当事者目線で語る双極性障害(躁うつ病)
前書き
双極性障害(双極症/躁うつ病)について、当事者の目線から軽く書いてみようと思う。
ただ、私は精神科医でもなんでもないので、誤った情報や思い込みが含まれる可能性がある。もし自分がそうではないかと思ったり、周りの人でそれっぽい人がいれば、これをきっかけに双極性障害について自分でも調べてみていただければと思う。
私は軽度(Ⅱ型)の双極性障害を患っている。
双極性障害というのは、ハイな躁状態と、うつ状態を繰り返す脳の病気(メンタル疾患)だ。
日本での有病率は 0.1~0.4%程度なので、1000人に1人程度と、うつ病と比べれば、やや珍しいかもしれない。
メンタル疾患と書くと「心が弱い」「気合が足りない」と思われそうだが、脳内物質であるドーパミン、セロトニン辺りが過剰だったり不足することが原因で起こる、単なる脳の病気であって、本人の努力、気合や根性でどうにかなるものではない。
その証拠に、適当にドーパミンやセロトニンやノルアドレナリンを補う薬を飲んでればそのうち普通に戻ってくる。
ただ、うつ病など他の疾患でも同じように、脳内物質のバランスは繊細で、多くても少なくてもなにがしかの異常をきたす。だから投薬治療も難しい。また薬の効果に個人差があり、効果が出るのに時間がかかる場合も多い。
双極性障害では、数日~数か月に渡るうつ状態と躁状態を繰り返す。繰り返すと言っても、ずっとどちらかに傾いているわけではなく、低調状態をキープする寛解期も存在する(※寛解であって、基本的に完治することはない)。
私が感じているうつ、躁の代表的な症状は以下のようなものだ。
うつ
強い不安感
わけもなく涙が出る
何もやる気が出ない
人に会いたくない
著しい自己肯定感の低下
希死念慮
躁
根拠のない圧倒的自己肯定感
根拠のない圧倒的万能感
根拠のない圧倒的多幸感
謎の圧倒的行動力
謎の怒り
24時間働けます(※あまり寝なくても平気)
当然うつ期には社会生活が困難だし、躁期には性的に奔放になったり、財布の紐が緩くなって浪費に走ったり、人と衝突しがちだったりと、こちらも社会生活が困難な場合がある。
上記を繰り返す人のQOLがどんな風になるかご想像いただけるだろうか。
躁があるから、うつだけよりいいではないか、と思うかもしれないが、うつが何年も続き、躁が数日という場合もある。一方、躁が長ければ、後日、その間の奇行を後悔したり、後始末に奔走することになる。
躁状態の苦しみ
躁状態の時の多幸感・万能感は、無理やり覚せい剤を打たれるような感覚に近い。
そこに行動力が加わるので、例えば、フッと我に返ると人間関係が崩壊していたり、100万も200万も借金してしまってた時の絶望感たるや。
自分の意志で奇行を止められるはずだ、と思うだろう。意志の力が弱いからそんなことになるんだ、と。
でも、人格のうち、脳内物質が占めるウェイトは大きい。少なくとも皆さんが思うほど確固たるものではない。脳内物質のバランスの妙は、料理と似ている。しょっぱすぎても甘すぎても不味くなるが、バランスが取れていれば味が濃いという個性になったりする。
そのバランスが狂ったとき、もちろん、脳が停止するわけではないので、論理的思考力は残っているが、その根拠となるパラメータが狂っていれば結論も狂う。泥酔していて平時と同じ判断をできる人はいないだろう。
特に躁状態では(私自身は軽い躁の範疇であるにも関わらず)、自分を鑑みる、止まるという機能が失われる感覚がある。
何かしようとするときの、「これをして大丈夫かな? 恥ずかしくない?」という自己批判的な声や、失敗を想像する想念が一斉に止まる。静かだ。そんな状態で、自分が病気かも知れないとは思えない。
しかも、悪いことに、病気になった経験のない人は、行動は自分で制御できるものだと信じている。病気の時にしでかしたことを、「あなたのもともとの人格がクズだからこうなるんだ」と、そう思われる。もしかしたら自分自身もそう思う。
でもそれは違う。
強制的にハイになる薬を打たれ、正常な状態では行わないようなことをやってしまうようなものだ。
なぜこんな風になってしまうのか。
科学的には遺伝の影響が大きく、しかし環境の影響も否定できないとしている。
私の場合は、抑うつ状態の時にセロトニン・ノルアドレナリンを補おうと薬をどんどん増量した、あるいは単純に休んで回復に努めた結果、ある時、爆発し、物凄い勢いで快楽系の脳内物質が分泌され、躁状態になってしまっているような気がする。(※科学的な根拠はありません)
出の悪いシャワーを想像してもらえると嬉しい。水量が一定ではなくて、水栓を全開にしたのに出ないなあと思ってたら突然ドバッと出るみたいな。
そして、水道管に溜まっていた量が出きったらもう一滴も出なくなるのである。
双極性障害であるということ
しかも、双極性障害は投薬を止めてからの再発率が高い。投薬を止めてしまうと、5年以内に8割が再発するそうだ。
完全には治らない。基本的に一生投薬治療を続けるのが良いとされる。
しかも、日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023によれば、双極性障害の既往があると、平均寿命が10年以上短くなる上、認知症の発症リスクが2倍になり、パーキンソン病の発症リスクは3倍になるという研究結果がある。生涯を通して健康には気を付けて投薬を続け、うつ状態にならないよう気を付けたほうが良いだろう。
双極性障害患者の危険性
ニュースなどで「統合失調症の方が事件を起こした」というのはよく聞くが、双極性障害はない。ここで述べている通り、うつと躁を繰り返す都合上、うつで凶悪犯罪を行う気力はないだろうし、うつでも躁でもない寛解状態なら普通の人と変わらない。
問題は、躁状態である。もしかすると激躁状態の時に、犯罪めいたことをやらかす危険性はあるかもしれない。実際にそのようなレポートもあった。
https://journal.jspn.or.jp/jspn/openpdf/1220030194.pdf
まとめ
まあ、でもすべては脳内物質の多寡によって起こっている脳の機能障害だ。当事者が悪いのではなく、若干不都合のある特性を有しているだけに過ぎない。悪くないし、弱くもない。
それに私たちは病気があってもなくても、未来を悲観するのではなく、明日はきっと今日より良くなると信じて、今を生きていくほうが良いと私は考えている。これを読んでいる方も、そう思ってくれたらうれしい。
以上、簡単に双極性障害について当事者の目線から話してみた。当事者の方や、その周囲の方にとって、理解の一助になれば幸いである。
また、詳しく知りたい方は以下の資料も参考になるかと思う。日本うつ病学会診療ガイドライン 双極性障害(双極症)2023
他に、私個人の、うつ状態になって回復する経過にもし興味があれば、以下を読んでいただけると嬉しい。
※双極性障害なのにうつ病の話をするのかと思われるかもしれないが、双極性障害のうつ状態はうつ病と症状としては変わらない。単極性うつ病。
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