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Cities in Dust - 1st Phase

それは
悲鳴だったのかも知れなかった。

灼熱の陽光
呼吸を乱す土煙
流れる汗に纏わり付くのは
小さな羽虫だけではない。

徒労。

果ての無い
身の丈にそぐわない
欲望の果てに
その都市は
とうに喪われていた。

『私』はイオ。
『私』たちは遺構の調査を命じられて
その惑星に降り立った。

この場所がかつては青々と水を湛
えた生命にあふれた「故郷」だった
としても、感慨もなにもあるもの
ではなかった。

かつては絢爛たる輝きに満ちてい
た水晶の都市。
尖塔は崩れ堕ち、癒やしの場であ
ったはずの祈りの場も

ただの瓦礫の山となっていた。

「お前も覚えているのか」
人型ナビゲーター端末のひとつに
何を問い掛けるのかと振り向くと
探査団の長がそこにいた。
『記録データとの照合を完了した』
「ああ、そうだったな」

長の手が右肩に重かった。
「…ただの情報端末だったな」

そうだ。『私』はイオ。
記録のために産まれた情報端末。

この記録を読む者へ
伝えたいことがある。

長い
長い
旅の話だ。


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