見出し画像

「Goal & Way」 組織を動かすドライバー

企業にしても、行政組織、その他どんな団体であろうとも、構成員である人が活性的に動いてこそ、その機能を果たす。だから、組織のトップは組織の構成員に対して、組織の考えや具体策を発信していく必要がある。

人が組織と一緒に動くためには、何らかの”共感”が必要なのだと思う。そして、それは、目指す目標「Goal」と、目標へ向かう手段・やり方「Way」だと考える。目指す山はどの山なのか?「世界で初めての登頂を目指す」「仲間と楽しく全員無事で山を目指す」のか? どうやって登るのか?「最短のルートで」「回り道でも時間がかかっても全員で安全に進む」のか? 自分の思いと重なるパーティに人は参加したいと思うのではないか、共感する仲間とは一生懸命取り組めるのではないか? (どちらにせよ、私自身は登山には絶対不参加だが、、、)

”あらゆる人が良いカジュアルを着られるようにする”を目標(Goal)と掲げるユニクロは、だからこそ、世界進出を積極的に推進している(Way)と言え、それに共感する多くの若者がユニクロで働きたいと門を叩いているのではないだろうか?

GoalとWayを単に設定すれば、それで人は動くという簡単なものでは、もちろんない。GoalとWayは会社の形そのものを規定してくる、縛ってくるからである。そこには覚悟と決断が必要となるし、他と違う仕掛けと仕組みが要求される。私がこのGoal&Wayを考えるきっかけとなった「小林製薬」という会社の事を書きたいと思う。

小林製薬とは、非常にニッチでユニークな商品を次から次へ出し続けている製薬会社である。「熱さまシート」「ボーコレン」「のどぬーる」「がスピタン」「サカムケア」などなど、TVCMなどでもお馴染みの変な名前の商品が多い(笑)。<gooランキングより>

さて、その小林製薬のGoal&Wayを表すキーワードが、「あったらいいなをカタチにする」というブランドスローガンである。

画像1

このスローガンの下、数々のユニークな商品を投入していく事で、小林製薬のブランドが”あったらいいな”という約束と一緒に出来上がってきたと言える。

小林製薬

かつて、ライオンで働いていた時に、小林製薬の営業マンの方と雑談をしたことがあり、その時に彼は、「いやぁ、うちの会社は”あったらいいな”をキャッチフレーズにしているものだから、新製品発表の時にドラッグストアのバイヤーさんに、”小林さん、この商品はなくてもいいね”って言われるのが一番堪えるんですよ」と笑いながら話してくれた。あながち冗談でもないのだと思う。”あったらいいな”が浸透すればするだけ、期待値が高まる。常にその期待に応えてこそ、いや期待を上回る結果を出していかないと、いけないという十字架を背負うのである。

さらに、小林製薬のマーケティング組織や体制を少し調べた事があるが、”あったらいいな”を実現するために、他とは違うやり方を導入していた。

一つは、社員全員によるアイデア募集である。毎月一回、全社員が新商品アイデアを出すことが義務付けられているのだ。市場に”あったらいいね”と評価される商品を出し続ける事が小林製薬の生命線になるため、それを実現するための仕組みと位置づけられる。

そして、二つ目は、その毎月のアイデア募集で選ばれた(経営側からすると選んだ)企画については、必ず製品化すること、そして、導入初期には必ず一定のCMを投下することを約束している、と言うのだ。(これはアイデア募集を義務付けられた社員に対する経営の義務ということになる)

矢継ぎ早に”あったらいいな”商品を上市するから、ゆっくりと商品を育てる時間はない、だから、そのネーミングも直接的で「名が体を表す」ものに必然的になるのだ。ユニークなネーミングも、実は戦略的なものだと言える。

そのような小林製薬の「Goal&Way」の仕掛けや仕組みを図示すると次のようになる。

画像3

ここで、SPやOCという考え方を使っているが、これは、楠木 建先生の”ストーリーによる競争戦略”に依っている。

組織を作るのに必要だと考える「Goal&Way」は単なるスローガンやキャッチフレーズでは終われない。目標に向け、組織のポジショニングを戦略的に決めることになるし、その具体化実現のための組織の在り方、ルール、体制も決まってくるのである。

Goal&Wayこそ組織のブランドである、と言い換えることができるかもしれない。そしてブランド化とは、外に向かって発信するだけでなく、むしろ、自分たちの在り方を規定し、強く縛るものと言えるだろう。そして、その強い縛りの中で、それを超えたアウトプットを続けられる組織だけが生き残れるのだと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?