あの頃と、この頃。
中学生の時に使ってた通学路を車で通ってみた。
あの頃は、風を直接感じ、匂いを感じ、友だちと寒いだの暑いだの騒いでたけど、今は1人で密室の中。寒くない、暑くもない。
あの頃は、歩行者用の信号で判断してたのに、今は車道の信号を見て進むことを決めている。
同じ道なのに見えているものが全く違くって、見えている景色が全然変わって、大人になるってこういうことなのかもな、と思ったりした。
成長すると嫌でも見えるものが物理的に変わってしまう。どうあがいてもあの頃には戻れない。戻りようがない。そのことを身をもって実感した。日。
あの頃の気持ちをもう同じ温度で体験することも、同じ色で辿ることも、もう不可能だということには、少なくない悲しみを覚える。でもあの頃の気持ちは事実で、紛れもない真実です。今のわたしの気持ちもいずれは思い出となり、無かったことになったり、刻印になったり、するのね。するのよ。それでもやっぱりいつまで経ってもそれは真実、事実。いつでもここに横たわっている。
過去のわたしは過去のわたし。肉体も、精神も、環境も、今とは何もかもが違う。過去のわたしという人間なんです。昔は良かった、なんて言えない。昔はこうだった、なんてもう言えない。共感なんてできない、してあげられない。それをすることは一種の冒涜のように思える。過去のわたしは彼女なりのやり方で生きていたはずだから。今感じている気持ちをきちんと大切にすること、それが一番自分への還元。
街が形を変えて、季節が何度移り変わっても、あの頃のわたしは、今もちゃんと自転車を漕いでいる。