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山際響:短編集

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山際響の短編まとめです。
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2019年8月の記事一覧

ミステリーサークル

ミステリーサークル

 沼の畔で行われる花火大会の数時間前の事だった。私は久しぶりに故郷に帰り、実家暮らしの妹とともに、会場へと続く水田のあぜ道を歩いていた。陽は沈みかけていて、藍色の空には灰色に橙色がかった雲が広がっている。雲間からの太陽光線が帯状になり、藍色を背景に幾重にも重なり合っていた。地平線に目を向ければ、雲が創り出す影を受ける水田の稲穂が一面に見え、風が吹くと水を張ったプールのように音もなく揺らいだ。
 私

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