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支援の原則的な考え方

2,219文字あります。個人差はありますが、4分〜6分ほどでお読みいただけると思います。

よこはま発達クリニック・相談室の佐々木です。
今回は「支援の原則的な考え方とは?」というテーマで書いていきます。

一律の方法はない

発達障害に関する特性の現れ方は非常に多様で、どのようにアプローチしていけばいいのか判断に迷う場面も少なくありません。支援を考える場合には、そもそも、「支援するとはどういうことか」という原則をおさえておく必要があるのではないでしょうか。

支援をするということは、その方々を支えるということだと考えています。そのように考えると、支えが必要な方向に支えを用意する必要があります。

例えば、身近な生活に置き換えて考えてみます。

ぼくは近視と乱視の程度が強いのですが、日常生活を送る上で必要な矯正をしてくれるメガネやコンタクトレンズはとても助かります。でも、「伊達メガネだけれど、今この形のメガネが流行っているからおしゃれになるよ!メガネ必要って言っていたから使ってみて」と言われても、僕の「見えない」という困りごとは解消されません。ぼくが困っているのは「見えない」ということで、「おしゃれ」で困っているわけではありません。

ここでは、メガネという支援があっても、「どこで困っているのか(見えない)」「何のため(ニーズ)に(視力矯正のため)」「誰のため(それがぼくの生活の質の向上につながる)」ということがズレてしまっていると、良かれと思ってのことだとしても、よい支えにはならない可能性が非常に高いということです。

つまり、ご本人やご家族が何に困っており、その問題の背景にはどのような障害特性が起因しているのかを考える必要があります。その上で、具体的な支援方略を考え、障害特性に適した環境調整と工夫をしていくことが重要ではないでしょうか。

障害特性に基づいた支援の原則的考え方

発達障害は脳機能の在り方、すなわち認知(ものごとの捉え方や感じ方)に偏りがあるといわれています(=脳のタイプが異なる)。

もしかすると認知特性の苦手な部分を伸ばし、克服させれば問題は目立たなくなるのではないかと考える専門家や支援者、ご本人、ご家族もいらっしゃるかもしれません。もちろん、発達障害の認知特性の現れ方は、年齢や環境によって変化しますが、その方の脳タイプが変わるわけではありません。そのため、いわゆる定型発達に近づけることを主な目的にすることではないと、私たちは考えています。

発達障害の支援の原則は、発達障害の認知特性に合わせた支援を行うことで、発達障害のある方々やご家族の困難が軽減することです。そして、ご本人にとって「今の暮らしは決して悪くはない」と自己肯定感を育みながら、地域社会の中で自分らしく生活できることを目標に支援を考えていくことが大切ではないでしょうか。

TEACCHとSPELL

発達障害の支援を考える際に参考になるものとしては、自閉症スペクトラムの支援で実績をあげている英国自閉症協会のSPELLという支援の考え方や、アメリカのノースカロライナ大学を拠点に実施されているTEACCH Autism Programなどがあげられます。それぞれについては、以前記事にも書きましたので、まだお読みでない方はご一読いただければと思います。

私たちには、自閉症の方の支援をリードしているTEACCH Autism Programや英国自閉症協会をはじめ、国内外に多くの仲間がいます。そうした仲間たちとも情報交換や連携をしながら、自閉症の方々やご家族、また関係する方々と一緒に、日本の自閉症支援のより良い未来を作っていきたいと願っています。     

PEACE

ここまでまとめてきたことを踏まえて、我々も大切なコアバリュー(価値基準)をもっています。それがPEACEです。これまでの、そしてこれからの支援でも重要な支援の原則であり、我々の「核」となる考え方です。

まとめ

今回は、支援の原則的な考え方について書かせていただきました。

  • 支援はただすれば良いのではなく、また支援者がしたい支援と当事者の方々にとって必要な支援は必ずしも一致するとは限らない

  • 大切なことは、「何をするか(What)」ではなく「なぜその支援が必要なのか?(Why)」

  • そのためには、支援の原則をおさえておくことが非常に大切

  • 英国自閉症協会のSPELL、アメリカのノースカロライナ大学を拠点に実施されているTEACCH Autism Program、そして我々の理念であるPEACEを参考に

  • いつもこれらの考え方に沿っているのか、そうしたことを意識しながら日々の支援を考えて

今回の記事が、少しでも皆さんの暮らしのヒントになれば幸いです。

よこはま発達相談室
佐々木康栄

2023年も支援の専門性の向上を目指し、多くの研修会を開催していきたいと思っております。現在は、Peatixというサイトにて研修会情報を掲載しております。宜しければ、どのような内容なのか等ご確認いただければと思いますし、皆さんとご一緒できることを願っております。

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