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「成功するためには努力と才能」を信じてしまう私達が、本当に知らなければならない理論

世界的ベストセラーを何度も出している、マルコム・グラッドウェルの最新作「Talking to Strangers 」今年の9月10日に出版されてからずっとアメリカのAmazonではベストセラー入りしています。そんな話題の一冊を読み始める前に、グラッドウェルの代表作の1つ「Outliers」を読みました。

「何事も一流になるまで習熟するには、1万時間を要する」と、なんとなくどこかで聞いたり読んだことがある方も多いと思う、この言葉は、ある心理学者の研究結果をグラッドウェルが「Outliers」の中で紹介したのをきっかけに、世界中に広まりました。

「Outlier」とは「外れている」という意味があり「異常値、外れ値」と訳されることがあります。グラッドウェルが「Outliers 」の中で扱っているのは一般的な人達とは外れた道を選択し、並外れた成功を収めた人達に共通する要素です。

この本は、アイスホッケープレイヤーの誕生日について探求するところから始まります。世界の多くのベストリーグでは、アマチュアかプロかに関わらず、40%の選手が1月、2月、そして3月生まれである、一方で10月、11月そして12月生まれの選手は僅か10%であることが判りました。明らかにおかしな結果なのですが、グラッドウェルは「簡単に説明がつくことだ」と才能と努力以外の驚きな共通点を説明します。

そしてビル・ゲイツはシアトル出身の若いコンピュータープログラマーとして紹介。ビルの大志や聡明さは他のコンピュータープログラマーが持っていたものとは、何千倍も異なりました。しかし、グラッドウェルはビル・ゲイツの輝かしい成功にも才能と努力以外の、ある共通する理由について説明します。

ほとんどのハイスクールがコンピューターを持っていなかった当時、ビル・ゲイツはたまたまコンピューターを持っているハイスクールに進学しました。その後、彼はたまたまワシントン大学で1日中、自由にコンピューターを使える機会に恵まれます。ビルが20歳になる頃には、彼はコンピュータープログラマーとして1万時間を費やしてしたのです。

1970年代前半に、どれほどの人がこれだけコンピューターに触れる恵まれた環境にいたでしょうか?グラッドウェルはビル・ゲイツ本人にインタビュー。「もし世界に50人しか人間がいなかったら、間違いなく私は突出した存在だっただろう。私は若くしてソフトウェアー開発に成功したけれど、それはあの時代に他の誰かがしていたより私の方が良く出来ただけだと思う。そして、信じられないほどラッキーなことが積みかなったんだよ」とゲイツは答えています。

ビル・ゲイツの才能とその活かし方は普通でないこは確かです。しかしグラッドウェルは、彼の恵まれた環境は、その才能以上だったかもしれない、と提案しています。

グラッドウェルはこの本の中で、アイスホッケー選手やビル・ゲイツだけでなく、ビートルズやモーツァルトなど誰もが知っている人を例に上げ、成功する為には才能と努力は勿論必要だけれども、それ以上に育った環境や時代の流れ、それにタイミングが影響を与えていることを指摘。

世界で極めて高いIQを持つという優れた才能を持つ青年が、なぜ成功できなかったのか?ニューヨークで弁護士として成功している人は、なぜユダヤ人が多いのか?など、様々な視点から語るテクニックが素晴らしく、気がついたらグラッドウェルの語りにグッと引き込まれていました。

「日本人含むアジア人は何故数学が得意なのか?」という解説をアメリカ人向けに行っている章は「あまり共感できないな」と1人で反論しながら読み進めることも楽しめる。反論することを楽しめる本って凄い!

この本は邦訳もされていて「天才!成功する人の法則」という邦題が付けられているのですが、成功する為の”How to ”本ではなく、どちらかというと「ポリティカル」な1冊です。グラッドウェルは本の最後で「我々が若いビル・ゲイツ見るとき、我々の世界は、たった13歳の少年を世界で最も成功した起業家にしてしまったことに驚く」「でも、それは間違っている。我々の世界は、たった13歳の少年がコンピューターに無制限にアクセスできるようにしてしまったんだ。それも、1968年というタイミングに。もし、100万人の子供達がゲイツと同じ機会を与えられていたとしたら、いつくのマイクロソフト社が出来ていただろう?」と書いています。 

アメリカでは子供達が「Happy talk」という歌をよく歌っていて「自分の好きなことを語ろう。夢を持たなくちゃ。もし夢を持てなかったら、どうやって夢を叶えるの?」という内容の歌詞なのですが、好きなことを早く見つけられると、そのことに人生の多くの時間を費やせます。つまり人生の中で「1万時間」を早く達成できるので、より早く一流になれる。だけれども、その「1万時間」を人生の早い段階で達成するためには「環境」が大切だ、というグラッドウェルの着眼点が散りばめられた1冊。2008年に初版が出版されたアメリカでは、ビジネスマンだけでなく、子育てしている主婦(夫)にも、未だに人気のようです。

皆んながそれぞれのフィールドで成功することをサポートする為に、アメリカは国としてほんの少しのことしか出来ていない。私達はそのことを考え直すべきだ、とグラッドウェルは問いかけているように思います。

















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