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いつの日か必ずコロナから自由になる

去年の春から始まったコロナアウトブレイクによる「自粛生活」も、気がつけばもう1年半が過ぎました。私の住んでいる町は、ワクチン接種は進んではいるものの全くスピード感がなく、新型コロナウィルスはいまだ収束の兆しすら見えていません。

毎日朝起きてから1時間ほどニュースを読むようにしているのですが、ここ数ヶ月はコロナ関連ニュース以外にも心が痛むニュースがあまりにも多く、その悲しいニュースを読むのが当たり前のようになっていて、本当にむなしい。

そんな中、コロナアウトブレイクが始まってから唯一追い続けているThe Atlantic のサイエンスライターEd•Yongが書いた「How the Pandemic Now Ends」「パンデミックは今のことろはこうして終わる」という記事を目にしました。

正しい認識を持つことが何故必要なのかを1.Now 今現在,2.Next この先の見通し,3.Eventually 最終的にどうなるか,とステージ分けして説明していて、有益な情報が整理され、とても理解しやすかったです。

以外、記事の一部を抜粋し訳しています。

昨年の冬からワクチン接種が始まったアメリカ。今年の夏の始まりには、コロナパンデミック始まって以来の最小感染者数を記録し、人々は「ついに、コロナに打ち勝った」と沸き立ちましたが、研究を続けていた専門家は7月の始めにデルタ株の感染拡大を確認。そして今、アメリカは第4波の真っ只中にいます。

再びパンデミックのスパイラルに突入したアメリカ。もはや疑う余地はなく、感染拡大は止まらなくなっています。

ワクチン接種を爆速で進めたアメリカは、今年5月にCDC(アメリカ疫病予防管理センター)が「ワクチン接種者は室内でマスク着用の義務なし」と発表しましたが、その3ヶ月後には病院は再び圧迫され、室内マスク着用は再び義務化されました。

同じ場所をグルグル回り続けているだけで、出口がないように感じてしまう状況ですが、ロックフェラー財団の感染症研究者Samuel Scarpinoは「状況は変わってきている」といいます。

人々はデルタ株の感染力を過小評価しすぎていた、もしくは感染力拡大が意味することを理解していなかった。新型コロナ(SARS-COV-2)のオリジナルウィルスのR(1人の人が感染させる人の数)は2-3でした。この状況下ではコンサートのようなスーパースプレッダーイベントを開催し、実際にクラスターが発生しても感染するのは数名。しかし、CDCはデルタ株のRを5-9と推定しており「これはかなりショッキングな数字です」とボストン大学の疫学者Eleanor Murrayはいっています。「このレベルでは、スーパースプレッダーイベントは基本的には出来ない」とMurray。

つまり、オリジナルのコロナウィルスに感染した大多数の人は、他の人を感染させていなかったのですが、デルタ株に感染した人はほぼ全員、新たな感染者をクラスターとして作ることが可能になっている、ということです。

そしてこれは、ワクチン接種が死や重症化を防いだとしても、私たちはコロナウィルスと生涯を共にすることを意味します。

昨年、世界中の多くの人はワクチン開発までの時間稼ぎのために、ロックダウンしステイホームしました。ですが、今アメリカに住む人はワクチンを接種することが出来るのに、マスクし、人と距離を取って過ごしたり、その他の義務に従う意味はあるのでしょうか?

その意味は、ワクチン開発前と同様に時間を稼ぐことにあります。病院をパンクさせず、学校を開け続けること、そして様々な事情でワクチン接種出来ない人を守る、などです。人類のほぼ全員がコロナウィルスに出会します。ですので、ウィルスに出会う前に、出来る限り2度のワクチン接種を完了させなければなりません。パンデミックは終わっていませんが、いつかは終わりを迎えます。そのゴールは「今なお」最小ダメージで、最小の死者数で、可能な限り障害を残さずにエンドゲームにリーチすることにあります。

「皆んなパンデミックでストレスは限界に達している。私だって、分かってる」とボストン小児病棟で疫学者をしているJessica Malaty Riveraは話しています。「でも、勝利はあたな1人が個人としてワクチン接種してもやってこない。コロナウィルスが2度と私たちの足元にやってこないようにしなければならないことを、忘れないでほしい」

  1.NOW 現在

2度のmRNAワクチン接種によって、デルタ株が引き起こす重症化を約88%防げています。ブレイクスルー感染(ワクチン接種していても感染すること)は起きていますが、Kaiser Family Foundationのデータによると2度ワクチンを接種した人の内0.01-0.29%です。

1億6000万人のワクチン接種済みの人の内0.29%は、それでも50万人がブレイクスルー感染していることを意味しますが、比較的感染はレアで、感染したとしてもワクチン未摂取者と比較するとかなり軽症で済んでいます。デルタ株による入院を防ぐのに、ワクチン接種は96%有効であり、アメリカでコロナ感染により入院している人の内95%はワクチン未摂取というデータがあります。つまり、ワクチン自体は効いていて、とても有効だといえます。

ワクチン接種した「個人」はかなり守られていますが、ワクチン接種済の「コミュニティ」は未だ完璧ではありません。これには3つの理由が考えられるのですが、1つ目は、ワクチン未摂取者はランダムに存在しているのではなく、地理的や社会的な繋がりによって集団で存在しているので、デルタ株が蔓延しやすい穴を作ってしまっているのです。

2つ目は、デルタ株はワクチン接種済みの人からも感染拡大しています。このポイントが最近の混乱を招いているようなのですが…。ワクチン接種のステージに関わらず、デルタ株に感染した人は皆、同量のウィルスを保有しているとCDCが推定しました。

ですが、シンガポールの最新の研究によると、感染初期のウィルス量は同量ですが、ワクチン接種者の方がウィルス量がより早く減少することが分かりました。これはワクチンが有効であることを意味します。ワクチンが循環した体内では免疫システムが作動。体内のウィルス量を減少させるのですが、鼻から侵入したウィルスが体内のどこにいるのかを免疫システムが特定するのに時間を要するので、感染の初期段階ではウィルス量はワクチン接種ステージと相関しない、ということ。

このことから、ワクチン未摂取者と比較するとかなり低いレベルではあるものの、デルタ株自体の感染力の強さからCDCは室内マスク着用のルールを徹底するように戻しました。

つまり、ワクチン接種者であっても、その行動の1つ1つが未だにデルタ株の感染力に影響し、子供や免疫生涯を持つ人々などワクチン未摂取者の生活を脅かす結果へつながっています。

3つ目は、デルタ株の感染力の強さがワクチンの提供するコミュニティレベル保護を無効にしている、ということです。仮にワクチン以外の予防措置が取られなかった場合には、デルタ株は人口の50%がワクチン接種済みでも感染拡大し、そのスピードはオリジナルコロナウィルスが全くワクチン接種できていない国で感染拡大するのを上回る、とされています。

「それでもワクチンは、デルタ株の感染拡大サイズやインパクトを減らすことには有効です。多数の命を奪う大惨事になる沸点を、ぬるま湯ぐらいに保つ効果はあります。ただ計算上は、ワクチンだけでデルタ株に完全に問題を解決できる方法はないことを示しています」ジョージタウン大学、感染症専門医Shweta Bansal。

そして今、デルタ株の蔓延により新たな重要問題を計算し、議論しなくてはなりません。

過去の3波では、高齢者がコロナ感染によるリスクが高く、現在アメリカの65歳以上の内80%はワクチン接種済みとなりました。しかし、12歳以下の子供はワクチン接種できないまま、緊急時使用許可まではまだ数ヶ月を要する見込みです。子供はコロナ感染による重症化はしなさそうだと考えられていましたが、アメリカでは既に400人以上の子供が亡くなっています。そして死に至らなくとも、コロナによるMIC-Cという炎症症状に長期間苦しんでる子供が増えてきています。

ですが、私が話を聞いた専門家は全員「子供は『プロテクション』があるという前提で学校に行くべきだ」と話しています。つまり、大人がワクチン接種して子供たちの周りにシールドを作り出し、生徒と教師は全員マスク着用、換気をこまめにし、定期的な検査を実施する。「学校は一度感染拡大すると、閉鎖する以外に方法がない。だからこそ、感染確率を軽減させる対策を取るべきです」ジョンホプキンス大学Caitlin Rivers。

「人々が混乱し、憤ることは正しい感情だと思います。だからこそ、去年と同じミスを繰り返してはならないと、国に強く求めるべきです。私だっていい加減うんざりしていますが、ウィルスが変異したら、私たちも変化しなければならないのです」

アメリカでは1日あたりの新規感染者を一度10万人中10人まで抑え込みましたが、現在10万人中36人まで増えています。

2.Next この先の見通し

デルタ株の感染力は強く、ほとんどの国がこの波を受けることになります。そしてワクチン接種率が上がることで、この波はより小さく扱いやすくなります。しかし、集団免疫(充分な人が免疫獲得し、感染が自然に止まるポイント)は、ワクチンだけでは獲得できそうにありません。仮にデルタ株のRがCDCが推定している1番小さな値5であったとしても、集団免疫獲得には人口の90%以上のワクチン接種が必要になり、かなり実現不可能な数字です。そして、Rが9だった場合は計算上、今あるワクチンでは集団免疫獲得は不可能になります。

つまり「COVID-19 」を完全に駆除するという夢はファンタジーになりました。その代わりに、地球上の人がワクチン接種か感染により死なずに免疫を獲得することが、このパンデミックが終わるポイントになります。

一度でもこのポイントに達することが出来れば、コロナはendemicな病として地球に存在しますが、そこまで問題視する必要はなくなります。それは、コロナ自体が変わったのではなく、コロナが「新型」ではなくなり、私たち疫病学的にvulnerable (感染リスクが高い人)ではなくなったということです。ある世界的な感染症が地域的な流行になった、というのはほとんどの場合結果でしかありません。

昨年の3月頃、本気で集中的に対策をすればCOVID-19 は、私たちの世界にほぼ存在しない状態にまで抑え込めたのです。しかし、デルタ株は勝負のルールを完全に変えてしまった。

コロナウィルスが地球上に居座るということは、私たちはどこかのポイントで必ずウィルスに感染するということを意味します。しかし「ウィルス自体が最悪だということではなくなってきている」とエモリー大学のJennie Lavineは話しています。「今まではウィルス自体の強さと私たちの免疫システムが弱いというコンビネーションが問題でした。一度でも後者の問題が解決できれば、ウィルス自体は神経を擦り減らすほど恐れる必要はありません」

つまり、ワクチン接種をしても、どこかのポイントでウィルスを吸い込んでしまうのですが、結果的に死に至るような病にはならないということです。

「今から2年先ほどの未来では、偶然知り合いに会って、ハグしたりしてコロナ感染しても、ティッシュ箱が半分くらい減る程度の風邪で済み、すぐにいつも通りの生活に戻れるようになります」とLavine。「それこそが私たちが目指すゴールであり、私たちはまだそこに行き着いていないのです」

マスク着用、距離を保つ、などの予防は感染拡大を抑制し、更に最悪な事態である、ウィルスの更なる変異を防いでいます。私たちにはまだ、ブレイクスルー感染の結果が長期間でどう影響するのか、研究者たちが研究できる時間を稼ぐ必要があります。

そして何より、医療関係者は既に疲れ切っています。彼らには休息が必要なのです。これ以上の感染拡大を抑制し、世の中が少しでも通常運転に近づくことで、医療関係者は休憩できます。

そして何より、アメリカは、ワクチン接種者を増やす為にはシンプルに時間が必要なのです。謝った情報を信じてしまった人の心を変えるのは難しいですし、子供だけでなく、食糧難、立退指示、収入減少などの理由でワクチン接種することによる副作用に対応できない人も大勢います。それに、ワクチン自体の安全性を心配し、FDA(アメリカの厚労省)の全面的な承認を待っている人もいます。ですので、室内マスク着用などの政策は、公衆環境衛生擁護者(PHA)がワクチン接種を進める時間を稼げるのです。

3.Eventually 最終的にどうなるのか

パンデミックは終わります。しかし、未だ終りは始まっていません。特に地球規模では。地球上の僅か16%の人がワクチン接種したにすぎません。多くの国では人口の1%が何とか1stワクチンを接種できているような状況です。

最終的に人類は、コロナがウィルスが薄く存在する世界に入ることになり、COVID-19 のアウトブレイクはより稀に、より小さな規模になります。しかし、免疫学的に弱い新生児が生まれるたびに、感染拡大のリスクはありますし、大人は免疫が切れるたびにブースターを打つ必要がある可能性があります。

「人間は風邪を引いたとしても、死に至るような重症化を防ぐ余剰な免疫を持っています」免疫学者Marion Pepper。「私が最も恐れているのは、新たな変異株が私たちが今もっている免疫システムをすり抜け、コロナウィルス更に拡大させることです。そのことを考えると、夜も眠れません」

可能性があることをガードする必要はあり、世界は警戒し続けなければなりません。

「我々に必要なのは、広範囲をカバーできるシステムです。定期的な検査、廃水検査、遺伝子配列、Googleサーチ分析などが必要かもしれません。感染の大流行と流行を追跡するのは、台風や雨雲を追跡するのと同じことです。そういうシステムがあれば、次のパンデミックを事前に防ぎやすくなります」感染症専門家Samuel Scarpino。「携帯電話が傘を持っていく必要があるか否かを教えてくれるように、マスク着用するべきタイミングを教えてくれるといいですよね」

ビルの換気システムは向上していくだろうし、科学者はコロナウィルスの存在自体に有効なワクチンを開発することはずです。アジアの人々は風邪を引いていたらマスクを着用しているし、仕事場ではコロナ感染による有給、学校では感染による休学分を埋める学習法などが整うことで、コロナ感染中に無理をして外出する回数を減らせるでしょう。これらの政策は、私たちがシートベルトを締めるのと同じようにレギュラーなことになるはずです。

(訳ここまで)

今の時代は情報が多く、正しい情報を掴む目を持つことで、よりよい未来に向けて舵を切ることが出来ればいいなぁ、と思い、コロナパンデミックに対する理解が深まった記事を訳しました。

今暫く辛抱を強いられる日が続きそうですが、私の住む街にもついにワクチン接種券が届きました。デルタ株による感染再拡大には、もう太刀打ちできる術が残っていないような気持ちにもなりましたが、どうすればより良い世界になるのか考え直すきっかけを与えられたようにも思います。

いつの日か必ず自由を取り戻す日が来ると信じています。






















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