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プロファイル作成によるキャラクタリゼーションの説明 コーヒー・テーブルを使った村上春樹氏への挑戦

カラーマネジメントの話に戻ります。
まずは、おさらいからです。

カラーマネジメント:ヒトの色の見た目を、数値で指定・伝達可能とし、それぞのデバイスの状態を安定させ、出力可能な色の中でなるべく指定に近い色を、安定的に出し続けるようにするための仕組み
2つのポイント
色の安定性:毎回同じ色が出力される。
色の正確性:指定した色が正しく出力される。

色の安定性を実現するには、各デバイスでキャリブレーションを定期的に実行、デバイスの標準的な色を常に維持することが必要です。

デバイスの色が日々変動する環境、提出するプルーフ・カンプの色が日々変わる会社に仕事はきません。

色の安定性は現場は、当たり前のこと用に見えるだけ、損なうと信頼性を失います。この点十分注意する必要があります。

これで私たちは、安定したカラーデバイスを手に入れることが出来ました。ここまでが、前回のおさらいとなります。

ここまでを①キャリブレーション工程と呼びましょう。
今回お話するのは、②キャラクタリゼーション工程です。手

キャラクタリゼーションは訳すと「特徴付け」でしょうか。

耳にタコが出来るほど、このブログでも書きましたが、同じCMYK/RGB値であってもデバイスごとに色の見え方は違います。人に個性があるのと同じでしょうか。

これはどうしようもなく、カラーマネジメントシステム上でも、同じCMYK/RGB値が、すべてのデバイスで同じ見え方にさせようという発想はありません。

でも出来ることはあります、それぞれのデバイスの色の出方の違いを逆に許容した上で、それぞれのデバイスがどのような色の出し方をするかを把握して、管理していくのです。相手の個性を大切にし、うまく付き合っていくということでしょうか。

実際に色の出方の違いを、許容・把握・管理するにはどうしたらよいのでしょうか?

まずは結論から述べます。カラープロファイルをそれぞれのデバイスごとに作成・保持し、それを使って各デバイスの色の出方をマネージします。

これを②キャラクタリゼーション工程と呼びます。

カラープロファイルというのは、各カラーデバイスの色再現の特徴を記録したファイルです。

プロファイルというとは「プロフィール」の意味に近い言葉で、人間に例えると、履歴書といってもよいでしょう。

つまり、プロファイルを見れば、そのデバイスがどのように色再現するかがわかり、それを元に入力値を調整すれば、思った色を得ることが出来るようになります。

以前ご説明した2つの表色系をここで使います。
まずそれぞれのメリット・デメリットを整理しておきます。鉛筆

デバイス非依存色:デバイスインディペンデントカラー
例:CMYK/RGB
メリット:デバイスへ直接色指定できる
デメリット:デバイスごとに色の見た目が変わる
デバイス依存色:デバイスインディペンドカラー
例:CIE LAB(XYZ)
メリット:デバイスが変わっても色の見た目が同じ。
デメリット:デバイスへ直接色指定できない。

プリンタプロファイル作成の実際の流れを見ていきます。
それぞれのメリットを組み合わせて使うのがポイントです。

前提:キャリブレーションが行われている。
1. 特定のプロファイル作成用CMYKパッチをプリンタ出力。
2. 1で出力されたものを測色機で測色し、それぞれのLab値を得る。
3. 2/3によりそれぞれ、パッチで指定したCMYK値と、それを使って出力された色の見た目値であるLab値の対照が得られる。

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この3のCMYK/Labの対照がカーラープロファイルに保存されることにより、各デバイスのカラー再現の特徴を、このカラープロファイルに持たせることが出来きました。

このカラープロファイルは、色の見た目値である:Lab値から、その色を実際のデバイスで再現するためのデバイス値:CMYK値を導き出すことが出来、また逆(CMYK->Lab)も可能です。

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このプロファイル作成をワークフロー内のすべてのデバイスで行ったら、下記の変換がそれぞれ出来るようになります。

デバイス値:CMYK/RGB値→色の見た目値:Lab値
色の見た目値:Lab値→デバイス値:CMYK/RGB値

Labを媒介して、色の見た目を変えずに、デバイス値をを他のデバイス用の値に変換が出来そうです。

例えば、カメラで撮影されたRGBはカメラプロファイルで色の見た目値:Lab値へ結びついています。

そこで得られたLab値をプリンタプロファイルの中から探し、それに紐付くCMYK値を導き出します。

これで、カメラのRGBからプリンタのCMYKへと色の見た目を変更せずに変換ができ、そのデータをプリンタから出力すると、カメラが捉えた色を適切な色で出力することが出来ます。

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まとめましょう。

各デバイスごとカラープロファイルを作成することにより、デバイス値と色の見た目値:Lab値を結びつけ、キャラクタリゼーションを行う。
すべてのデバイスでキャラクタリゼーションすれば、色の見た目を変えず、デバイス間で色を伝達できる。

今日は、ここまでとします。だんだん世界が広がってきた感じがしませんか?これがカラーマネジメントワールドなのです。

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私のサンスウなしで、カラーマネジメントを伝える試みは、うまくいっているでしょうか?

この試みの原点となるのが、村上春樹氏の下記の文章。

地球を巨大なコーヒー・テーブルであると捉え、些末なモノを除き大枠でモノを考え、本質を得ること。

私は、カラーマネジメントを巨大なコーヒー・テーブルととらえ、わかりやすく本質を伝えることができているのか?

たとえば、地球が球状の物体ではなく巨大なコーヒー・テーブルであると考えたところで、日常生活のレベルでいったいどれほどの不都合があるだろう?
もちろんこれはかなり極端な例であって、何もかもをそんな風に自分勝手に作りかえてしまうわけではない。
しかし地球が巨大なコーヒー・テーブルであるという便宜的な考え方が、
地球が球状であることによって生ずる様々な種類の些末な問題 ――たとえば引力や日付変更線や赤道といったようなたいして役に立ちそうにもないものごと――をきれいさっぱりと排除してくれることもまた事実である。
ごく普通の生活を送っている人間にとって赤道などという問題にかかわらねばならないことが一生のうちにいったい何度あるというのだ?
引用:村上春樹『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド 上』

頭が痛くなってきたので、今回はここまで。
今回も、お粗末様でした。

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