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本の棚 #26 『喜嶋先生の静かな世界』

『喜嶋先生の静かな世界』
森博嗣

個人的な森博嗣小説ランキングを

つけるとしたら

堂々の1位に輝くのはこの本。

なんといっても「世界観」

ストーリーではなく

キャラクターでもなく

全体的な世界観。

自伝的な小説のようだけど

ありきたりな大学生活のなかに

素敵な出会いがあり

不器用な恋があり

悲しい別れがあり…

それでも世界は静かに回っていく。

−−−−−−−−−−−−−−

その一冊を読むことで得られた経験が、たぶん僕の人生を決めただろう。

人生を変える経験、出会い

誰もがあるのではないか。

ひとつひとつの積み重ねが人生だから

そのひとつひとつが人生を変えている、

とも言えなくはないけど

もっと大きな変化、変革を

感じられた経験や出会い。

まだそんなものはない、という人も

いるだろう。

けど、そんな経験や出会いは

自然発生的に起こるというよりは

やはり自分が自分の意志で動いたときに

訪れるように思う。

大切なことはそれを忘れないこと、

それが自分の「原点」になる。

ぶれても、ぐらついても、吹っ飛ばされても

もどれる場所になるだろう。

問題を見つけること、取り組む課題を探すことは、それよりずっと難しい。

課題を常に与えられていた

そんな自覚はあるだろうか。

そしてそれはいつまでも

持続するものではないことも。

この先はレールが敷かれていない

自分で目的地を決めて

自分で、自分の足で

歩いていきなさい。

10歳で気づく人もいれば

20歳で気づく人もいて

30歳でも、40歳でも、50歳でも

気づかない、気づいても必死に

スルーしようとする人もいる。

さらに、目的地にいくためには

いくつも壁がある。

壁を越えても、目の前にあるのは

もう少し高い壁。

その繰り返しが人生だと思う。

「まあ、ここだけの話だが、僕は、もともと凄い人なんだ」

そうなんだ。

喜嶋先生はすごいんだ。

物語を読み進めると出てくる「喜嶋語録」

それを読むたびに

そのことばの真っ直ぐさに、純粋さに

(取り繕う姿勢のなさとも言えるが...)

いつしか先生に憧れている自分がいる。

ぼくもわりとオブラートにつつまずに

スパッと言っちゃうタイプではあって

未だに上司から叱られることがある。

でも取り繕うことで言いたいことが

ぼんやりしてしまうことのほうが嫌だったりする。

伝えることははっきりと誤解なく伝えたい。

それがその人にとっていいことであっても

耳の痛いことであってもだ。

物語のなかの喜嶋先生は痛快だ。

この爽快感を味わうために何度も

読み直してしまう自分がいる。

実際の語録は本著を読んでみて下さい。

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#読書 #小説 #推薦図書 #エッセイ
#喜嶋先生 #森博嗣

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