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血液型占いはマジョリティによるマウントである【血液型ハラスメント】

皆さん、こんにちは。

血液型占い、お好きですか?

日本ではA,B,O,AB型全種類の血液型が偏在していること、種類が少ないので誰でも簡単に覚えられることなどから、最も人口に膾炙した占いになっています。

中には「俺B型だからさ~♪ ごめんね俺様で♪」などと自認しつつコミュニケーションに活用していらっしゃる方もいます。

それを根拠にした自分の説明書などというコンセプトの本すら流行りました。

血液型占いがお好きな方を否定しませんが、他人にレッテルを貼ることについてはどうかと考えています。それによって嫌な思いをする人も多いからです。

今日は血液型占いにまつわる虚実と、これらが流行している仕組み、その問題点についてお話ししたいと思います。



先日、いつも小説を中心に創作活動をされていらっしゃる女王まりかさんの以下の記事を読んで、

炸裂する血液型ブラッドタイプハラスメントに思うところがあり、筆を執りました。

血液型ブラッドタイプハラスメントとは、例えば「あ~! B型なんだ! 自己チューなんだね!」などと血液型を根拠に謂れのない偏見を向けてくる行為のことです。なお、口に出さずとも態度に出るだけで問題です。ひいては血液型を聞いてくること自体がハラスメントであると言えるかもしれません。

また、血液型ブラッドタイプハラスメントが横行した結果、A型のように演技するB型B型のように演技するA型、など不毛な「隠れ〇型」を生み出してしまいました。

救急搬送された時、普段の嘘を聞いていた誰かが「彼女は〇型です……!」と言ったせいで誤った血液が輸血され、結果死に至ったら血液型ブラッドタイプハラスメントのせいです。

(※ふつうは輸血前に検査するのでよっぽどのことが無い限りそんなことは起こりません)

マジョリティによるマウントの仕組み

そんな悪しき血液型ハラスメントですが、実は「マジョリティによるマウント」が横行していることに気づいた方はいらっしゃるでしょうか。

振り返ってみましょう。一般的な血液型占いのイメージでは、こんな感じではないでしょうか。

B型/良い点:自分がある、悪い点:自己中心的
O型/良い点:コミュ力高い、悪い点:大雑把でガサツ
AB型/良い点:天才、悪い点:変人

あれ、A型はどうしたんでしょう?

A型/良い点:几帳面で真面目、悪い点:気が弱くて繊細

ふむふむ。

……ん? 何か違和感がありますね。

この悪い点は本当に欠点ですか? 他三つが自己中、ガサツ、変人と容赦なく罵られているのに、A型は「気が弱くて繊細」ですと?

しかも、A型は日本人の美徳とされる「真面目」という要素を持っているのですか? まるでビンゴゲームで一番に上がって、一番好きな商品を手に入れた人みたいですね。

次に、血液型ごとの人口割合を見てみましょう。

A型:40%
B型:20%
O型:30%
AB型:10%

日本輸血・細胞治療学会HPより

これをもとに、割合が多い順に並べてみると以下のようになります。

A型/良い点:几帳面で真面目、悪い点:気が弱くて繊細
O型/良い点:大らかでコミュ力高い、悪い点:大雑把でガサツ
B型/良い点:自分がある、悪い点:自己中心的
AB型/良い点:天才、悪い点:変人

何か気づきませんか……?

そう。人口割合が多い順に良いことが書いてません?

O型の「大らか」とか「コミュ力高い」だって、かなり尊敬される特性です。大雑把でガサツなのは、捉え方によっては無頼でカッコいいかもしれません。

一方、和を尊ぶ日本においてB型の「自己中心的」やAB型の「変人」はもはや「社会不適合」に近い言葉です。特にAB型の「変人」に至っては情報がゼロでひどいですね。よく考えて見れば、「数が少ない=理解できない=変人」というマジョリティ目線の主観に過ぎず、何の性格特性も表していません。

ですが、こんなの別に何も不思議なことじゃありません。

A型に良いイメージが集中している理由

この占いを広めたのは主にテレビや雑誌などのメディアであり、売れるうちが華よとばかり好き勝手に発信を続けてきました。彼らが血液型占いの詳細を考えた時、何が起きたか想像すれば理由は明らかです。

第一に、
「日本人は真面目だ→日本人に多い血液型はA型だ→ならばA型は真面目に違いない」
という風に考えた可能性があります。

そしてそれは当たるのです。

なぜなら、グラデーションはありますが、日本人は概ね真面目な国民性だからです。そもそも血液型に関わらず日本人はほぼ全員が真面目な性格特性を有しています。だから真面目な人を見つけたら、たいていA型なんです。

第二に、
国民の60%がA型かO型であるならば、テレビや雑誌のお偉いさんはたいていA型ないしO型です。企画を通す時、目の前にいるA型やO型に向かって「自己中」なんて言えますか? そもそも、マジョリティのA型とO型が褒められていい気分にならないなら、その占いは流行りますか? いいえ、流行りません。そんなことしたら敵をいっぱい作ってしまいます。だから悪役はマイノリティであるB型とAB型に押し付けたのでしょう。

そもそも、血液型占い以外にもマイナーな占いタイプに対してはいわれのない中傷が横行しがちです。

例えば、最近流行りのMBTI診断です。2023年のデータでは日本人ではINFP-T(仲介者)が12.91%でTOPです。INFP-Aと合わせると16.44%となり、日本のマジョリティである彼らの説明は「共感力に優れ和を尊ぶ」といったところでしょうか。うん? どこかで聞いた話です。そう、A型と同じです。日本人の美徳とされる要素なんですね。

そして、まぁ特に他意はありませんが、マイノリティから代表してINTJ(建築家)を見てみましょう。INTJはTもAも2%未満ですが、ご覧ください。元サイトでもINTJ-AとINTJ-Tがごっちゃにされています。マイノリティはどうでもいいということですかね。

試しにYouTubeのリール動画で「INFP」と検索し、10個回してみましたが出て来た欠点は「情緒が不安定」「繊細」「現実的な思考が苦手」などでアンチ動画は見つかりませんでした。

一方、「INTJ」で検索してみると、「共感性がない」「ヴィラン」「マジでヤバイ」「疑い過ぎて怖い」「孤高過ぎて怖い」「NT型にはマジで気を付けて」「恋愛下手」「孤独死する」などなど好き勝手言われたあげく、アンチ動画が2件引っかかりました。

そう、マイノリティは叩いても反撃され辛いんです。

マジョリティから見てマイノリティが変わっているように思えることは当然ですが、彼らは「自分がマジョリティだからマイノリティが変わって見えているだけ。数が逆なら見方も逆になる」ということに気づいていないケースが多いです。普通がそもそも何であるか考えず「自分こそが普通」であり、「他は変人」と感覚的に捉えることは、容易に社会的な分断を生み出します。

MBTI診断に関する余談

でも、血液型占いって当たるよね?

そう思った方がいらっしゃるかもしれません。
もし「当たっている」と思うなら、逆にこう考えてみてください。

血液型占いこそが私たちの性格を捻じ曲げているのです。

心理学用語の「ピグマリオン効果」をご存じでしょうか。
簡単に説明すると、「人は他者から期待されると、期待に沿った成果を出す傾向にある」という現象です。

もし、あなたがA型である場合、テレビなどを見ているとことあるごとに言われます。「A型は真面目です」「A型は几帳面です」「A型は繊細です」……。あなたが意識的に捉えていようといまいと、そう言われ続けることで無意識にその期待に応えようと行動するようになります。

すると、周りの人からも「あなたは真面目ですね」「仕事が丁寧ですね」「繊細ですね」などと言われ始めます。

あなたはその期待に応えようと、さらに真面目さや几帳面さを追求するようになるのです。

また、「期待」はポジティブな要素にのみはたらくわけではありません。「お前はダメな奴だ」と言われ続けて本当にダメになってしまう人がいるように、「B型は自己中心的」と言われ続ければ、その期待に応えようと無意識に自己中心的な振舞いを強化するようになります。

この現象に拍車をかけるのが、「確証バイアス」です。これは認知バイアスの一種で、「自身の先入観や希望に合致する情報にのみ注目し、それに反する情報を無視してしまう傾向のこと」です。

もしあなたがA型でそれを公言しているなら、人はあなたを見る時「真面目さや繊細さ」に着目し、そうでない振る舞いは無視します。あなたは常にそのフィードバックを受けるので、A型的な特性がますます強化されます。

なおかつ、自分を振り返る時にも、「私はA型だから細かいことが気になるんだわ」などと考えて「とはいえズボラなところはズボラ」だったとしてもそこは無視します。ですから、あなたの自己認識もどんどんとA型の典型例に近づいていきます。

これら全ての螺旋的な作用によって、もとの性格がどうであれ、気づけば実際にA型的な人間になってしまうのです。

他の血液型の方も同じことです。血液型占いが流行している日本、韓国、台湾などにおいては、この仕組みによってある程度血液型占いが当たってしまいます。当たってしまうからさらに流行り、人々を血液型の枠に押し込める負のスパイラルが発生します。

そもそも科学的な根拠はあるのか

ありません。

過去に血液型と性格の関連が国内外で研究されたことは事実ですが、結果的に否定されています。

血液型による性格診断の本格的な発祥は、1927年の日本で行われた研究であると言われています。この研究は、たった11人のデータをもとに判断されました。当時としては仕方がなかったのかもしれませんが、統計学的根拠は金魚すくいのタモよりも薄いと言えるでしょう。

その上、後の追試の結果はバラバラで一貫性がありませんでした。

血液型占いに科学的な根拠はありません。
ただ前述の通り、心理学的・社会学的な効果によって、現代日本ではある程度当たる可能性があります。

最後に

本記事で語った通り、血液型占いは個人で楽しむ分にはともかく、他人にレッテルを貼った時点で甚だしい悪影響を与えます。既に血液型ブラッドタイプハラスメントという言葉が出来てしまっていることから分かるように、この件で苦しんでいる方が少なくないという事実は無視できません。

では、我が強くなりたいA型の方、自己中心的になりたくないB型、几帳面になりたいO型のあなたはどうすれば良いでしょうか。

ひとえに「血液型占いとなるべく関わらないようにする」しかないでしょう。書籍、雑誌、テレビ、インターネットにおいて、血液型占いやそれに関する意見をシャットアウトします。日々の社交においても、血液型を聞いてくる人は血液型信者ですから、理由をつけて明かさないようにしましょう。

差別、ジェンダー、ルッキズム。多くの問題は、「自分の努力ではどうしようもないこと」で望まないレッテルを貼られることが本質にあると思います。聞いてもいないのに「あなたは〇〇だから〇〇なんだね」と決めつけられることほど不快なことはありません。

私たちは一人ひとり、なりたい自分を目指す権利があります。血液型占いなどという根拠薄弱な診断に足を引っ張られないよう、私たち自身の身を守っていきましょう。


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