価値型コミュニティと地縁型コミュニティのバランスを見つける
東京にいるとき、僕はいつも飲みに行っていた。同世代の友達ばかりではない、自分の所属するコミュニティでの飲み会や集まりに参加していた。介護に熱い人たち、医療をゆるく変えていこうとする人たち、ケアとまちづくりを実践する人たち。コミュニティに所属する人たちは同じような想いを持って集まっていた。前提条件なしで話していける会話の加速度が僕は好きだった。
僕は、コミュニティが世界を救うと思っている人だ。母を亡くしたときも日常生活で辛いときも、コミュニティが救ってくれたからだ。コミュニティとそこにいる人たちが、例え僕がなにか間違ったことをしても、迎えてくれるだろうという安心感が、コミュニティにはある。
よほどのことがない限り、衣食住だけはある人が多い現代社会において、生理的欲求の次に来る安全欲求、所属欲求を満たしたいという欲求にかられる。心理的安心安全感のあるコミュニティに所属することはそのどちらも手に入れることができる。だからこそ、オンラインサロンなど、コミュニティが注目を浴びているのだと思う。
戦前は地域社会がコミュニティを担っていた。それが、高度経済成長に伴って、若者が東京に出てくる。東京では単身世帯者が多く、地域社会というコミュニティの形成が困難だったため、新たに会社というコミュニティがそれを代替することになった。同時に会社に居場所がなかった人には、宗教やサークルといったものが代替になっていく。終身雇用制度がなくなっていく時代だからこそ、会社というコミュニティが瓦解していき、再度、地域コミュニティや宗教、サークルといったものにスポットライトが当たっている。一方で、副業やNPO法人、オンラインサロンなどの新しいコミュニティの流れもできてきているのが、今の現状ではないだろうか。
そう、いつの時代だって、コミュニティは必要とされてきたんだ。
そんな僕も、いくつかコミュニティに入っている。が、東京にいた頃とそうではない地方にいる今とではコミュニティの様式がだいぶ異なる。介護に熱い、医療をゆるく変えていく、ケアとまちづくりを実践する。そんな価値に集まって作られていたコミュニティがメインであった東京と比べて、地方では、子供会や地区の行事、お祭りなど、そこに住んでいるという地縁に重きを置いているコミュニティが多い。前者を、価値型(テーマ型)コミュニティというのに対して、後者は、地縁型コミュニティというらしい。
僕ら若い世代にとってみれば、価値型コミュニティの方がはるかにいい気がする。自分のスキや信条が同じような人が集まっているので、話は弾むし、実際に一緒に活動したり、お互いにアドバイスしたりすることもできる。専門用語や想いの共有なしに話すことができるのは、価値型コミュニティの良さ。一方で、地縁型コミュニティは、職業も違うし、専門性も異なる。話の内容は合わないことが多いし、無駄な世間話が多い場合もある。だから僕ら世代から見ると、めんどくさいと思ってしまう。じゃあ、価値型コミュニティが圧倒的にいいのか。そういうわけでもない。同じ場所に住んでいる地縁だからこその助け合いがあるのは地縁型コミュニティの良さだ。火事が起きたとき、災害が起きたとき、そんなもしもの時に地縁型コミュニティは価値を発揮することも多い。どちらがいいとかではなく、価値型コミュニティと地縁型コミュニティをバランスよく持つことが重要なのだと思う。
じゃあ、どこにいても価値型コミュニティと地縁型コミュニティをバランスよく持つことができるかというと多分そうはならない。100人の島では価値型コミュニティはできないし、東京の一人暮らし世帯アパートで地縁型コミュニティを作ることも困難だからだ。特に、都会の地縁型コミュニティは少し範囲を広げたり、住む場所を考えると、作ることができるが、地方の価値型コミュニティは困難であることが多い。なぜか。母数が圧倒的に足りないからだ。乃木坂46の〇〇ちゃんが好きで好きでしょうがないという人は10000人程度の街だと自分以外にいないことが多いからだ。自分が好きな価値・テーマを同じように好きな人が他にいないということが容易に起きるからだ。飲み会、ギターなど、多く好きな人がいるような価値であれば、話は別だが、数が少ないような興味だと厳しい。特に、LGBT、障害、引きこもりなどのマイノリティは地方ではまだまだカミングアウトできないことも相まって、価値型コミュニティの形成が困難である。僕も多分、価値型コミュニティの観点から、数千人の街に住むことは困難かもしれないと思っている。個人的にはいいバランスが取れる街は、地方の中核市レベルではないかと思っている。
では絶対に地方では、価値型コミュニティを持つことができないのか。というとそうではない。ある程度の規模の街なら、noteに以前書いたように、多種多様な人が集まる面白い価値型コミュニティがあるし、現代社会には、オンラインサロンなるものがある。オンラインサロンなら、インターネット上の同じような興味の人ともコミュニティの形成が可能である。今はちょっと意識の高い人が多いコミュニティが多いけど、今後はもっとフランクにコミュニティが形成してくんじゃないだろうかと思っている。
家族という絶対的なコミュニティすらもいつまであるとも限らない。会社もコミュニティ足り得ない。そんな時代において、自分の信頼のおける価値型コミュニティと地縁型コミュニティをいくつ、どのような割合で持つのか。それぞれのコミュニティの密度はどれくらいがいいのか。コミュニティにポートフォリオを作っていくことこそコミュニティ枯渇時代を生き抜くすべなのではないかと思っている。
コミュニティってなんだろう。
(photo by hiroki yoshitomi)
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