だらけのトップリーダーたちが語る、 凹は埋めずに凸を伸ばすべき理由【よなよなビアファンド】

「出る杭は打たれる」世の中で、ヤッホーブルーイングが今「出る杭」を支援する意義とは?
「出る杭日本代表」ともいえるユニークな個性をもつ3名が、自身の経験や知識をもとに、「よなよなビアファンド」の未来を語ります。

※記事化にあたり、2021年4月9日(金)にClubhouseで実施した鼎談の内容を、参加者の許可をとったうえで編集・再構成しております。


「出る杭は打たれる」は本当? なぜ?

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ヤッホーブルーイングではこのたび、「よなよなエール」を投資することで、様々な分野や業界で型にとらわれない活動をしている方々を支援する「よなよなビアファンド」を開始しました。

よなよなビアファンドでは、型にとらわれない活動をする“出る杭”な人材を「よなよな人」と呼び、「限りない偏愛と突き抜けた知性で社会の多様性に新しい1(価値や個性)を加え、世界に笑顔を生み出す愛すべき変わり者。」と定義しています。

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「日本社会における『出る杭は打たれる』に関する実態調査」
■調査期間:2021年3月18日(木)~3月19日(金)■調査方法:インターネット調査 ■調査対象:20歳~59歳の日本人1,073人

今回私たちは、よなよなビアファンドを開始するにあたり、「日本社会における『出る杭は打たれる』に関する実態調査」を実施。その結果、「出る杭は打たれる」という雰囲気を感じている日本人は76.1%にものぼることがわかりました。

そんななか、よなよなビアファンドは、どのように「よなよな人」(“出る杭”な人材)を支援していくべきなのか。そして、支援の先にどんな未来が待っているのか。
活動のヒントを見つけるべく、ヤッホーブルーイング社長の井手(てんちょ)が「出る杭」なお二方、「プレゼンの神」澤円氏楽天大学学長の仲山進也氏をお招きし、【「出る杭」こそがイノベーションの源泉 多様性が活きる社会を語る】というトークテーマで鼎談しました。

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気付けば「出る杭」。飛躍したのは40代!

井手(てんちょ):「出る杭」といえば、世の中的には悪いイメージがありますよね。

澤氏:そもそも、未だに「出る杭を打とう」って思ってる人、いるのかな?

井手(てんちょ):
澤さんの近くにはいないのかもしれませんが、世の中にはたくさん存在していますよ!

澤氏:僕の目にはそういう人たちは映っていないだけかも(笑)。「出る杭を打つ」って、「同調圧力」の裏返し。そんな気持ちをもっている人たちには、僕のピントが合わないのかもしれないです。お互い、見えていないのでしょうけど(笑)。

井手(てんちょ):澤さんは風貌にインパクトがありますしね。綺麗なロングヘアをなびかせて、金色の靴で赤のスクーターにまたがっていたりして、芸能人か芸術家みたいなかんじ(笑)。
昨年まで超大企業の役員でしたよね、何か言われたりしなかったんですか?

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澤円氏(Photo: Yayoi Arimoto)

澤氏:前職のマイクロソフトの時から何も言われなかったですね(笑)。
このヘアスタイルも、美容師さんにすすめられて天パを活かしているだけで……風貌で「出る杭」になろうとしたわけではなく、伸びただけ(笑)。

ただ、そこにコストをかけることで、「覚えてもらえる」という特典がついてくるわけです。マイクロソフトの時も、「名前は思い出せないけど、あの人(手を波打つハンドサインでヘアスタイルを表現)」という感じで記号化されていました。今で言う「タグ」っていうやつです。共通言語化するからすぐ覚えてもらえる。

井手(てんちょ):「タグ付け」は、意図的にやったんですか?

澤氏:いや、理屈は後付けで、気付けばそうなっていただけですね。結果論です。
がくちょも、楽天大学の学長になろうと思って楽天に入ったわけじゃないでしょ?

仲山氏(がくちょ):はい。三木谷さんと面接した時点で、楽天がどんな会社なのかもよくわかっていなかったです。
他の人と同じことがあんまりできないというか、みんながやってることは、自分が得意じゃなければやらなくていいと思っていました。得意分野を探し続けていたら、今に至ります。

小学一年生のとき、背が一番高かったので黒板消し係に任命されたんです。黒板消し係は雑巾がけの係などに比べて早く終わるけれど、みんながやっている雑巾がけを手伝うよりも、誰も手を付けていないところで汚れている場所はどこかな、と探していました。窓の桟(さん)とか。でもって、先生から指示されていないことをやっていると、他の人から「あいつ遊んでんな」と思われる。そんなことが、社会人になってからもずっと続いているなと思います。

澤氏:それ、めっちゃわかるな。「他の人がやっていることは自分がやらなくていい」って自然に思えると、生きるの楽になりますよね。僕も大体そうなんで。

井手(てんちょ):澤さんもがくちょも、今の感覚(得意を伸ばす)は子どもの頃から変わっていない?

澤氏:子どもの頃、運動神経がウルトラ鈍かった。コンプレックスだったんです。当時は「劣等感」でしか他人と差別化できなかった。
今みたいに、人と違うことを武器だと思えたのは、30代過ぎてから、40歳ぐらいになってからですよ。それまで得意だと思うことはありませんでした。周りの評価を自覚したのは最近ですね。

井手(てんちょ):周りに評価されている、と思えるようになったのは、具体的にはいつごろ?大きなきっかけはあったんですか?

澤氏:30代半ばぐらいですね。ただ、ひとつのきっかけによって大きく舵を切った、ということはないんですよ。

人生における大きな転機、という話になったとき、よく周りから引き合いに出される話があるんですが……。前職の時に、全世界の社員10万人のうち12人しかもらえない、ビル・ゲイツの名前が付いた賞をとったことがあるんですよ。2~3万人収容のアリーナに世界中から社員が集まって表彰されて。

井手(てんちょ):10万人に12人!!! すごい!!!

澤氏:でも、嬉しかったし誇らしかったけれど、僕にとっては、その出来事はone of themなんです。その出来事だけが転機になったわけではない。

僕は、成功体験はすぐに「過去」になってあまり価値を感じなくなってしまい、失敗体験は忘れられずクヨクヨするタイプ。でも、クヨクヨすることよりも達成感を得ることのほうが増えてきて、僕ってそんなに悪くないんじゃないかと思えるようになったのが、30代半ば頃でした。偶然ですが、髪を伸ばし始めたのもその頃だったなぁ。そんな風に色々な要素が組み合わさったんだと思います。

井手(てんちょ):澤さんでもそう感じられるようになったのが30代半ばなら、世の中の「出る杭」なみなさん、めっちゃ自信になりますよね!
がくちょは? 若いころから「俺イケてる」と思っていましたか(笑)?

仲山氏(がくちょ):「俺イケてる」はないけど、人と違うことをやっている意識はありました。
小学校の時もそうだし、大学の時も……「いかに授業に出ずに単位を取るか」ということにこだわりを持つ学生たちが多い中で、僕は全部の授業に、最前列の席に座って出席していて。「一番前の髭の人」と呼ばれていました(笑)。
でも、楽天に入ってからは、創業期のメンバーがバラエティに富んだ人ばかりだったので、その中で特に自分が変わっている気はしなかったです。当時は「インターネットベンチャーの会社」というだけで怪しげな時代だったので、世間の評価など気にならない、変わった人が集まっていたんでしょう(笑)。

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楽天初の社員合宿(1999年。後列右端が仲山氏)

井手(てんちょ):世の中に貢献していると思えるようになったのはいつからですか?

仲山氏(がくちょ):何歳ぐらいかと言われるとわからないですけど……毎日夢中でやっているうちに、一緒に楽天でネットショップをやっている出店者さんたちが売上を伸ばし、地元の新聞に「元気な企業」として取り上げられるようになったり、大きく成長していく姿を見て、自然と「自分はいいことしている」と思えるようになりました。

井手(てんちょ):なるほど。「出る杭」な人は意外とみんな自覚が無くて、30代半ばぐらいから、「これ俺の強みじゃないの」と思って突き進んでいる人が多い気がします。

僕も、「自分がちょっと個性的なのかも」と思い始めたのは、30代後半か40歳ごろからですね。それまで長いことずっとふらふらしていて。パチンコしたり。今の御代田(みよた)町のオフィスはパチンコ店の跡地なんですが、実は、20年前によく通っていたところなんです(笑)。
楽天市場でショップの仕事をやりだしたのは37歳。人差し指一本でキーボードを打っていました。周りからは、「よく更生したね」「すごく遅く仕事はじめたんだね」なんて言われましたよ(笑)。

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営業を担当していたころの井手(左端:営業先の酒販店にて)

そもそも、「出る杭」ではなく「浮遊物」……?

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Photo: Yayoi Arimoto

井手(てんちょ):僕から見るとお二人は「出る杭」日本代表という感じ。先ほどのエピソードをお聞きしていて改めて思いました。
お二人とも、「出ている」という自覚はあります?

澤氏:そもそも……「杭」は地面に打ち込むもの。地面に刺さっていること前提ですよね? なぜ地面に刺さってなければいけないんでしょう? 地面に刺さっているから、並んだときに「出ている」「出ていない」という話になる。
僕がイメージしているのは、「地面」ではなく「宇宙空間」なんですよ。

井手(てんちょ):宇宙空間ですか!

澤氏:宇宙空間って、浮いているだけ。上下もない。

例えば、「カシオペア座」を「カシオペア座(Wの形)」だと思っているのは、地球の地面に立って宇宙を平面的に見ている人類だけです。カシオペアを構成している星々からすると、星たちは平面に存在しているわけではないので、右上の星が左下の星をディスる、なんてことはないんです。

僕はそんな風に生きているだけなんですが、地面に立っている人からすると「何言ってるの」となる。なので……僕は「出る杭」じゃなくて、「浮遊物」ですね。

井手(てんちょ):そうか、澤さんはもはや「出る杭」じゃないんですね(笑)。
がくちょは? 出ている自覚はありますか?

仲山氏(がくちょ):僕は、「浮いてるよね」って言われると「あなたは沈んでるんですね」って思うようにしています。声には出しませんけど(笑)。

世の中、「いい流れに乗れるような人生を送りたい」という人は多いと思いますが、まず、川の流れに乗るためには浮いていないといけません。川底の藻に絡まってたりすると流れていけませんよね。あと、浮いているというのは川面に顔が出ているイメージなんですけど、まわりを見回すと同じく浮いている澤さんやてんちょがいて、「こんにちは」と話しかけてみると話が合うんですよね。

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出典:仲山氏の「きょうの考材」

澤氏:浮いてないとどこにも行けないし、展開するわけがないってことですね。

井手(てんちょ):僕、この時点で負けてるなって思う。標準の地面から出ている自覚はあるが、空にいったり川にいったりはない。「出る杭」を更に逸脱している感じですよね。哲学的だなぁ。

澤氏:哲学的って聴こえがいいですが、ただ単に発想がとんちんかんなだけですよ(笑)。

仲山氏(がくちょ):そもそも、僕、出ているつもりはないです。

澤氏:僕ら、相対的に自分を測っていない状態で生きているだけなのかも。

井手(てんちょ):自由にやっていた結果、はたから見ると「出てる」風に見えるだけなんでしょうね。お二方は。

澤氏:てんちょもでしょ?

井手(てんちょ):お二人に比べると出ていないと思っていますよ(一同笑)。

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大舞台には様々な仮装姿で登場する井手。政財界のパーティーにも傾奇者(かぶきもの)の隈取姿で参加

凹を埋めるより凸を伸ばそう。「出る杭」はきっと世界を救う

澤氏:そろそろトークテーマに戻りましょう(笑)。「出る杭はイノベーションの源泉」なのか。

かみさんから教えてもらった話なんですが、ヒトとチンパンジーのDNAは、99.9%共通している(※諸説あり)らしいんですよ。チンパンジーがヒトに進化した過程において重要な役割を担ったのは、チンパンジーの中で「はぐれオス」「はぐれメス」とされる、種の中では「イケてない」やつらだったらしい。彼らが人間のルーツだったとしたら、進化の上で「イケてない(変わった)」やつらは必要ですよね。
だから、「出る杭は世界を救う」んじゃないかと思うんです。そう思わないと僕なんかは生きていけない(笑)。

井手(てんちょ):澤さんのエピソードで、強烈に印象に残っているものがあるんです。
澤さんが以前、とある大手企業のトップの方と「物忘れが激しい。目の前のことに集中しすぎてその他が見えない。それが普通だと思っていたけど、特殊らしいね!」と大盛り上がりしていたことがあった。
欠点を笑い話にして、得意分野を伸ばしているのがすごいと思ったんですよ!

澤氏:笑い話にするしかないですよ。スケジュール管理もできなくて……来月のイベントもダブルブッキングしていることが、先ほどわかりまして(笑)。僕が「空いてる」と言っても、去年か来年のカレンダーを見ているかもしれないので、信じないでほしい。

井手(てんちょ):澤さんがそう公言されていることを僕も知っていたので、「イベントのアポを取るときはちゃんと事務局を通すこと」と、今回のClubhouse企画担当者にしっかり言いましたよ(笑)。

澤氏:そんな感じなので、僕のまわりには介護してくれる人が数人います。僕の凹な部分(苦手分野)を補ってくれる人がいる。

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スケジュール管理はすべて委ね、プレゼンに専念する澤氏

仲山氏(がくちょ):僕も、楽天に長くいますけど、Eコマースの実務は一ミリもわからないんです。バックオフィスのシステムはどれがいいのか聞かれても「ごめんなさい」しか言えない(笑)。そこは実践者である出店者さんに聞けば教えてもらえるので、自分が詳しくなる必要はないなと。

「よなよなビアファンド」では「よなよな人=愛すべき変わり者」と定義されていますよね。僕が思うに、愛すべきポイントって、凹な部分だと思うんですよ。人は、凸な部分で信頼されて、凹な部分で愛されるんじゃないかと。

澤氏:早めに凹をカミングアウトするのが重要ですよね。
苦手を克服するのは時間の無駄だと思うんです。それよりも、得意を伸ばして、不得意を補ってくれるお友達を見つけるべき。

仲山氏(がくちょ):日本の教育が「凹を埋めよう」というスタイルだから、どうしてもそれが当たり前だと思ってしまうんでしょうね。だから、みんな埋められていない凹を隠そうとする。凹を隠す方にリソースを使っているから、凸を伸ばすのに時間が割けない。

「よなよなビアファンド」の未来は、「アベンジャーズ」!?

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── 「よなよなビアファンド」は、「出る杭」を応援する活動です。「よなよなエール」を投資するほか、どんなふうに支援していければよいでしょう。ぜひアイデアをください。

澤氏:ひとつ事例をご紹介します。

麻生要一さん、ご存じですか? 彼はリクルート時代、起業家の卵たちに、半年から一年ほど無償で渋谷のコワーキングスペースを提供する「TECH LAB PAAK(テックラボパーク)」という活動を行っていました。

そこで花開いた企業のひとつに「株式会社Psychic VR Lab(サイキックVRラボ)」がありますが、この創業者の山口さんという方がかなり変わっていて。
TECH LAB PAAKに入会する前、麻生さんが「山口さん、なにやりたいの?」と尋ねると、山口さんは、聴こえるか聞こえないかぐらいの声で「ちょ、ちょ、ちょ超能力。人間の超能力を目覚めさせたい」と返したそうなんです! 「この人を放置しておいたらやばいから、うちに匿おう!」ということで、呼び込んだらしい(笑)。
すると、山口さんは大化けした。

そんな風に、「出る杭」たちを面白がって手助けする人が必要なんですよ。
「よなよなビアファンド」でも、そんなことをやってほしい。


仲山氏(がくちょ):僕は、「出る杭コミュニティ」を作ってほしいですね。
組織にいながら自由に働いている出る杭な方々と対談する機会があったのですが、みんな、「組織の中では自分とあまり話が合う人がいない。今日は話が通じて楽しかった!」と言っていたんです。孤独にがんばっている人が多い。出る杭ネットワーク、コミュニティができれば、彼らの活動がより活性化するのではないでしょうか。

井手(てんちょ):僕も、それやりたいと思っています。変わり者を応援してくれる人が、世間には絶対にいるはず。ビールを提供して応援するだけではなく、出る杭同士の輪を作りたいなぁ。

澤氏:「出る杭コミュニティ」……。ふと思ったんですが、「アベンジャーズ」って全員で地球を救っているじゃないですか。アベンジャーズが同調圧力に負けたらおもしろいですよね(笑)。「ハルク、背高過ぎじゃない。身長2m以内に抑えて」「マイティ・ソー、ハンマーデカすぎじゃない」とか叩かれてそれに屈していたら、地球救えるわけない(笑)。

仲山氏(がくちょ):アベンジャーズも、全員で集まると「俺そんなに変わってないわ」と思うんじゃない?(笑)

澤氏:ハルクが……

── 澤さん、すみません……!そろそろお時間が来てしまいまして……!

井手(てんちょ):このままあと2時間ぐらい話せそうだ(笑)。今日はありがとうございました。

澤氏:ありがとうございました!

仲山氏(がくちょ):ありがとうございました!

よなよなビアファンドについて詳しく知りたい方はこちら

日本社会における『出る杭は打たれる』に関する実態調査」について詳しく知りたい方はこちら


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