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その股関節屈曲制限の原因は前方?後方?側方? ~後方編~

皆さんこんにちは!理学療法士のYoshiki(@PtGekikara)です。


今回の記事では股関節屈曲制限を後方の因子の解剖学的な要因に着目して、考えていきたいと思います!


股関節屈曲により、後方組織は伸張される為、組織の柔軟性の低下による可動域制限が生じるということは想像しやすいと思います。


では、股関節後方に存在し、股関節屈曲可動域制限に関与する組織は何があるかを知る必要があります。

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股関節後方にあり、屈曲可動域の制限因子となる組織としては、股関節後方関節包、筋肉では大殿筋や中殿筋、外旋筋群、ハムストリング、大内転筋が挙げられます。それ以外に、坐骨神経や後大腿皮神経、皮膚や血管などの組織も挙げられます。


意外と多いですよね💦さらに、股関節可動域制限は前方・側方の要因も合わさってくるので、これらの組織をすべて評価するのは大変かつ臨床的に時間がありません。


今回の記事では、股関節屈曲制限が後方組織の原因で生じやすい疾患(THA・変形性股関節症、坐骨神経痛)に当てはめて考えていきたいと思います!


それでは、よろしくお願いします!


1.THAと股関節屈曲可動域制限

THAにもいろいろと種類があり、大きく分けて前方アプローチ、側方アプローチ、後方アプローチがあります。その中でも、後方アプローチの場合、深層外旋6筋や後方関節包を切離します(最近では、外旋筋を温存する手術もあります)。


後方アプローチの大まかな概要として

皮切:股関節後外側
関節包切開:後方
靭帯切離:坐骨大腿靭帯
筋切離:大殿筋・深層外旋6筋
神経損傷:坐骨神経
手術手技:容易

外旋筋の筋腹での切離


外旋筋温存での切離

図1

外旋筋の筋腹で切離している場合も外旋筋を温存している場合もどちらも術後縫合(張力)による影響や周辺組織との癒着を考える必要があります。(術式は他にもあるので、THAとどの術式で行ったのか確認が必要です)


では、「なぜ?」外旋筋の張力や周辺組織との影響を考える必要があるのでしょうか?

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結論から言うと、外旋筋は股関節屈曲可動域に関与するからです。


まずは、いくつかの文献を見ていきましょう!

・股関節屈曲可動域が増大すると上下双子筋や大腿方形筋が伸張された。特に大腿方形筋の伸張率が高かった¹⁾。

股関節を屈曲させることで、上下双子筋や大腿方形筋が伸張されるということは、上下双子筋や大腿方形筋の短縮、または損傷が生じると股関節屈曲可動域制限に関与する可能性があります。


・股関節屈曲により、内閉鎖筋と梨状筋の伸張が認められ、切離後に股関節屈曲角度は顕著に増加した⁵⁾

梨状筋を切離することで股関節屈曲可動域が増加したという報告から、梨状筋の張力や周辺組織との癒着が生じると、股関節屈曲可動域制限に関与する可能性があります。


・股関節屈曲時に外閉鎖筋が収縮すると骨頭に対し後下方から寛骨臼に押し付けるように力が伝わり、動的に股関節の後方安定を担う⁶⁾。

外閉鎖筋は後方から骨頭を押し付ける作用(ハンモック様の効果)があるため、骨頭の安定性には重要になります。ですが、筋の張力が増大、癒着が生じることで骨頭を押し付ける作用やたわみがなくなり、股関節屈曲における骨頭の動きを制限する可能性があります。


この様に股関節深層外旋筋は股関節屈曲に関与する可能性が高いです、THAでは外旋筋周囲の切離を行うため、周辺組織との癒着や外旋筋の短縮が生じる可能性があります。


また、高齢のTHAを受ける方は股関節外旋位のアライメントを呈していることが多いです。常に股関節外旋位のため外旋筋の短縮が生じている可能性も高いです。


そのため、股関節外旋筋群が屈曲可動域制限に関与している可能性を考えて評価・介入する必要があります。評価では、それぞれの筋にフォーカスを当てて説明していきたいと思います。


まとめると

図1

つまり、THA後の屈曲制限(後方因子)については外旋筋群の癒着、短縮、アライメントに対して評価・介入する必要があります。


2.股関節屈曲制限に関与する深層外旋筋群の評価

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