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アメリカ大統領選挙、決戦の日

2016年の2倍、史上最高金額14ビリオンドル(1兆4000億円!!)を費やす予定のアメリカ大統領選挙、ついに明日、投開票が始まります。

日曜日の朝までに、歴史上最高レベルの9千200万人が早期投票を済ませていて、こちらも既に2016年の2倍を超えており、明日の投票最終日までに更に投票数は伸びる見込みで今回の選挙の関心の高さが伺えます。

今年はコロナ感染対策をするため、特にバイデン率いる民主党支持者はメールインバロット(郵送)で投票している人も多く、民主党は早期投票によるカウント数が多くなっている可能性があります。また、トランプ率いる共和党支持者は選挙日当日に投票する人が多いこと、トランプ側がメールインバロットをポストオフィスに置き去りにする選挙妨害を起こしていたり、一部の州ではメールインバロットで早期投票しても、11月3日の選挙日まで開票できないルールがあったりで、メールインバロットの開票には数日掛かる可能性が出てきていて、最終的な結果が見えにくくなっています。

ご存知の方も多いかと思うのですが、アメリカの選挙は選挙人制度で勝敗が決まります。各州人口に合わせた選挙人数が配分されていて、270人選挙人を獲得した候補者が勝ちます。

簡単にいうとポイント制の選挙で、日本のように単純な投票数の合計では勝敗が決まりません。例えば人口の多いカリフォルニア州は55ポイント、人口の少ないメイン州は4ポイントのポイント(選挙人)が配置されています。選挙人制度はwinner takes all,つまり各州勝った候補者が、その州のポイントを全取りします。

この不思議な選挙制度の為、2016年の選挙時はヒラリー・クリントンがポピュラーボート(日本と同じ単純な投票数の合計)で300万票以上ドナルド・トランプに勝ったのに、選挙人の数で負け、国民の多くが望まない結果になってしまいました。

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アメリカでは民主党が強い州はブルーステート。共和党が強い州はレッドステートと呼ばれています。例えば選挙人が全米で最も多いニューヨーク州やカリフォルニア州は「ソリッドブルーステート」で、この「ソリッド」と呼ばれる州は、各陣営確実に勝てるので各候補者は積極的に演説に入ることはしていません。

ところが、2016年の選挙の時に番狂わせが起こりました。長年ソリッドブルーステートだった、ペンシルベニアでヒラリー率いる民主党が負けたのです。更にヒラリーの負けを決定的にしたのが「スウィングステイト」と呼ばる選挙ごとに州のカラーが変わっている全米3位の選挙人数を握っているフロリダ州を取り損ねたことでした。

そして、今年の選挙でも番狂わせが起きています。最新のcnn支持率表によると、長年ソリッドレッドステートだったテキサス州で、民主党に投票する人が一気に増えたのです。この背景にはヒスパニック系の人口増加、白人の人口減少があるようなのですが、黒人、ヒスパニック系、アジア系などのマイノリティワーキングクラス層は、深夜のシフトで働く人も多く、投票すること自体の心理的ハードルが高かったそうです。そこで、テキサス州は駐車場で24時間投票できる場所を作りました。その結果、午後7時から午前7時までに8カ所の投票所で10250人もの人が投票し、内、800人以上の人は深夜から明け方にかけて警備員やファーストフード店のユニフォームを着たまま投票したそう。

深夜に看護服を着たまま投票しにきていたアジア系の男性が「健康保険と同じで、アクセスできる術がなければ何も出来ないんだよ」とインタビューに答えていたのが印象的でした。

今回の選挙の争点には、人種差別や健康保険問題があり、トランプは健康保険に入るのは個人の自由としていますが、アメリカの健康保険や医療費は本当に高額で、人種差別によって労働賃金が下げられている黒人やヒスパニック系にとっては健康保険代を支払うこと自体が難しい人も少なくありません。また、民間企業が権力を握る健康保険制度の中、基礎疾患などがあると人種マイノリティでなくても健康保険に入れなかったりする状況が何百年も改善されずにいます。一方でバイデンは国民健康保険を導入しようとしています。

テキサス州がブルーステートになれば、民主党にとっては歴史に残る大勝利になります。

アメリカ大統領選挙はついに明日、投票締め切りです。投票日当日も選挙活動ができるアメリカは、両陣営最後の追い込みをかけています。

今回の選挙で鍵を握っているのはフロリダ、ペンシルベニア、アリゾナ、ウィスコンシンの4州です。2016年、ヒラリーはこの4州全てを取り損ねてしまいましたが、今年はバイデンに追い風が吹いています。この風は、2016年の選挙時は「自分が投票しなくてもヒラリーが勝つだろう」と思い込んで投票に行かなかった大多数の人たちが、民主党に投票するために積極的に動き出したことで吹き荒れ出し始めました。

2016年と同じくこの4州が大接戦となり、4州の中で1番選挙人が多いフロリダ州でバイデン負けた場合「決戦の地」となるのはバイデンの故郷ペンシルベニア州です。連日数カ所で追い込み演説をしているトランプに対して、バイデンは明日の最終日もペンシルベニア州1カ所で演説する予定で、ペンシルベニアを民主党が奪還できるか否かも、明日の見どころで楽しみです。

多くの人は「自分たちの民主主義が危機にさらされているから、民主党に投票する」と話しています。アメリカで暮らす多くの人にとって、本当に過酷な4年間を通過したことで、積極的に民主主義に参加することの大切さとは何かを学ぶことが出来たように思います。

アメリカの民主主義がどこへ向かうのか?いよいよ決戦です!!




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