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夜兎烏 Night Rabbit Crow
2020年7月15日 19:03
旅行鞄を抱えた少女が先を急ぐ。 一人での初めての遠出に少女の胸が高鳴る。 初めての土地。初めての景色。初めて見るキノコ。「ーー大きなキノコ」 世間知らずな少女は、ありえないサイズのキノコも不思議に思うことはなかった。 そこはまるで別世界のように新しい発見に満ちていた。ーー別の世界だった。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー140字小説です。 Twitter
2020年7月16日 21:59
強い風に帽子を押さえる。 そこから見える景色は、少女の住んでいた国とは全く違っていた。「ーーキノコしかない」 色とりどりのキノコが森のように世界を覆っていた。 時折もくもくと煙をあげるキノコも見える。 少女はゴクリと生唾を飲み込むと、ボソリと口を開く。「ここが、ジャパン・・・・・・‼︎」ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー140字小説です。 Twitt
2020年7月17日 18:58
歩き疲れた少女は、手頃なキノコに腰かける。 足元には網目状のキノコが生えていた。「ーー予約したホテルはどこにあるのかしら」 少女は事前に調べておいたホテルまでの経路を確認するが、地形が全く違っていた。 どうやら迷ってしまったようだった。「これが異国の洗礼というやつなのね」 たぶん違った。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー140字小説です。 Twit
2020年7月18日 21:29
ポツポツと降り出した雨はいつしか滝のような土砂降りに変わった。 真っ白なカサを広げたキノコの下で雨宿りをする少女は、ボーッとキノコの裏側を見つめていた。 規則正しい雨の音に紛れてグーと奇妙な音が聞こえる。 少女はここまで何も口にしていないことに気づく。「このキノコ、食べられるかしら?」ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 140字小説です。 Twitterで毎
2020年7月20日 20:24
雨上がりの澄んだ空気の中、少女はキノコを食べながら歩く。「モグモグーー?」 卵の殻のようなものから生えたキノコの影に何か動くものが見えた。「動物かしら?」 ジッと目をこらすと、どうやらそれは二足歩行する小さな生物だった。「ーーお肉食べたいわね」 生物は少女に気付くと一目散に逃げ出した。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 140字小説です。 Twit
2020年7月24日 14:52
「このあたりにホテルはないかしら?」 渡したキノコに小躍りしていたお肉ーーもとい小人達は、少女の問いかけに応える。「うちくる?」 小人達は大きなキノコに少女を座らせる。「キノコでひとっとび!」 ひとっとび? 少女は嫌な予感がした。 小人の一人が小さなキノコを押す。 少女はキノコと空へ飛んだ。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー140字小説です。 T
2020年7月25日 19:00
「おそらあおい」 自由落下の最中にもかかわらず少女はそれまでの人生を振り返る余裕すらあった。ーー走馬灯だった。「これ着地どうするの⁉︎」 はたして声は届いたのか、小人の一人が感情の読めない笑顔を見せる。「神様なら大丈夫ーーたぶん?」 神様なら?ーーそれだめじゃない? 少女は意識を失った。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 140字小説です。 Twit
2020年7月26日 18:15
目を覚ますと、自分がとてつもなく大きな芋虫の目の前にいることに気づいた。 小人が何か不思議な力でも使ったのか、キノコ、あるいは目の前の芋虫がクッションになったのか。 上空から落下したはずの少女の身体には傷ひとつなかった。「頭からキノコ生えてる・・・・・・⁉︎」 遅ればせながら気づいた。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 140字小説です。 Twitterで
2020年7月27日 19:06
「ここがあなた達のお家なの?」 質問に小人はボソッと応える。「飛びすぎ?」 小人はキノコの生えた同胞を横目に移動する。 辿り着いた場所には、キノコをくりぬいたような住居があった。「憧れのマイホーム!」 キラキラした笑顔の小人だが、少女には小さすぎた。「素敵なお家ね!」 少女は空気を読んだ。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 140字小説です。
2020年7月28日 18:15
「そろそろ行くわ」 少女の言葉に小人は寂しげな表情を見せた。 小人は少女の手を引きとあるキノコの前へ連れていく。 そこでは蛹がちょうど羽化し、巨大な蝶が翅を広げていた。「綺麗ね」 思わずこぼれた少女の言葉に。「乗ってく?」 小人は蝶を示す。「やめておくわ」 蝶は少女を掴むと空へ舞い上がった。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 140字小説です。
2020年7月29日 18:11
燃えるような夕焼けの中、ひらひらと舞う蝶の翅が気流を掴む。 目を細める少女の頬を暖かい風が撫ぜる。「これ、何処へ向かってるのかしら?」 既に、森のように広がっていたキノコ達は見えなくなっていた。「さようなら・・・・・・ジャパン」 勘違いしたまま、少女は思い出を胸に新たな世界へ旅立った。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 140字小説です。 Twitte