焔猫 戒音-kainé-

ぽつりぽつりと物語ります。 種族名:焔猫 えんまお 個体名:戒音 かいね 人外の魔…

焔猫 戒音-kainé-

ぽつりぽつりと物語ります。 種族名:焔猫 えんまお 個体名:戒音 かいね 人外の魔性です。

最近の記事

螺旋の記憶

いつからここにいるのか… 正直、記憶は定かではない。 踊り場に辿り着く度に、印を残し てきたつもりだが、それさえも定 かではない。 同じような造り 同じような間取り 何段登れば踊り場に辿り着けるの さえ… だが、この胸に重い疲労のように 積み重なる決意だけは さらに固く 深く闇の色を増してゆくのだ。 なにをしようとしているのか 誰をどうするのかさえも 定かではない だが、やり遂げてみせる、と 私は前をむく くずおれそうになる身体を支えて 前を向くのだ。

    • 追うモノ

      「来い」というその声 どこまでも深い深い闇の奥底から 何処ともしれぬ 遠い星々の果てから それでも、僕の耳にこうして …届く 簡単にふれあうことができそうな ほど近く近く感じるのに なにをしても届かないほど 限りなく 遠い だから 決めた なにを捨ててでも 追う、と。 群れ集う八百万の狭間のモノたち そのずっとずっと先にいる 静かな面影 来い、と 僕を呼ぶ 各々に閉じ込められた孤独の深さ それはもしかすると 乗り越えることは出来ないのかも しれない けれど そ

      • 願うこと

        嬉しそうに駆け出す刹那 シャッターを切る 君の面影 届く 届かない そんなことはどうでもいい まっすぐに駈けておゆき 幾度でも 立ち返る 幾度 喪っても たとえ気付かれなくとも この刹那 これがボクのチカラになる それでいい

        • 解く者の独白

          時々、自分がなにを言いたいのか わからなくなることがある、と 君はぽつりと呟いた。 「そんなことないかな」 同意を求めるつもりも無いくせに そういうと、君は曖昧な笑顔のま まで窓の外に目をやった。 人混み 目映く輝く陽の光を跳ね返す ガラス細工のようなビル群 違和感という意味ならば、わから ないことはないよ 素っ気なくそういうと、君は少し だけ安心したようだった。 「だよね」 「ああ」 人差し指でテーブルを軽く叩くと 乾いた音がした。 たとえば、これはテーブルに見

          花束の意味

          横たわる身体に心はあるか 寝息を立てている 生きている 温もりが指先に残る たしかに そこに いるのに これ以上動けないのは 恐れているからなのか それとも 迷っているからなのか 決めなければならない 残るのか 残すのか 見続けるのか この手を離すのか …抱きしめるのか 届かなかった声と 届けられなかった想いとが 結びついたものを 骸と呼ぶのだとするのなら そこにあるものは 骸そのものではないのか、と 踏み出せないまま 互いの時間を縛り続けるのは もう止めよう

          宇宙の音楽

          この世界は音楽で出来ている、と 君は俯いたままで 呟く その手に揺れる小さな鈴の音は ふれあう度に 共鳴して 君の声が 描き出す世界の 恐ろしいまでの深さに 僕は震えながら虜になる この世界は 音楽で 出来ている 調和も 破綻も 全てが いと高き 顔も名前もなくした誰かを 讃えるためにあるのだ、と 君は 歌う それは禁断の呪詛だ

          夜を見守る者

          見守るその眼は出来損ないか。 伝令が飛ぶその電子の仕組みは お前たちのその足元を掬うだけで 真実には決して辿り着かない 見守るその眼は 役立たずか。 答えはここにある。 いつも ここにあるのだ。 畏れを忘れた不夜城の足元 広がる無限の闇が 空に向かって手を伸ばすとき 警告を告げるために 蠢くものは 必ず、その眼を掻い潜る。 見守る覚悟があるのなら 曇ったその心を奮い立たせて 凜と立ち 刮目として見よ 重なり合う流れの果てにある お前たちの真実から 眼を 逸

          夜を見守る者

          とある会話

          また逢おうね もう届かないだろうと思いながら そんな言葉を紡いでみた。 人の世の絆というものは生々流転 とめどなく組み合わせを変え続け るものと相場が決まっている。 …わかっているつもりではある。 でも時々、こうして痛みのような ものを感じることがある 「人の世に立ち交じる弊害か」 そうかもしれない。 「…嫌か?」 そんなことはない。 「で、どうする」 もうしばらくこのまま見てるさ 「見飽きないことを祈るよ」 風の中に、ふわりと笑い声が散った。

          断罪

          孤高を気取って貴方が為した事は いったいなんだ。 その足元に横たわる小さな亡骸は どんな罪を犯したというのだ。 本当のぬくもりがどんなものかを 貴方は知らないままに 皆に分け与えようとした。 それが罪だ。 果ての無い傲慢な罪だ。 その罪を貴方に代わり償ったのが 足元に横たわる その亡骸なのではないのか。 幸福の王子よ。 砕かれてあれ。 永劫に 裁かれてあれ。

          宝珠に映る世界

          巡る巡る 生命の焰 回る 回る 糸繰り車 その繊手はしなやかに 世界の理を紡ぎ出す 見えぬ瞳のその先 ひらめく気配に 微笑んで 回る 回る 糸繰り車 巡る 巡る 生命の焰 願うこと 望むこと その果てで もう一度 また一度 ほつれて切れた縁もきっと 再び 宝珠の龍女は静かに佇み 全てを 愛おしむのだろう 回る 巡る 巡る 回る 嬉しそうに 大事そうに そうして 再び

          宝珠に映る世界

          学び舎の一幕

          たとえば「秘密」という言葉を選ぼ うか。 その言葉を耳にし、口にしたときに 諸君はどんな印象を持つのか。 また、その文字面を眼にしたときに 詩人は軽く咳き込んだ。 「失敬。悪い咳に捕まっていてね」 「秘密」 厳重に秘めておく、という文字通 りに、表に晒すことをこの言葉は 手厳しく拒む。 では、どんなことを秘しておきた いのだろう。 それらを営々粛々と集めておくの だ… そうして 「言葉の周りを幾重にも繰り返して そぞろ歩きするのさ」 詩人は言葉を継いだ。 「それ

          学び舎の一幕

          仮面劇 - ひとりごと

          もしかすると思った以上に この世界には 違うサイクルで生きるものたちが 潜んでいるのかもしれない、と 君のとりとめも無い夢物語を 退屈そうに 聴いているのは 照れ隠しに過ぎない そのときが 来ることを 恐れているだけ もしかすると 君の隣にいるひとは …違う存在かもしれない もしかすると 気付いていないだけで 君自身が 違うサイクルで生きる生命は 悪しき者か それとも 善き者なのか 誰が決めるんだろう… 君のとりとめも無い夢物語を にこやかに微笑んで 聴いているの

          仮面劇 - ひとりごと

          願うことはいつもただひとつ

          ひらひらと風に舞ういくひらもの はなびらが餞となるのは 涔々と 降りしきるしらゆきが 涙の意匠に変わるのと もしかしたら同じなのかもしれない 誰かの心の機微を悟るためには もしかしたら 同じだけの痛みを知らなければ ならない そうなのだとしたら 畏れることだけは 決して してはならないのだ、と 目映く照らす陽の光を胸に 私は 月の影となろう いつかしたあの約束は この時のために そうして 遙かな明日のために

          願うことはいつもただひとつ

          残り香の月

          ボクらは ひとりぼっち 夢をみる それぞれの未来 それぞれの過去 ひとりぼっち同士の儚い夢物語 重なり合うその刹那に ふわりと香るもの その残り香だけでさえ こんなに胸に染みいるのだから もしも 手をとりあえたなら もっと ボクらは ひとりぼっち だけど 孤独じゃ無いと 月光は微笑むだけ なのに こんなにも嬉しい

          舟歌

          この 透きとおるような碧い水面に 無作法に 艪を突き入れるのは どうにも 忍びない 渡るためには そうしなければならない きっと…それだけのこと 前に 前だけに 進むという選択 今しか出来ないことがある …とするのなら 立ち止まり振り返ることがあった としても 間違いではない… あなたなら そういうだろうか 不器用な優しさを思い出すことは きっと間違いではない 互いに隠していた小さな後悔を ひととき忘れて 大好きだった歌を ひとり 口ずさんでみようか 振り返る

          眠る君へ

          素直なのか そうではないのか そんなことはもしかしたら どうでもいいこと なのかもしれない 君のこの小さな重さを そのまま 抱きしめておきたいだけ …それだけのことだから まぶしいのか 自分の目を 小さなその手で隠す仕草 安心しきってくれているのか …重さの全てを私に預けて眠る 君の気配 君の寝息 そんなちいさな幸せが 掛け替えのない大切なものだと 忘れないように 膝に食い込む小さな爪の痛みを 胸の内にも そっと 刻んで