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うつの時、周りにしてほしいこと・ほしくないこと

 以前、うつや双極性障害について書いた記事が好評だったので、当事者目線から、うつ状態の時に、周りにしてほしいこと、してほしくないことを列挙してみる。

 うつの人が周りにいて、どう接したらいいか分からない、という人に見てもらうと、参考になる可能性がある。

 なお、私個人の観点で話すので、必ずしもすべてのうつ病・躁うつ病患者に当てはまるものではないが、ある程度一般性のある内容だとは思う。

うつの時してほしいこと

 実は、うつ状態の時に当人がしてほしいことはあまりない
 何かしてほしいという欲求も無くなりがちだからである。
 うつ状態の時に当人がすべきことは、「生きる」ただそれだけだ。
 なので、有用なのは、

  ・金銭的なサポート
  ・生活のサポート(通院、食事、洗濯、掃除)
  ・気長に待つ

 この3点だけだと思う。

金銭的なサポート

 働けない状態なので、当然、必要だ。場合によって障害年金や傷病手当が出るとは思うが、十分でない可能性はある。そして、本人にそれを管理する気力はない。必要な書類を書けるかどうかも分からない。なのでその辺りを気にしてもらえると助かる。

生活のサポート(通院、食事、洗濯、掃除)

 通院はともかく、家事をやって、なんて甘えてると思うかもしれないが、汚い部屋や洋服は精神の回復を妨げるし、食事は本当にしんどいので、当人に任せておくと、過食ないし栄養失調になってしまうこともある。
 なので本当に基本的な身の回りのことに関しては、サポートしてもらえると本当にありがたいと思う。

 心配しなくても、よくなってきたら、自分から掃除を始めたり、散歩に出たいと言い出すようになる。
 あくまでも本人が、自ら言い始めることが重要である。

気長に待つ

 うつとの付き合いは長期戦である。「よくなってくる」までのスパンは、人によってさまざまだが、基本的には数か月~半年以上、長引けば数年はかかると思った方がいい。外から見ると、半年も寝ているだけなんてサボってると思うのも無理はないが、本人としては生きているだけで精一杯である。

 もしあなたが、相手に「生きていて欲しい。いつか元気になってほしい」と願うなら、急かすのではなく、それを信じ、どうか気長に待ってほしい。結局はそれが一番回復を早める。

してほしくないこと

 うつ状態の時に、してほしくないことは多い。基本的に、「してほしいこと」に書いたこと以外は「何もしない」が正解であるケースが多いと思う。
 それでも、周りの人がやりがちで、してほしくない行為を挙げてみる。

  ・人格を否定する
  ・アドバイス
  ・何かをさせようとする

 ただ、ここに上げたようなことを「すでにしてしまった」としても、だからといって、悪意があるわけでもなし、あまり自分を責めずに、そういうものかと思ってもらえると嬉しい。

 人間は常に過たずにいられるわけではない。次に同じ状況になった時、前よりも良いことが出来れば、それだけですばらしいと思う。うつ病の当事者と同じように、あなたも、毎日を必死に生きている大事な人だ。

人格を否定する

 普通はそんなことしないと思うかもしれないが、健康な人はとにかく、うつ病患者の気持ちは分からないから、やってしまいがちである。

 うつというのは、脳内のセロトニンやドーパミンなどの分泌物が正常に分泌されなくなる脳の病気であって、「心の病気」、「心が弱いからなる病気」、という認識は、やや的外れである。

 あなたも「心が弱いからうつになったのね、かわいそうね、大変ね」と思うかもしれないが、うつを誘発した原因に、本人の繊細さがあるかどうかは場合によりけりである。

 何がきっかけでうつになるかというのは、本当に人さまざまで、一概に言えることではない。色々な意味で(ブルシットジョブを含む)過酷な仕事を延々やらされたり、パワハラだったり、周りに受け入れられないという環境的な要因、ショッキングな出来事。

 確かに、同じ状況でもうつになる人と、ならない人がいるだろうが、なった人の心が弱いからということに必ずしも結びつかない。

 なので、「うつになったのはあなたの人格的な問題があったからだ」「弱いからだ」「かわいそうな人」
 こういうことを言わないでほしいのである。

アドバイス

 自分はうつになったこともなく、うつが脳の病気であるという理解もないのに、アドバイスしてくる人がいる。

 「もっと物事のとらえ方を変えた方がいいよ」とか、「散歩するといいよ」とか。
 うつ状態の時に浴びる素人からの分かったようなアドバイスほど、苦しいことはない。あるいは、「がんばれ」という言葉。

 別にメンタル疾患患者に対してではなくとも、「がんばれ」という言葉の闇は深い。

 そう声を掛けるとき、今はがんばっていないという予備認識がすでにある。つまり今よりもっとがんばれという意識だ。

 でも、人が何かをやろうとしているときに、がんばっていないことなんかない

 基本的に、人は物事を成功させるため、知恵や労力を使って最大限の努力をする。だから、あなたが「がんばれ」と言おうとしたその人は、多分、すでにもうがんばっている

 あなたから見て「がんばりが足りない」と思うなら、その人にとっては、体力・気力・時間などの問題があって、あなたよりも、物事に割けるリソースが少ないのだ。その人はその人なりに全力を尽くしている

 すでに100%回しているエンジンに、120%を求めるなんてひどい。それこそ死ぬカス(※死ぬこと以外はかすり傷)的、暴力的な考えである。

 それに、120%の状態はアドレナリンの助けに拠るものである。そんなことを続けさせると、だんだん自律神経に異常をきたし、健常な人でも様々なメンタル疾患を引き起こす

 「がんばれ」と気軽に他人に言う人は、それを望んでいるのか? いや、基本的に善意で言っているはずだ。だからこそ闇が深い。

 個人的に、「がんばってね」と言う時は、それを言って良い相手かどうかを慎重に考えているが、本人が「応援して! がんばれって言って!」と望んでいる場合を除き、「応援してるよ」とかに言い換えた方がベターだと思う。

何かをさせようとする

 「お皿ぐらい洗ったら」とか「寝てばかりいないで」という文句もさることながら、「映画を見に行こうよ」とか「たまには外に食事に行こうよ」とかそういうポジティブな誘いも含む。

 基本的に何もしてほしくないのである。5メートルぐらい離れたところから見守って、何か助けが必要そう、もしくは本人から助けを求められたらその通りにしてあげる程度で十分だ。

 あなたが、物事を良くしようとすることはステキだが、うつに関しては薬を飲んで寝るなるべく何の心配もなくそれをさせてあげる、これ最大限のことだ。

 本人から、何かの嘆き「何もできない、辛い」「もう何もかも嫌」といったようなことを言われた時は、反応が難しいだろうが、無理に励ますのではなく、ママみを発揮して、「そうかあ。辛いねえ……大丈夫だから、薬飲んで寝ようか」という感じで反応すればまあ問題はないと思う。相手を猫と思うといい。猫の仕事は寝ることである。寝かせてあげてくれ。

 なお、希死念慮が認められる場合、行動に出てしまうことを避けるため、可能な限り一人にしないことが大事だと思う。同時に、専門家への相談をお勧めする。

 最終的には、とにかく寝てれば治ると信じて寝かせるしかない。でも当事者は、しばしば、自分でも、治るということが信じられないでいる。だから、あなたが信じて見守ってくれることが、当事者にとって何よりも薬になる。


 以上、うつの時にしてほしいこと、してほしくないことを列挙した。この記事が、当事者や、周りの人の役に立つことを願う。

 なお、双極性障害やうつの当事者認識については以下の記事で触れた。もし興味があれば参照いただけると嬉しい。


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