母の味噌汁を再現しようとしたら知りたくなかった事実を教えられた
ちくわの味噌汁。小さい頃、母がよく作ってくれていた。お世辞にも料理が上手とは言えない母の数少ないおいしい料理だった。
薄く輪切りにしたちくわを味噌汁の具材にするのだが、「ちくわの味噌汁っておいしいよね」と言っても、ほとんど怪訝な顔をされる。どうやら我が家だけの定番料理だったらしい。
地元で定番のちくわは、はちみつが練り込まれているので甘みがあってそのまま食べても十分おいしい。地元を離れて市販のちくわを買ってみたが、甘みがないのでなんだか味気なく、満足感もなかった。幼少期によそのちくわが食べられないように舌を改造されてしまったようだ。
ご当地食材だと思っていた地元のちくわだが、先日近くのスーパーで見かけた。ちくわコーナーの端っこで市販のちくわにまぎれていた。懐かしさを感じながらどこかアウェイ感が拭えなかった。馴染みがない土地で勇気を出して発注してくれた担当者には感謝を伝えたい。
せっかくなので買うことにした。地元で買うよりも高かったが、思い出の味を数百円で帰るなら安いもんだ。次に会えるのがいつになるかわからないので、高いけど2袋カゴに入れた。
1袋は妻と一緒にそのまま食べた。はちみつが入っているので子供たちには食べさせられないが、大きくなったら食べさせてみたい。ほかのちくわが食べられないように舌を改造してやろうと思う。
もう1袋は味噌汁の具材にしてみた。味噌汁の中で浮かぶ輪切りのちくわに懐かしさを感じる。実家を離れてしばらく経つので長いこと母の味噌汁を食べていない。見た目は懐かしいが、味は全然母のものとは違った。
懐かしさついでに味噌汁の味付けを教わろうと母に連絡することにした。ちくわの味噌汁がおいしかったこと、また食べたいことをそれとなく伝える。
「あれは冷蔵庫に食材がない時の間に合わせの具材だよ」
知りたくなかった事実とともに味噌汁の作り方を教わった。
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