あなたの骨盤、歪んでる?「矯正」が必要?!
巷で見かける「骨盤矯正」という言葉。
私の骨盤も歪んでいるかもしれない、骨盤矯正を受けたほうがいいのかもしれない…と思ったことのある方も多いのでは?
前回のホリ研マガジン「自分の身体の取説への第一歩」では、「人に言われたから」ではなく、自分で自分の身体を知ることの重要性、そして知るためのヒントがテーマでした。
今日はそこから「骨盤」、そして「骨盤矯正」について、掘り下げてみます。
自分の体に歪みはない!と断言できる人は少ないのではないでしょうか。
脚を組んだり、カバンを片方の肩にだけ掛けてしまったり、「体が歪む」と言われることをついついやってしまう、姿勢が悪いよなあ…と思っている人は多いのではと思います。
そこへ「骨盤矯正」などと聞くと、ああ、私の骨盤も歪んでいるのだろうなあ、矯正した方がいいのだろうなあ、と思う方も多いでしょう。
骨盤矯正とはどんなことをするのでしょう?やった方がいいものなのでしょうか?どんな効果があるのでしょうか?詳しく見ていきましょう。
骨盤はどんな作りになっている?
まずは骨盤について見てみましょう。
上半身と下半身をつなぐ要とも言える骨、骨盤。内臓が入った器のようです。
骨盤は、二つの「寛骨」、背骨の下の方の「仙骨」、尾てい骨とも呼ばれる「尾骨」でできています。
骨盤の底にある「坐骨」や、前面にある「恥骨」は寛骨の一部です。二つの寛骨は前面で連結し、後方では仙骨を挟んで連結しています。
前方の連結部分を「恥骨結合」、後方の連結部分を「仙腸関節」といいます。恥骨結合は軟骨と靭帯というコラーゲン繊維でできていて基本的には動きません。
また、靭帯でつながっている仙腸関節は、かつては動かない「不動関節」とされていました。しかし最近、ほんの少しだけ、ミリ単位で動くことがわかっています。
骨盤が歪むとは?
「骨盤が歪んでいる」と聞いて思い浮かべるのはどんな感じでしょう?
靭帯が伸びたりねじれたりして骨盤を構成している骨がばらばらになる感じではないでしょうか?
仙腸関節や恥骨結合部分がずれてしまい、左右の骨盤が上下や前後にずれてねじれてしまうイメージです。
マッサージ店などでこのイメージを利用して
「あなたの骨盤は歪んでいる」
と恐怖心を煽ってくるところもあるかもしれません。
ところが実際、仙腸関節や恥骨結合は強靭な作りになっているのでちょっとやそっとではずれません。
前述したように仙腸関節が動くのもほんの数ミリで、しかも最近ようやくわかったぐらい、動きがあるとは思われていなかった部分なのです。
イメージだけで無駄に恐怖心を持たないようにしましょう!
では、骨盤が歪むとは?
実は、一般的に骨盤が歪んでいる、と言われている状態は、骨盤を構成している骨がばらばらになっているのではなく、寛骨、仙骨、尾骨で構成されたひとかたまりの骨盤が、本来あるべき位置からずれていることを言います。
前に倒れていたり、後ろに倒れていたり、あるいは左右の片側だけ前や後ろに引っ張られていたり、左右の高さが違ったり、このような状態のことを「骨盤が歪む」と表現しているのです。
「骨盤が歪む」というと、なんだか取り返しがつかないようなオオゴトな気がしてしまいますが、ちょっぴり大げさすぎる表現かもしれませんね。
骨盤が歪んでいることのデメリット
さて、骨盤が歪んでいる(敢えてこの表現を使います)とどんなデメリットがあるでしょうか?
・様々な痛み
骨盤が歪むと、隣接する腰も歪み、筋肉がバランスを崩して痛みが出ます。
腰が歪むとバランスを取るように他の場所も動き本来の位置からずれていきます。
頸や下半身も歪むので、首の痛みや股関節、ひざや足首の痛みなども出てきます。
いわゆる肩こりもひどい状態になり頭痛を引き起こすこともあります。
・おなかがぽっこりし、お尻がのっぺり大きくなる
内臓をうまく支えられずおなかがぽっこり出てきます。
内臓が圧迫された状態になるため働きが悪くなり、消化不良や便秘などを引き起こします。
股関節の動きも悪くなり、悪くなったところに脂肪が乗りお尻の形が悪くなります。
・下半身のむくみ
骨盤の傾きによっては股関節を圧迫します。
股関節が圧迫されると血液やリンパ液などの体液の流れが悪くなり下半身がむくみます。
骨盤が整うことのメリット
骨盤を整えると、筋肉のバランスが整い、痛みのない快適な体になるばかりか、全体的にスッキリすることでダイエットに成功したような効果を得られます。
・おなかがスッキリし、お尻の形がよくなり引き締まる
骨盤の位置が整うと、骨盤の器の中に内臓がすっきりとおさまり内臓の働きがよくなります。
内臓の働きがよくなると消化も良くなり便秘も解消しおなかがスッキリします。
また股関節が動きやすくなるので余分な脂肪が取れ、股関節を動かすインナーマッスルも働くようになりお尻の形が立体的になります。
・下半身のむくみが取れる
上述したように、股関節の動きがよくなると下半身への体液の流れがよくなります。
代謝がよくなり血液やリンパ液が下半身からきちんと戻ってくるので、むくみが取れスッキリします。
人によっては水分をため込んでいた分、1~3㎏の体重が減ることもあります。
このように骨盤は整えておくに越したことはありません。
ここで、テーマの「骨盤矯正」です。
歪んでいる自覚がある人は矯正してもらったほうがよさそうですね。
ただ、矯正、と聞くとバキバキ痛そうな感じもします。
歪んでいる自覚があればあるほどちょっと恐ろしいイメージもあるのではないでしょうか?
「骨盤矯正」って何をするの?
脚を組んだ状態を想像してみましょう。
右を上に脚を組むと、骨盤は右側が前に出ます。その時背骨の、特に腰の部分も前に引っ張られ、腰の右側にある筋肉は伸ばされた状態になります。
一方、左側の骨盤には右脚分の体重が乗り、お尻の筋肉はぎゅっと潰され、腰の左側も詰まった状態になります。
右を上に脚を組むと、右側の骨盤が前にずれ、そのことにより本来よりも引っ張られて伸びた筋肉と、相反して縮んだ筋肉ができます。
骨盤が歪んだ状態とは、筋肉のバランスが崩れ伸びすぎているところと縮んでいるところができてしまった状態とも言えます。
整体やカイロプラクティックなどで行われる骨盤矯正とは、筋肉のバランスを整え、骨盤の位置を整える手技のことです。
縮んで硬くなった筋肉をほぐすことで、伸びすぎたところの弾力を取り戻し、引っ張られすぎていたところが元に戻りやすくなったところを、手技で骨盤を本来あるべきところに戻します。
気持ちのよいマッサージで十分筋肉をほぐしてから骨盤の位置を整えるので、通常痛みはほぼありません。
骨盤を構成している3つの骨はそう簡単にはずれませんから「骨盤矯正」は骨盤を構成する骨のつながりをいじって骨盤そのものの形を変えることではありません。
「骨盤矯正」とは3つの骨でワンセットになっている骨盤の位置を正しい状態にセットすることなのです。
骨盤矯正はやった方がよい?
どこかの筋肉がぎゅっと縮んだ時は、必ず拮抗筋と呼ばれるセットの筋肉が伸ばされます。
筋肉が伸びすぎると痛みを感じます。
腰や首、膝などの痛みや肩凝りなどの不快感のない快適な体を保つためには、必要以上に引っ張られた筋肉を作らないように、筋肉が本来の長さを保った状態をキープすることが大切です。
ところが、ついつい脚を組んでしまったり、カバンを片方の肩にかけてしまうなど、多くの人に筋肉が引っ張られた状態が続いてしまうクセがあるものです。
仕事でパソコンを使ったりスマホを見たりなど、気を付けていてもどうしても姿勢が悪くなってしまう(=筋肉が引っ張られる状況ができる)要素も現代は山のようにあります。
座っている時間が長い人は特に骨盤周辺の筋肉のバランスを崩しやすいと言えます。
そして骨盤は体の真ん中にあるため、ここのバランスが崩れると上半身や下半身もあっという間にバランスを崩します。
逆に骨盤のバランスが整うと末端のバランスも整いやすくなります。
姿勢の悪さ、筋肉のバランスの崩れに自分で気づき、修正できればよいのですが、多くの人はどこがどのように崩れているかを把握するのは難しいでしょう。
そこで頼りにしたいのは、ロルフィングや整体など、コンディショニング、調整の専門家です。
専門家に体を見てもらえば、自分の体がどのような状態かを客観的に把握することができます。
よい施術家は、患者の体の状態を目や手を通じて確認することと、どのような生活をしているかをうまく聞き取ることで、何が原因で今の不具合が起きているかを的確に推測することができます。
骨盤矯正など、身体の調整をしてもらう場合は、専門家にただ体を委ねるだけではなく、自分の身体がどのような状態になっているかを教えてもらい改善のためのアドバイスをもらいましょう。
多くの専門家は、ただ施術をするだけでなく普段の姿勢についてのアドバイスや、簡単にできるストレッチ、筋トレなどを指導してくれます。
気を付けてストレッチなどで体を緩めることをしている場合でも、自力ではなかなかほぐしにくいところもあります。
そんなところを専門家の手でほぐしてもらうと、気持ちがよいだけでなくより自分の身体を感じやすくなり、骨盤を含めた体が整いやすくなります。
逆に言うと、
「矯正」されても何がよくなったのかわからない
日常の注意点なども教えてもらえず続けて通うことだけ指示された
このような場合は注意が必要です。
もっと相性の良い、信頼できる専門家を探しましょう。
専門家任せではなく自分でも
せっかく施術をしてもらっても、生活が変わらず対策もしないままでは効果は長続きせず身体はすぐに元に戻ってしまいます。
原因となるクセや姿勢をできるだけ改善し、縮みやすい部分はストレッチなどで緩めたり伸ばすようにし、伸びやすい部分は筋トレなどで鍛えましょう。
施術の効果を長続きさせ、自分の身体の状態を把握するのに役に立つのがヨガやピラティスなどのボディワークです。
ヨガやピラティスは骨盤周りを動かすポーズやエクササイズが多く、縮みやすいところを緩め、伸びやすいところを強化します。
骨盤矯正などの施術を通じて自分の体のクセを知っておけば、緩めたいところ、鍛えたいところに効くポーズやエクササイズにピンとくるでしょう。
自分に効きそうなものをいくつか覚えれば自宅でも試してみることができます。
また、ポーズやエクササイズを通じて自分の体のバランス、例えば左右の違いなどを感じやすくなるので、普段の生活でもバランスがよい状態を保てているがわかるようになります。
脚を組むのは体が歪むのでNGと言われますが、例えばいつの間にか右脚を上に脚を組んでいたことに気づいたら、しばらく左脚を上に脚を組んでみるとよいでしょう。
左脚に体重を乗せて立っていることにふと気づいたら、右脚にもしばらく体重を乗せてみればよいのです。
ほんのちょっとしたことですがこのような小さな調整が体を変えていきます。
体を動かし慣れるとちょっとした歪みに自分で気付き、調整するための対策がわかるようになってきます。
さらに「これは専門家の手を借りたほうがよさそうだ」という判断が的確にできるようになってきます。
私自身も、ちょっと歪みが溜まってきたかなあと思うと専門家の手を借りて調整してもらうようにしています。
そのおかげでぎっくり腰など、動けなくなるような不調とは無縁になりました。
「歪んでいる」などという言葉を必要以上に恐れることなく、自分自身が本来持っている調整力を高めつつ、必要に応じて専門家の力を借りることで快適な体をキープしたいものですね。
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