bossston cruizing mania・カシマエスヒロ、欅坂46を語る【前編】

画像1

bossston cruizing maniaのフロントマンで、ライブハウス「秋葉原CLUB GOODMAN」のブッキングを務めるカシマエスヒロさん。noteで配信している映画感想ブログ「とまどいと偏見」のフォロワーは2万5千を超える。

カシマさんと僕は“欅坂46の良さについて語り合う仲”だ。知り合った当初はなかなか心の距離を埋められなかったのだけれど、数年ぶりに再会した時、偶然にもお互い欅坂46好きだったことから会話が生まれ、一気に距離は縮まった。

そんな我々は2020年2月上旬に渋谷で落ち合った。その日は、デビュー曲「サイレントマジョリティー」でセンターを務めて以降、グループがリリースした8曲すべてのシングル表題曲でセンターポジションを務めてきた平手友梨奈が突然の脱退を発表して間もない頃。その席ではカシマさんに欅坂を好きになった経緯、ラジオ番組で発言した「欅坂46こそパンク」の真意を聞くなど、“独自の欅愛”を語ってもらった。

カシマエスヒロ
BOSSSTON CRUIZING MANIA
Twitter:https://twitter.com/esuhiro
note:https://note.com/esuhiro

■bossston cruising mania「Control」

振り付けを覚えたから見てくれ

--カシマさんってそもそもなんで欅坂46を好きになったんですか? 「アイドル好きになるんだ!」と驚いたもんですよ。

カシマさん:奥さんが欅坂46にハマったことがきっかけなんだよね。ウチの奥さんも、特別アイドル好きってわけじゃないから「アイドルを好きになるなんて珍しいね」と、眺めていたんだけど、ある日、帰宅すると「振り付けを覚えたから見てくれ」と突然言ってきたの。その頃は欅坂46の振り付けだともよくわからずにぼんやり見ていた。

--身近な人からの影響という“あるある”ではあるんですね。

カシマさん:その内、自宅のレコーダーは欅坂46関連の番組を撮り溜めたもので一杯になってきたの。俺はライブハウスで働いているので、仕事柄帰宅時間はだいたい深夜になる。なので帰宅すると特に見るものもないから、録画されている番組をぼんやり見ながら晩御飯を食べているんだけど、いつからか欅坂46の番組くらいしか選択肢がなくなってきた。それを見ている内に段々と「この子達、いいなぁ」と思うようになったんだよね。はじめはグループのコンセプトとかもよくわかっていなかったけど、「欅って書けない?」(テレビ東京)を見ていく中で、徐々にグループのコンセプトの面白さを感じ始めた。

--乃木坂46の妹分としてデビューしましたが、異質な感じはありましたよね。

カシマさん:振り返るとデビュー曲の「サイレントマジョリティー」はやっぱりものすごい曲だったし、個人的には「不協和音」までの4作はいずれも自分たちのイメージを自ら壊していく様な曲が次から次へと出てくるのが面白かった。そのデビュー当時の勢いに完全に乗せられたって感じかな。

■欅坂46「サイレントマジョリティー」

まるで少女たちの青春映画を見ているよう

--欅坂46以前にアイドルにはまったことってあるんですか?

カシマさん:俺の思春期の頃はアイドル映画が流行ってて、映画が好きだからそれらを観ていたの。ちょうどその時期が角川のアイドル映画全盛期で、話題の映画を観に行くと薬師丸ひろ子とか原田知世とかが出てて。で、その作品を撮っていたのは相米慎二とか森田芳光とか大林宣彦とか、今となっては邦画界の巨匠と呼ばれるような人達だった。そういう映画としての記憶がもの凄い刷り込まれてて、気がついたらファンになってたみたいな感じなんだよね。80年代の初期は松田聖子とかキョンキョン(小泉今日子)とかその手のアイドルが出始めた時期だったからそういうカルチャーが重なったことで、特にアイドルに興味がなくても子供の頃の記憶としてアイドル文化っていうのはあったね。

--なるほど。

カシマさん:欅坂46が面白いと思うのは、“映画を見ているような感覚”が味わえるというか、まるで少女たちの青春映画を見ているようなんだよね。これは持論だけど、秋元康が脚本家で、振付師のTAKAHIRO先生が演出家のような役割を担っていると思っている。TAKAHIRO先生は振り入れをする前に歌詞についてメンバーと会話をするみたいだけど、その作業って歌詞の中にある秋元康自身も気づいてない様なメッセージ性の部分を、TAKAHIRO先生が分解して再構築しているイメージというか。それが正に映画における脚本家がセリフで書いていないところを、演出家が表情やしぐさで演出するみたいな構図で面白い。

--それを見事に表現する平手友梨奈の存在も大きいですよね。2017年に開催された「欅共和国」で初めて欅坂46のライブを生で観たんですが、あの時、平手友梨奈に「世界には愛しかない」って高らかに歌われたら、“ああ、本当にその通りだな〜”って思えた。

カシマさん:昔の薬師丸ひろ子のセリフもそれ自体は薬師丸ひろ子が考えたワケじゃないし、実際はおっさんの監督がセリフとして言わせているわけでしょ。でも、薬師丸ひろ子というフィルターを通すことで、その言葉に真実味が帯びていくし、それが結果的に傑作に繋がったり、歴史に残る名言にだってなる。実際、あの「セーラー服と機関銃」での「カ・イ・カ・ン」ってセリフは薬師丸ひろ子が言ったから名言として残ってるわけじゃん。俺にとって欅坂46はそういう存在なんだよね。

--欅坂46の大人数だからこそ表現できるダイナミックな振り付けもいいですよね。

カシマさん:ダンスは門外漢だから、細かいことは全くわからないけど、個人的にはTAKAHIRO先生の振り付けの面白いところは、滑稽な動きがどこかにあるところだと思ってるんだよね。「サイレントマジョリティー」の中にもペンギンのような動きをする部分があるんだけど(MV 1:53頃参照)、その“ちょっとクスッと笑っちゃう”ような振りがあることが重要なんだと思う。それはパンクとかロックも同じで、ちょっとダサかったり、なんか笑っちゃうところが少し含まれている方が、人間味があっておもしろいと思う。実際、音楽を聴く上でも、そういう人間としての可愛らしさみたいなのを感じるものの方が興味が沸く。

画像2

欅坂46はパンク

--2018年4月10日に配信された「えるえふるラジオ」ではカシマさんから「欅坂46こそパンク(34:15頃から〜)」という発言がありましたね。

カシマさん:世間一般の「パンク」に対するイメージって、“乱暴で暴力的で反体制”と定義されていると思うんだけど、俺の中ではまた違った捉え方をしていて。パンクとは「世間を俯瞰で見ながら、それを茶化すようなクールな姿勢」と解釈しているの。世間のシステムを突破するとか、スタンダートとされているものと別軸で攻めるというオルタナティブにも近い姿勢を欅坂46には感じて、そういう意味でパンクと表現したんだと思うよ。

--いわゆる“文系パンク”というか、わかりやすくモヒカン・革ジャンを着ているパンクとはまったく違うと。

カシマさん:アンダーグラウンドのバンドが売れて、メジャーなシーンに現れてシステムを破壊するみたいな図式はこれまでにもあったけれど、欅坂46がデビューした時、ロックバンドがそれをできていなかった。それを大メジャーのフィールドの内部から出て来た欅坂46が“それをやるのか”というのが面白かったかな。

■欅坂46「エキセントリック」

碇シンジと平手友梨奈

--デビューしたときの平手友梨奈はセンターを務めるにあたり、「どうしよう…自信がない」「絶対できないと思った」と発言していました。オーディションも「自分を変えたくて受けた」と言ってましたよね。

カシマさん:これは同世代で同じ様な趣味を持ってる人は分かると思うんだけど、欅坂46と「エヴァンゲリオン」の世界観はよく似ていると思っているの。非凡な才能を持つ、14歳の少年・碇シンジは、わけもわからずエヴァに乗せられてよくわからない敵と戦う。本当は乗りたくなんてないのに…でもこれまでの自分は辛いことから逃げてきた人生だから、なんとかそれに立ち向かおうとする。だからこそ「逃げちゃダメだ」と自分に言い聞かせる有名なセリフも生まれて。そんな碇シンジとてち(平手友梨奈の愛称)の姿はなんとなく重なるんだよね。てちのデビューも14歳だし。

--個人的には欅坂46のいい時のライブはノリに乗っているロックバンドのライブと変わらぬ快楽が味わえると思っていて。その中でも2017年の「欅共和国」と2019年の東京ドームライブは本当にすさまじいライブで胸が熱くなりました。で、その“ものすごいグルーブの中心”にいたのは、やっぱり平手友梨奈だったなって思うんです。ライブ中に見せる「不協和音」MVの3:54のような不敵な笑みにどうしようもなく心を掴まれたというか…。

■欅坂46「不協和音」

カシマさん:モニターに映し出される非凡な存在感というか、てちには持って生まれたカリスマ性があるよね。誰が悪いわけではなく、“平手友梨奈という才能”を見つけてしまったら、グループとして彼女を打ち出していくのは仕方のないことかなと思う。だから今泉佑唯が卒業を選んだ時は「エヴァ」の惣流・アスカ・ラングレーの姿を重ねてしまったんだよね。アスカは天才肌の主人公・シンジに対して嫉妬して次第に葛藤する気持ちが強くなっていき、エヴァに乗ることができなくなってしまった。

--なるほど。しかし、欅坂46を卒業した後、ものすごく魅力を開花させましたよね。

カシマさん:うん、すごく生き生きとしているよね。だから、卒業や脱退も必ずしもネガティブなことではないと思うというか。俺は思春期に角川映画があって、青春期にパンクが好きになって、その後、「エヴァンゲリオン」にはまったんだけど、そういうルーツを辿った人は多いと思うし、そういう人は絶対に欅坂46を好きになると思っている。PANICSMILEの吉田(肇)さんに欅坂46を勧めたら、多分好きになると思うんだけどな。
後編はコチラ:https://note.com/yhinakayama/n/nf9f5a5134349

写真:中山洋平