マガジンのカバー画像

創作大賞2023応募作品

8
運営しているクリエイター

#エッセイ

【エッセイ】シベリア抑留とマッカーサー元帥

【エッセイ】シベリア抑留とマッカーサー元帥

幼い頃に祖父から聞いた物語を敬老のプレゼントに両親へ送ろうと思う。

1.南方作戦

まずは、父方の祖父である、第十のお爺さんについて書きたい。

「ワシはシベリアに3年もおったけんのう」

と親父とは対照的に、いつも朗らかで、ゆっくりと喋る第十(だいじゅう)のお爺さんを僕は本当に大好きであった。

戦前、祖父は第十の家へ婿養子としてやってきた。

どこかの親方の元で丁稚奉公に入り、大工職人として

もっとみる
工業哀歌 ギザギザハートの陸上部 [全8話 7400文字]

工業哀歌 ギザギザハートの陸上部 [全8話 7400文字]



高校時代の話を書きたい。かつて田舎の工業高校の卒業生は「金の卵」と言われていた。

しかし、僕らはバブル崩壊後の入学で、就職氷河期が始まろうとしていた。進学する生徒が就職する者を上回ったのも自分達の代からである。

もちろん自分は就職組に入っていた。高校2年にもなると、大体めぼしい会社が決まっており、授業はろくに受けなくてよかった。

ただ部活だけは真剣に取り組んだ。陸上の名門校で全員が長距

もっとみる
ユニオンジャックの窓[全11話 6300文字]

ユニオンジャックの窓[全11話 6300文字]

1

夫婦喧嘩は犬も食わないと言うが、親父が癇癪をおこして一方的にオカンへ怒りつけ、それをオカンは

「ハイ、ハイ」

と聞き流す。そんな感じの喧嘩というか、かなり激しめの癇癪は、日課のように起こっていた。

瞬間湯沸かし器のごとく、癇癪を繰り返す親父はご近所の名物でもあった。

子供の教育はビンタが基本。悪い事をしたら怒るよりも平手が顔や頭に飛んできた。

小学生の頃はそれが当たり前だと思ってい

もっとみる