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スタートアップ企業が経理社員を採用する時に考慮すべきこと

スタートアップ企業が経理社員を採用する時には、何に気を付けるべきでしょうか。

以前は、経理社員は自社で雇用するのが当たり前でした。
しかし、環境はこの5年で大きく変化しています。労働人口の不足と、ITシステムの進歩により、様々なスタイルの経理代行会社が出現しています。

経理代行会社については、アフィリエイトや比較サイトの乱立で、ネットには玉石混交の情報があふれています。業界に身を置く人間からすると、首をかしげるような解説を見かけることもあります。

経理社員を採用すべきか、代行会社に外部委託にすべきか。
それぞれの特長を踏まえたうえで、自社に合う方を選択する時に役に立てれば幸いです。

経理代行会社は何をしてくれるのか

経理代行会社が請け負う業務の範囲は様々です。単純な業務を請け負う会社と、比較的高度な業務まで請け負う会社があります。

【単純業務の代表例】
・仕訳の入力(1仕訳50円~100円程度)
・請求書の発行
・現金出納帳作成
・振込・支払業務
・給与計算
・年末調整

【高度業務の代表例】
・クラウド会計システムの導入
・経理業務プロセスの設計
・月次決算早期化
・月次実績報告
・資金繰り管理(実績及び予測)
・事業計画作成(中期および単年度)
・月次実績報告
・予算実績比較分析
・経営分析
・経営戦略策定

代行業者によって、請け負える範囲が違います。単純な業務を外出しするのであれば、値段で決めればいいと思います。

しかし、成長にコミットするスタートアップ企業であれば、すぐに業務ボリュームが拡大します。単純な業務しか請け負えない業者を選んでしまうと、対応してもらえなくなり、業者を変更することになります。

高度業務を請け負うことができる会社は、税理士法人が母体になっているケースが多いです。しっかり業務設計できる会社を選べば、上場準備を行うまで、税務、労務、経営管理まで任せることが可能です。

中長期的な観点で、どこまで業務を外部委託するか考えておくとよいでしょう。

自社雇用と外部委託のメリット・デメリット

外部委託の特長を説明したので、自社雇用の場合と比較した、メリット、デメリットを整理します。

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自社雇用で良いのは、融通が効くことです。社員ですからなんでも頼めますし、会社にいればすぐに話しかけられます。

ノウハウが社内に蓄積されていくメリットもあります。会社の成長過程を共にすることで、社員に経験や判断軸、事業への理解が深まっていきます。

一方、デメリットは退職リスクです。ほとんどのスタートアップで、経理社員はひとり。辞めてしまう時には、社内でカバーしてくれる人はいないことが多いです。

経理が止まると、会社が止まります。後任社員の採用、教育で経営陣の時間を取られると、その分会社の成長が遅れてしまいます。

また、退職により、蓄積されたノウハウが散逸してしまうのもデメリットです。

スタートアップの人員不足は解決しない

以下は、中小企業の従業員過不足状況の統計です。
左軸のゼロから引かれた線より下回っている場合、「人手が足りない」と回答した企業が、「人手が足りている」と回答した企業を上回っていることを示しています。

従業員数過不足数DI

2013年からずっと、全産業において人員不足の状況が続いています。2020年のコロナショックで経済がストップしたことより、一時的に人員に過剰感が出ていますが、少子高齢化により日本の労働人口は減り続けるので、人出不足は基本的に変わらないと思われます。

自社雇用のデメリットは上述の通り退職リスクですが、人手不足の状況で、後任社員をすぐに雇えるかどうかはわかりません。

スキルが高い人材ほど取りにくくなります。単純作業を任せる人材であれば、比較的短期で後任を探せますが、経理の専門的なスキルを求めるほど、時間がかかります。

自社雇用を選択される場合には、後任がタイムリーに採用できるかどうかをお考えいただくことがとても大切だと思います。

経営の優先順位

自社の経営数値や資金繰りをどこまで管理したいか。
それによって自社雇用か外部委託かを決めるのも良いアプローチだと思います。

外部委託先をしっかり選べれば、2ヶ月でシステム選定と業務プロセスが構築されます。

そのあとは、月次試算表が毎月2週間後に出てくるようになるでしょう。

・数字を使った根拠のある意思決定
・KPIを確認しながらPDCAを回す
・中長期的な資本政策を踏まえた経営意思決定

これらに不可欠なのは、正しい決算数値をスピーディーに把握できることです。

スタートアップに限らず、経営戦略や経営計画を立てようとしたときに、実績数値が把握できないと、

・何が確実に見込めるものなのか?
・何がストレッチ(気合い)なのか?
・何が仮定で、何が根拠がある数字なのか?

こういう疑問が表出して、納得感のある戦略や計画が立てにくいのです。

経営数値管理の仕組みづくりを考える場合、事業会社の経理社員では、どうしても経験が不足します。

ひとつの会社で何度も仕組みを作ることはないので、経理社員として働いている人材には知見が溜まりにくいのです。

一方、代行会社であれば、数多くの会社で仕組みづくりを行なっています。

そのノウハウを活用することで、数値を根拠にした経営を実現することが可能になります。

まとめ

クルマも自分で保有する時代から、カーシェアリングを活用する時代に変わったように、経理人材も自社雇用だけが選択肢ではなくなりました。

自社雇用と、業務委託をうまく組み合わせて、自社に最適なバックオフィス体制を整えていただくのが重要だと思います。

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