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本の棚 #17 『働かないアリに意義がある』

『働かないアリに意義がある』
長谷川 英祐(進化生物学者)

「働かざる者食うべからず」

母親のぼそっと唱える呪文…

それを耳にすると

我々兄弟3人は

晩ごはんの手伝い、お風呂の準備に

とりかかることになる。

働かない者が食いっぱぐれる(うちの場合はデザート無し)

本当にそうなんだろうか。

人間社会が発展していくために

王様がつくった奴隷への脅し文句

のような気がしてならない。

そう、人間社会においてのみ

使える魔法の呪文なのではないか。

自然界においては

働かないものはいないのだろうか。

もし働かざる者が存在するとしたら

そのシステムが続いていることには

なにかしらの理由があるはず。

そして、

その理由が人間社会にも

あてはめることができれば

My motherの強力な呪文への

防御魔法となり我が身を守る盾になったのではないか。

進化生物学の観点から

長年の疑問に勇気の剣をふりかざす。

※注:我が家は男3人兄弟で毎日たらふくご飯を食べさせて頂きました。母さんありがとう。

「間違える個体による効率的ルートの発見」という効果

賢く忠実なアリとおバカなアリ

コロニーという

繁殖専門のアリと労働専門のアリの

一つの集団のなかにおいて

おバカなアリがいるほうが

組織としてはうまくいくという。

エサを巣に持ち帰るルートで例えると

賢いアリは最初に示されたルートを

忠実にたどることができる。

しかしおバカなアリはうっかり

間違ったルートを見つけてしまい

それが最短ルートであった場合

賢いアリたちを新ルートへ導くらしい。

要は全員賢い真面目アリだと

そのルートの存在にすら気づかない。

けど非効率に真面目に働く。

おバカなアリばかりの組織は

困るけど、一定数のうっかりさんが

実は組織の効率をあげてくれる?!

上司はこのあたりに気づけるか、

おバカさん扱いをしてチャンスを

スルーしてしまうかで

組織の成果に大きな影響を与える。

「反応閾値」=「仕事に対する腰の軽さの個体差」

昆虫社会に上司(中間管理職)はいない。

そのため「反応閾値」(はんのういきち)

によって集団行動を制御する。

人間でいうと…

きれい好きは

部屋が少しでも汚れていると

掃除(仕事)したくなる。

その人は汚れに対する反応閾値が低い。

逆にそこそこの汚れでは

動きませんよ〜という輩は

汚れに対する反応閾値が高い。

この反応閾値は個性とも言えて

それぞれに違いがあるようだ。

これを人間社会に置き換えると

仕事への取り組み姿勢は

反応閾値だと考えてみる。

腰の軽い人=反応閾値が低い人は

常に忙しく働き、成果を出す確率が高い。

腰の重い人=反応閾値が高い人は

前者(反応閾値低人)が疲れたり

成果が出ず、組織が危険にさらされたとき

重い腰をあげて働き出す。  

良く言えば…モリモリに盛れば

「遅れて現れたヒーロー」

と言えなくもない。

働かないのではなく

働くべきときがまだきていない

とでも言うべきか。

反応閾値が低い人はあらゆる仕事を

ソツなくこなしていく。

でも疲れて、辞める。

そう、そこでヒーローの登場だ。

ピンチヒッター、

働かないアリ〜!

意義があった〜!

…しかし、また中途で反応閾値低めの

テキパキ人材が入ってきたら

働かないアリはベンチに腰を下ろす…

また出番あったら呼んでや〜。


#読書 #書評 #本 #エッセイ

#パレートの法則 #仕事 #働かない蟻

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